愛着障害とは

愛着障害とは、母親をはじめとする養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、情緒や対人面に問題が起こる状態のこと。
子供のころに養育者(母親や父親など)から適切でない養育環境、そして虐待(精神的、身体的)などの体験により、5歳前後から生じる過度な恐れ(恐怖感)、警戒心、そして社会的な相互交流の乏しさ、自分そして他者への攻撃性、自尊心の低さなどを呈するものとされています。愛着とは子供の情動面や情緒面の基盤となるものであり、人格形成には非常に大きな働きをもたらします。0歳から3歳くらいまでの子どもにとっては、母などを中心とした養育者との愛着関係がとても大切です。これらがうまくいかずに、子どもが持続的に大きなストレス下におかれると、反応性愛着障害と呼ばれる状態になります。

現代のさまざまな問題の根底には「愛着」が関係している

人間が幸福に生きていく上で、もっとも大切なもの。それは安定した愛着です。愛着は、人格のもっとも土台の部分を形作っています。人はそれぞれ特有の愛着スタイルをもっていて、どういう愛着スタイルをもつかにより、対人関係や愛情生活だけでなく、仕事の仕方や人生に対する姿勢まで大きく左右されます。 安定した愛着スタイルをもつことができた人は、対人関係においても、仕事においても高い適応力を示し、人とうまくやっていくだけでなく、深い信頼関係を築き、それを長年にわたって維持していくことで、大きな人生の果実を手に入れやすい。どんな人に対してもきちんと自分を主張し、同時に不要な衝突や孤立を避けることができ、困ったときは助けを求め、自分の身を上手に守ることで、ストレスからうつになることも少ないと言われています。人に受け入れられ、人を受け入れることで、成功のチャンスをつかみ、それを発展させていきやすい人になれるのです。
従来、愛着の問題は、子どもの問題、それも特殊で悲惨な家庭環境で育った子どもの問題として扱われることが多かったですが、、近年、愛着の問題は、一般の子どもにも当てはまるだけでなく、大人にも広く見られる問題だということがわかってきました。しかも、今日、社会問題となっているさまざまな困難や障害にかかわっていることが明らかとなってきました。
うつや不安障害、アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症、境界性パーソナリティ障害や過食症といった現代社会の病患とも言うべき精神的なトラブルの多くにおいて、その要因になっているだけでなく、離婚や家庭の崩壊、虐待や子育ての問題、未婚化や社会へ出ることへの拒否、非行や犯罪といったさまざまな問題の背景の重要な要因としても、クローズアップされています。
さらに、「発達障害」ということが盛んに言われ、発達障害が子どもだけでなく、大人にも少なくないことが知られるようになってきましたが、実は、この発達障害の背景にも、かなりの割合で愛着の問題が関係しているのです。実際、愛着障害が、発達障害として診断されているケースも少なくありません。

愛着の形成

乳幼児期の心の発達には、愛着の形成が大前提です。愛着の形成は、子どもの人間に対する基本的信頼感をはぐくみ、その後の心の発達、人間関係に大きく影響します。乳幼児期に愛着に基づいた人間関係が存在することが、その後の子どもの社会性の発達には重要な役割を持ちます。愛着とは、子どもが特定の他者に対して持つ情愛的な絆のことです(ボウルビィ)。

第1段階

誕生から生後8~12週ごろまで

前愛着段階で、子どもは特定の他者を区別することはありません。人の声や顔に対して注意を向けたり、微笑したりという行動が見られます。
誰に対しても同じような反応を示します。
生まれたばかりの赤ちゃんはまだ何もできないように見えますが、この時期には、既に自分の周りの社会とやり取りするのに充分な視覚や聴覚、体性感覚が発達しているため、人に対して注意 を向けたり、自分から働きかけることができます。

