HSPとは
Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)といい、「ひといちばい繊細な人」という意味で、この頭文字を取ってHSP(エイチエスピー)と言います。これは90年代のはじめ、繊細な人についての研究をはじめたエレイン・アーロン(Elaine Aron)博士によって付けられた「人の気質」を表す名称です。 HSPの人は、周囲の状況にとても敏感で、不安や恐怖心が強く悲観的になりやすい。また、他人の気持ちに敏感で、強く同調したり、共感したりするため、職場や家庭など生活の中で気疲れしやすく、生きづらさを感じている人が多くいます。
そんなHSPの人に生まれつき備わっている能力が、「自分の近くにいる人の考えを、まるで自分自身が体験しているように感じてしまう」能力です。
これはHSPの人が持つ鋭い直観の働きによるもので、察知能力が高い分、自分と他人との精神的な境界線が薄く、共感性が高いために周囲の人の影響を受けやすくなります。
脳科学の視点から言うと、これは脳の中にあるミラーニューロン(脳の中の鏡)が人一倍発達していると言われています。そのため、脳がかすかな情報まで拾い集めてしまうので、情報過多になり、心身ともにぐったりして不調をきたしてしまうのです。
HSPという名前だけを聞くと何かの病気と思われがちですが、これは病名ではありません。
HSPの繊細さや敏感さは生まれ持った「気質」です。気質とは、その人が生まれながらに持っている感受性や気分の傾向などを指す心の特徴で、環境などに影響される性格と違って後天的に変えることはできません。また、HSPは発達障害のような医学の診断名ではなく、心理学で使われる用語のため、一般的にまだ知られておらず、医師のなかにさえ知らない人が多くいるのが現状です。
HSPの4つの特性「DOES」
考え方が複雑で、深く考えてから行動する
【Depth of processing】
- 一を聞いて、十のことを想像し、考えられる
- 調べ物をはじめると深く掘り下げ、その知識の広さを周りに驚かれる
- お世辞や嘲笑をすぐに見抜いてしまう
- 物事を始めるまでにあれこれ考え、時間がかかる
刺激に敏感で疲れやすい
【Overstimulation】
- 人混みや大きな音が苦手
- 友達との時間は楽しいものの、気疲れしやすく帰宅すると、どっと疲れている
- 映画や音楽、本などの芸術作品に感動して泣く
- 人の些細な言葉に傷つき、いつまでも忘れられない
人の気持ちに振り回されやすく、共感しやすい
【Empathy and emotional responsiveness】
- 人が怒られていると自分のことのように感じ、傷ついたり、お腹が痛くなったりする
- 悲しい映画や本などの登場人物に感情移入し、号泣する
- 人のちょっとした仕草、目線、声音などに敏感で、機嫌や思っていることがわかる
- 言葉を話せない幼児や動物の気持ちも察することができる
あらゆる感覚がするどい
【Sensitivity to subtleties】
- 冷蔵庫の機械音や時計の音が気になってしまう
- 強い光や日光のまぶしさなどが苦手
- カフェインや添加物に敏感に反応してしまう
- 肌着のタグなどチクチクする素材が我慢できないほど気になる
- 第六感がはたらき、よく当たる
アローン博士はこの4つのうち1つでも当てはまらない人はHSPではない、と定義しています。例えば、4つのうち3つに当てはまっていたとしても、1つはあまり当てはまらないと感じるなら、「HSP=人一倍繊細な人」ではなく、性格的に「内向的な人」の可能性が高くなります。
HSPと発達障害
HSPと発達障害には共通点が多く、特に「対人関係が苦手」「光や音に敏感」といった共通の特徴があるので、苦しさのため病院を訪れても、医師がHSPを知らないために発達障害や精神障害と診断してしまうこともあります。症状は人それぞれなので、HSPと発達障害の両方の症状をもつ人、どちらともわからないグレーゾーンの人も増えています。
HSPと発達障害の共通項
- ①光や音などの強い刺激に敏感に反応しやすい
- ②特定の分野において優れた才能を発揮する
- ③外部と自分との違いに悩み、苦しみを感じている
- ④大勢での飲み会より少人数の集まりが好き
- ⑤頭の中に次々といろんな考えが浮かぶ
- ⑥心配事が浮かぶと、頭から離れなくなってしまう
- ⑦想定外の出来事に弱く、パニックを起こしたことがある
- ⑧他の人には見えないモノが見えることがある
- ⑨睡眠障害がある
- ⑩建前と本音の区別がつかない
ただし、共通項と言っても、HSPと発達障害では原因が違います
- ④「大勢の飲み会より少人数の集まりが好き」の場合
- HSP=大勢の人といると脳に刺激を受けすぎて疲れるから苦手。
- 発達障害=相手の気持ちが読み取れないため大勢の中にいても楽しくないから苦手。
- ⑤「頭の中に次々といろんな考えが浮かぶ」の場合
- HSP=五感の感度が鋭敏なため、脳が刺激を受けすぎるから。
- 発達障害=外部の刺激からではなく、脳が過剰興奮を受けやすいから。
- ⑩「建前と本音の区別がつかない」の場合
- HSP=人の言葉を素直に信じてしまう傾向があるから。
- 発達障害=言葉や表情の裏を読み取れないから。
このように、HSPと発達障害というのは、ある意味、正反対の状態であるにもかかわらず、多くの共通項があるので、発達障害とされる人たちの中に、実はHSPであるかもしれない人が多くいるのではないかと言われています。
HSP | 発達障害 | |
---|---|---|
間隔過敏 | ある。音・色・匂いなど五感が敏感 | ある。アスペルガー |
