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マンションで母娘餓死…「孤独死」の4割は現役世代 コロナ禍で増加の懸念
リングドクター・富家孝の「死を想え」
「孤独死」は、ここ数年、大きな社会問題になってきました。一人暮らしの人が誰にも知られず死んでいるのを発見される、そういう例が多発しているからです。 第3波が広がるコロナ禍では、孤独死が例年以上に増加しないか懸念されています。知人の監察医は、最近、検視の数が増えたと言っています。孤独死は発見者が警察に通報するので、まず、「不審死」の扱いになり、医師が立ち会って検視することになります。そうして死体検案書(死亡診断者に相当)がつくられ、初めて埋葬されることになります。
母娘で餓死のニュースも
先ごろ、衝撃的な報道がありました。読売新聞の12月15日付記事「マンションの一室で母娘餓死か……体重30キロ、冷蔵庫には食料ほとんど残らず」は、本当に涙を誘うものでした。 この記事とその後の報道によると、この母娘は、大阪市港区築港のマンションの一室で暮らしていて、母親は68歳、娘は42歳で、発見された時には死後数か月が経過していました。解剖の結果、2人とも低栄養症で胃は空。母親の体重は約30キロしかありませんでした。つまり、2人は餓死したのです。 冷蔵庫には何も入っておらず、捜査関係者によると「みそなどの調味料すら残っていなかった」と言います。娘は上着を着たまま倒れており、財布には現金が13円しか残っていなかったというのです。
孤独死の原因の多くは病気、自殺も1割
この母娘が、なぜ生活保護を申請しなかったのか? なぜ、親戚や周囲に助けを求めなかったのか? 疑問は残りますが、このように社会との連絡を絶ち、死んでいく人は多いのです。このケースは2人ですから、孤立死と呼んだ方がいいのかもしれませんが、周囲の助けが得られなかった点で孤独死と変わりません。 孤独死の多くは、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中などの急性の疾患によるものです。突然の発作に襲われ、身動きが取れなくなくなってしまうからです。肺炎や肝硬変の悪化で意識不明になってそのまま亡くなるケースもあります。また、自殺の場合も1割はあるとされます。
孤独死の平均年齢は61歳
孤独死は賃貸住宅経営のリスクなので、後の処理費用などをカバーする孤独死保険があり、関係企業が作る一般社団法人日本少額短期保険協会は毎年「孤独死現状レポート」を発表しています。それによると、孤独死の平均年齢は61歳。約40%は60歳未満の現役世代です。 コロナの影響がどう表れてくるのか、まだわかりませんが、高齢者だけの問題ではないことは、注意しておきたいと思います。
孤独死は個人だけではなく、社会的な問題
孤独死が問題なのは、本人の問題であり、それ以上に社会的な問題でもあるからです。同協会によると、亡くなってから発見までの平均日数は17日。遺体は傷んでいるので、賃貸住宅の物件価値が下がります。それに加えて遺品を処理するには相続権者全員の同意が必要で、場合によっては大変な手間と時間がかかります。このため単身高齢者への賃貸住宅の貸ししぶりが起こっています。 そこで、国土交通省は、遺品処理の手続きを簡便にするための契約のあり方を検討して、今年度内に整理する方針です。孤独死は異常事態ではなく、あたり前に起こりうることとして、制度に組み込もうというわけです。
配偶者を亡くした高齢者はかかりつけ医を
職業柄いろいろな例を見てきました。配偶者を亡くした後、なんとか新しい配偶者を見つけようと、結婚相談所に行き、お金を巻き上げられた高齢男性。訪問診療を手伝っていた時に時々見聞きしたのは、介護保険を使って来てもらったヘルパーが気に入って、多額の報酬やプレゼントをあげてしまう話です。 あるケースでは、娘さんから「先生、父はあのヘルパーさんにもう500万円は渡しています。なんとか言ってくだい」と頼まれたこともありました。別の家では、亡くなった後、遺品整理をしたら、高額な絵画がなくなっていたなんていう話もありました。 孤独死は高齢者だけの問題ではありませんが、私は、配偶者をなくして1人になった高齢の患者さんには、必ず、かかりつけ医を持つようにと言っています。介護が必要な状態になっても、医師や介護のチームにかかわってもらうことで、いざという時につながりを持って、フォローしてもらえるからです。 一人暮らしは気楽な反面、年を重ねていけば、体の機能は衰え、突然亡くなっても不思議はありません。それに備えるには、孤立せず、人とつながりを持つための工夫が必要だということでしょう。
引用先:マンションで母娘餓死…「孤独死」の4割は現役世代 コロナ禍で増加の懸念(読売新聞(ヨミドクター)) – Yahoo!ニュース