第2段階

生後12週ごろから6か月ごろまで

愛着形成段階で、特定の他者に対して微笑したり、発声したりして、自ら働きかけるようになります。この時期の子どもは、自分の行動が相手に影響を与えることがわかるようになります。愛着形成段階と並行して、見知らぬ人にもにこにこ笑いかけたりという行動が見られたりもします。これは、自分がにこにこ笑うことで、周りの人がにっこりしてくれた経験や、周りの人から「可愛いね~」などと言われた経験から、自分の行動が相手に影響を与えることが分かるようになったからです。

第3段階

6か月ごろから2、3歳ごろまで

着形成段階です。特定の他者に対して後追いしたり、抱きついたりといった愛着行動が見られるようになります。愛着を形成した人と見知らぬ 人との区別がつくようになります。さらに、愛着の対象者を安全基地として、外の世界に遊びに行くことができるようになります。

人見知り

人見知りもこの時期に表れる行動です。愛着を形成した人と見知らぬ人を区別し、見知らぬ人に対して不安な気持ちになります。 あまりにひどい人見知りだと苦労することもあるでしょうが、子どもの「大好き」という気持ちの表れだと思ってみてください。特定のおなじみの人を記憶しておく、記憶力が発達している証拠です。

後追い

この時期には、愛着の対象者の後を追うということがあります。
お子さんにトイレの中まで追ってこられた経験はありませんか? お子さんが、「大好き」という感情を抱き始めている証です。愛着が形成されている証拠と考えられます。

第4段階

3歳ごろから

愛着の対象者がその場にいなくても、愛着を維持できるようになります。また、愛着の対象者の感情や行動から、自分の行動をコントロールして相手との関係を調整できるようになります。

愛着の形成は、心の発達の基盤になり、親子関係の基本どころか、人間関係の基本になります。この大切な時期に、自分は愛されて守られているという自信をつけて、安心させてあげることが大切です。
愛着が形成されるに従って、養育者のイメージが子供の意識に内在化すると考えられています。つまり、子供の心の中に、受け止めてくれる親がいつでもいるから安心して冒険ができる。ということです。
個人差がありますが、この内在化は、普通は3歳頃までには完成すると言われています。そしてこれが、社会的な行動の土台になっていくのです。

愛着形成が不十分だとあらゆる困難をのりこえられな

「子供の中に養育者のイメージが内在化する」とは、「養育者のまなざしがいつも子供を守る」ということで、例えば、何か悪いことをしようとしたとき、これをしたらお父さんお母さんが悲しい顔をするな、と思い浮かんできて止める。そんな経験をされたことはないでしょうか? その他にも、何か辛いことがあり打ちのめされたときに、それでも人生を頑張ろうと思えるのは、自分の親や配偶者、子供の顔が心に浮かんできて、乗り越えることができる。つまり、しっかりと愛着を結んだ人の存在が助けてくれるのです。これが、幼少期に愛着が形成されている証拠です。

反対に、基盤となる幼少時の愛着が不十分だと、対人関係のトラブル、いじめ、受験や就職の失敗、交通事故、災害など、生きていくうえでいきなり降ってくる数々の困難に立ち向かうことができず、結果、不登校やひきこもりへと発展してしまうことが多くあります。
愛着形成が不十分だと、自己肯定感が低い人間になってしまうため「生きづらさ」を感じながら生活をすることになります。

自己肯定感とは

自己肯定感とは「自己を肯定する感覚」、つまり「自分は大切な存在だ」と感じる心の感覚です。 そのままの自分を認め受け入れ、自分を尊重し、自己価値を感じて自らの全存在を肯定する「自己肯定感」の感覚は、何ができるか、何を持っているか、人と比べて優れているかどうかで自分を評価するのではなく、そのままの自分を認める感覚であり、「自分は大切な存在だ」「自分はかけがえのない存在」だと思える心の状態が土台となります。
この感覚を持てると、自分を尊重するように、他者や周りも尊重できます。すると他者からも尊重され、お互いに尊重し合える関係が作れます。