対人関係 | 相手の気持ちを読みすぎて辛くなる | アスペルガー・空気が読めない ADHD・あまり問題ない |
建前と本音 | 本音を読み取る | アスペルガー・ADHD 言葉をそのまま受け取る |
こだわり | ある。頭から離れなくなることがある | アスペルガー・大いにある ADHD・執着は少ない |
不注意 | 他のことに気を取られていると不注意になることがある | ある。アスペルガー 好きなものには細かい。ADHD |
多動 | ある。刺激が強すぎて落ち着かない | ある。アスペルガー・あることも ADHD・落ち着きがない |
衝動性 | ない。石橋を叩いてわたるタイプ | アスペルガー・あることも ADHD・ある |
ご自分またはお子様の傾向を探るために、HSP度と発達障害度をチェックしてみましょう。ここに挙がっているチェック項目は、多かれ少なかれ誰にでもある傾向ですので、チェックするかしないか迷うことも多いと思います。次の2つのポイントを意識してチェックしてください。
「あまりに落差が激しい」「それによって日常生活に支障が起きている」毎日の生活の中で、どんなことに困っているかに注目してチェックしてください。
HSP度(高敏感度)チェック
- 人の気分に左右されやすい
- 音や色、光に敏感で気分がわるくなることがある
- サプライズは苦手
- 環境の変化に弱い
- 飲み会など楽しいことのはずなのに疲れる
- 人の言葉をうのみにして判断を間違ったことがある
- 映画や芝居の登場人物に感情移入しやすい
- ミスや忘れ物が多い
- 友達は少ないほうだ
- 優柔不断でなかなか決断できない
- 過去を思い出しては後悔する
- 親の顔色を見ながら育ったとの自覚がある
- 人から何か頼まれると断れない
- 自分への悪口を実際に耳にしたことがある
- 権威ある人、名のある人の言葉や書籍をそのまま信じる
- 気分が即体調に影響する
- 下着や洋服の匂い、肌触りが気になって仕方がない
- 映画やテレビのバイオレンスシーンを目にすると気分が悪くなる
- 自分の親は神経質だと感じたことがある
- 気が付くと「一人反省会」をしていることがある
- 暗示にかかりやすい
- 超常現象に遭遇したことがある
- 身の回りに不思議なことがよく起きる
- あれをして、これをしてと命令されるとパニックに陥る
- 大切な場面を控えると緊張して眠れなかったり動悸が激しい
- 悪いことが起きるのではないかと心配になることがある
- 人マネが得意で、よく感心される
- 嘘や偽善に敏感だと感じる
- 天然だねと言われることがある
- 実力より低く見られていると感じる
発達障害度チェック
- 人が何を話しているのかわからないことがある
- 一つのことに興味を持つと、そのことが頭を離れない
- 一方的に自分のことばかり話すことがよくある
- 自分なりの儀式があり、それをやらないと不安になる
- 思ったことをすぐに口に出し後悔したことがある
- 長い時間待つことができず、途中で帰ったり順番を無視したことがある
- 物事を先延ばしにする傾向がある
- 退屈に我慢できない
- 部屋が片付けられず、家人とよく揉める
- 買い物がやめられない
- 料理の段取りが苦手で、作りながら洗ったりと二つのことが同時にできない
- ストレスを感じると身体のどこかを動かさずにはいられない
- 特定の食べ物しか口にしない。偏食が強い
- 皆が笑っていることが面白く思えないことが多い
- 頭の中に次々といろんな考えが浮かんできて不安になる
- タバコやアルコールをどうしても手放せない
- 目新しいものにすぐに飛びつく
- 昼間でも眠くなることがある。人より長く寝る
- 感情の起伏が激しいと言われる
- 得意なことと不得意なことの差が激しい
- 心配事が頭に浮かぶと、どんどん大きくなり不安や恐怖に陥る
- 人と離れた時や仕事帰りの道でいきなり気分が変わることがよくある
- 他の人が考えもつかないことを考えると言われたことがある
- 学歴・育ちに関係なく自分はダメだと感じることがある
- 他の人が気付かない音や細部が気になることがある
- 小説や映画でストーリーがよく理解できないことがある
- 電話が苦手で出るのが怖くなることがある
- 同じことを何度も繰り返す傾向がある
- 仕事の期限が守れないことがある
- 職場でコピー取りや掃除などの雑事が苦手で気が利かないと言われる
チェックした結果、「どちらにも当てはまる」と不安になった方もいると思いますが、実はそういう人はとても多くいらっしゃいます。
HSPと発達障害の両方の症状を持つ人・両者の境界線上いわゆるグレーゾーンの人など、一人一人が異なり、症状が違いますので、まずは自分またはお子様がどんなことが得意で、どんな症状に困っているかを知ることが非常に大切です。
HSPかな?と思ったら
人一倍感受性が高いと、「神経質な人」「繊細な人」とレッテルを貼られてしまいがちです。すると孤独感が高まり、抑うつ傾向になってしまう可能性もあります。
精神科や心療内科、カウンセリング機関だけでなく、まずは信頼できる場所に相談してみましょう。大事なのは、毎日の生活を少しでも楽にすることと、役に立つ治療や情報とつながることです。
不安な気持ちや満たされない気持ちなどの問題がある場合、心理的な安全基地をつくることが大切です。
ジーサポートでは、HSPか否かの「診察や診断」といった医療行為は行っておりませんが、 HSPの方々によくみられる「HSPの特性」を理解し、そうしたことをどのように抱えながら、どのように生活をしていけば良いのか、アドバイスやサポートをご提供しております。
1人で抱えこまず、私たちジーサポートにお気軽にご相談ください!