自己肯定感が高い人の傾向
・自分に対して安心感がある
・自信があり、能動的
・周りに振り回されない
・物事を肯定的に受け止められる
・自然な意欲で行動に移せる
・自分を肯定的にみられる
・物事を肯定的に受け止められる
・自分を尊重するように他者も尊重できる
・人との違いを受け入れられる
・人をジャッジしない
・感情が安定している
・生きるのが楽
・問題解決能力が高い
・人間関係が良好
・失敗を成長の糧にしていける
・他者の意見を聞くことができる
・人の評価に振り回されない
・自分の考え(意見)を伝えられる
・自分の人生は自分で決めている感覚
・主体性が高く、自分軸

自己肯定感が低い人の傾向
・不安や怖れを持ちやすい
・自信がなく、受身的
・他人の評価で自分を判断し振り回される
・物事を否定的に受け止めやすい
・人に評価してもらわないと不安
・自分を否定的に見る
・人と比べて、落ち込みやすい
・他者の意見を聞くことができない
・自分で自分を満たせない
・他人をジャッジする
・自分がジャッジされる不安をもつ
・生きづらさがある
・問題解決能力が低い
・人間関係にトラブルを抱えやすい
・人との違いを認められない
・自分を正当化しないと不安
・他者に対して批判的傾向
・自分の考え(意見)が言えない
・自分の人生は他人に決められている感覚
・主体性が低く、他人軸

自己肯定感の高さにもっとも大きく影響するのは遺伝的なものと、養育環境です。生後1ヶ月ほどのあいだ、泣いたときに親からすぐにしっかりとした反応を受けた乳児は、1歳になるころには、泣いても無視された子供より自立心が強く積極的になった。という研究結果も出ています。
このように、養育者から無条件の愛をたくさん注がれたかどうかが、自己肯定感に最も影響すると言われています。

子供を愛着障害にする親のタイプとは

1、子供を寄せ付けない「氷の女王型」
・元々子供が好きではなく、赤ちゃんを産んで育てる自信がなかった
・産まれてからもどう扱ったらいいのかわからないことが多い
・子供が可愛くないわけではないが、他の母親のように愛せていないのではないかと不安
・自然なスキンシップや言葉がけをすることが不得意
・抱っこやお風呂、寝るときなどの動作がぎこちなくためらいがち
・授乳中も赤ちゃんにおっぱいを飲ませながら、自分は携帯をいじったり漫画をよんでいたりする

2、子供にまとわりつく「ドローン型」
・まるでドローンのように子供の行く先にずっとつきまとい、監視する、過保護・過干渉
・子供の行く先に障害物や穴があったら、先回りして道を整備しておく
・いつも親が代わりに考え、最善の答えを出し、ときには行動さえも代わりにやってしまう
・見栄や体制を気にすることが多く、モンスターペアレントになることもある
・偏見や差別的な思想をもち、常に自分の子供がよその子よりも高い階層にいるように仕向ける
・子供のため、子供の将来のためだと、必死で勉強させて有名大学などに入学させたがる

3、子供の心や体を傷つける「破壊型」
・子供がちゃんとした大人になれるようにと、つい怒鳴ったり、叩いたり、ときには脅したりする
・何かうまくいかないことがあるとカッとなり、反射的に手をあげてしまう
・子供から反抗的な目を向けられるとバカにされているように感じて許せず、ネチネチと責め続ける
・暴力ばかりでなく、ときには無視をして心を傷つける
・感情をコントロールすることができず、ネガティブな感情をもちやすいが、外ではいい顔をしている
・子供をしつけることと、自分のストレスをぶつけることの違いがわからない

4、頼りにならない「お子ちゃま型」
・精神的に大人になりきれておらず、経済的にも自立できていない
・離婚して自由になりたいとは思っていても、経済力がないので嫌々ながらも同じ生活を続ける
・子育てよりも自分の楽しみを優先するため、恋愛や遊びのために家を空けることが多い
・子供をままごと遊びのお人形のように扱ったり、愚痴や悩みを話し、親友代わりに使ったりする
・子供を自分の親に見立てて自分の世話をさせたり、ときには親の役目である家事や育児をさせたりする
・子供の召使いであるかのように言いなりになり、子供の顔色をうかがいながら生活することも

5、自分のために子供を利用する「延長コード型」
・自分が果たせなかったかつての夢や、行けなかった学校に子供を入れることで目標を達成したい
・子供の意思は無視し、勝手な目標のために子供の人生を使う
・利用している自覚はまったくなく、すべては子供の幸せのために苦労していると思っている
・子供に望む職業で多いのが、医者・弁護士・裁判官・タレント・音楽家などがあります
・子供が玉の輿に乗ることや、企業したり、外国へ行くことを強く望むことも

愛着障害は世代間で「連鎖」する

子供を愛着障害にする親もまた、自分の親から適切な対応やスキンシップを受けていないケースが非常に多く見られます。だから、いざ自分が親になったときに、どんなふうに愛情を示せばいいのか、どうやって育てたらよいのかがわかりません。
つまり、愛着障害は自分一人の問題ではすまず、「子供」 → 「孫」 にまで連鎖してしまいます。
愛着障害を克服できないまま親になると、今度は子供との関係において、その問題がはっきりと反映されてしまう・・・。この負の連鎖を断ち切るためには、どこかの代で、誰かがこのことに気づき、勇気をもって克服する覚悟を決める必要があります!

大人の愛着障害の特徴

<情緒面>
・傷つきやすい
・怒りを感じると建設的な話し合いができない
・過去にとらわれがち、過剰反応
・0か100かで捉えてしまう
・意地っ張り など

他人の何気ない発言に対して過剰に反応してしまい、傷ついてしまったり、過去の失敗や恐怖を極度に引きずってしまったりすることがあります。また、一度頭に血が上ってしまうと何に怒っているのか整理 することができず、当たり散らしてしまう。「ある・ない、好き・嫌い」など物事や人を極端に捉えることしかできない。

<対人関係>
・親などの養育者に対して敵意や恨みを持つ、または過度に従順になったり、親の顔をうかがう
・親の期待に応えられない自分をひどく責める
・人とほどよい距離がとれない
・恋人や配偶者、また自身の子どもをどう愛すればいいかわからない など

第一に愛着障害の原因をもたらした養育者に対しての態度に症状が見られることがあります。また、子どもの場合と同じように、人とほどよい距離を保つことができない、恋人や配偶者、そして自分の子どもに対してどのように愛情を注げばいいかわからず、関係づくりに苦労することがあります。

愛着障害かな?と思ったら

子どもの愛着障害については、保育や教育などの現場で問題意識が普及しつつありますが、大人の愛着障害に関する研究はまだ発展途上で医学的にも確立された疾患ではありません。精神科医やカウンセラーなどの専門家であっても、表面に出ている精神疾患の症状とともに、愛着の問題にも対応できるケースはそれほど多くはありません。
そのような事情から、成人に正式に愛着障害の医学的な診断がつくことはまれであると考えられます。しかし、その困りごとや症状に、その人の抱える人間関係の悩みや困難、発達障害、他の精神疾患の合併などが隠れている可能性もあります。
精神科や心療内科、カウンセリング機関だけでなく、まずは信頼できる場所に相談してみましょう。大事なのは、毎日の生活を少しでも楽にすることと、役に立つ治療や情報とつながることです。
不安な気持ちや満たされない気持ちなどの問題がある場合、心理的な安全基地をつくることが大切です

ジーサポートでは、愛着障害か否かの「診察や診断」といった医療行為は行っておりませんが、 愛着障害の方々によくみられる「愛着障害の特性」を理解し改善・解決へ向けてのアドバイスやサポートをご提供しております。
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