パーソナリティ障害とは

パーソナリティ障害は、大多数の人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんでいたり、周りが困っているケースに診断される精神疾患です。認知(ものの捉え方や考え方)や感情、衝動コントロール、対人関係といった広い範囲のパーソナリティ機能の偏りから障害(問題)が生じるものです。注意したいのは、「性格が悪いこと」を意味するものではないということです。パーソナリティ障害が「パーソナリティ」の「障害」であると、単純に考えてはいけません。
パーソナリティ障害の特徴は、本来のパーソナリティの意味する個人のもつ固有・不変の特徴ではなく、むしろ環境に対する個人の非適応的な反応パターンだと考えられるものなのです。

時間的経過でも、このパーソナリティ障害とパーソナリティの基本的な相違が明らかにされています。パーソナリティには、10年、20年と時間が経ってもほとんど変化しない性質がありますが、パーソナリティ障害は、数年の経過の中で変化する(改善する)ことがいくつもの研究で確認されています。
また、パーソナリティ障害には、他の精神疾患を引き起こす性質があります。パーソナリティ障害と合併したほかの精神疾患が前面に出ることが多いので、パーソナリティ障害は背後から悪影響を及ぼす黒幕のような病気だということができます。

パーソナリティ障害の類型・分類

  • A群:奇妙で風変りなタイプ

    妄想性、統合失調質、統合失調型パーソナリティ障害が含まれる。

  • 妄想型パーソナリティ障害の基本的な症状  広範な不信感や猜疑心。自らの正当性を強く主張し、周囲と絶えず不和や摩擦を引き起こす。認知や判断が自己中心的、偏狭。臨床特徴:妄想性障害、妄想型統合失調症を発症することがある。男性に多い。
  • シソイドパーソナリティ障害の基本的な症状  表出される感情に温かみが感じられない。非社交的、孤立しがちで、他者への関心が希薄。臨床特徴:かつて統合失調症の病前性格といわれていた。男性に多い。
  • 統合失調型パーソナリティ障害の基本的な症状   会話が風変りで、内容が乏しく、脱線しやすい。思考が曖昧で過度に抽象的。感情の幅が狭くしばしば適切さを欠き、対人関係で孤立。臨床特徴:統合失調症に発展するケースが多い。
  • B群:演技的・感情的で移り気なタイプ

  • 境界性、自己愛性、反社会性パーソナリティ障害が含まれる。
  • 境界性パーソナリティ障害の基本的な症状
  • 感情や対人関係の不安定さ。自傷行為や自殺企図、浪費や薬物乱用など自己を危険にさらす衝動的行動。同一性拡散。妄想反応や解離反応といった精神病症状に近縁の症状。臨床特徴:大うつ病、物質使用障害など多くの精神障害を合併。臨床現場で高い比率でみられる。女性に多い。
  • 自己愛性パーソナリティ障害の基本的な症状
  • 傲慢、尊大な態度。他者の注目と賞賛を求める。他者の過剰な理想化がみられることもあり。自己評価にこだわり、周囲の批判や無関心に対して抑うつや激しい怒りをみせる。他者への共感性が低い。臨床特徴:大うつ病や物質使用障害を合併しやすい。男性に多い。
  • 反社会性パーソナリティ障害の基本的な症状
  • 他者の権利を無視、侵害する反社会的暴力的行動。衝動的、向こうみず。他者の感情に冷淡で共感を示さず、信頼、正直さに欠ける。自らの逸脱行為に責任を負おうとせず、罪悪感が乏しい。臨床特徴:物質使用障害の合併が多い。男性に多い。
  • 演技性パーソナリティ障害の基本的な症状
  • 他者(特に異性)の注目や関心を集める派手な外見や演技的行動。感情表現がわざとらしく、表面的で真実味に乏しい。被暗示性が強く、周囲から影響を受けやすい。周囲に認められることを渇望。臨床特徴:女性に圧倒的に多い。
  • C群:不安で内向的なタイプ

    依存性、強迫性、回避性パーソナリティ障害が含まれる。

  • 依存性パーソナリティ障害の基本的な症状 他者への過度の依存。自らの行動や決断に他者の助言や指示を常に必要とする。他者への迎合的態度。自らの責任を担おうとしない無責任さ。他者の支えがないと、無力感や孤独感を抱く。臨床特徴:大うつ病、パニック障害に多く合併。女性に多い。
  • 強迫性パーソナリティ障害の基本的な症状 一定の秩序を保つことに固執。融通性なく、几帳面、完全主義や細部への拘泥、頑固、過度に良心的で倫理的、吝嗇、温かみのない狭い感情。優柔不断、決断困難。未知のものや強烈な感情を避ける。臨床特徴:男性に多い。
  • 回避性パーソナリティ障害の基本的な症状 自分の失敗を恐れ、周囲からの拒絶や強い刺激をもたらす状況を避ける。自己への不確実感、劣等感などの自己にまつわる不安や緊張。対人交流に消極的でひきこもりをみせる。臨床特徴:社交不安障害の合併症が多い。

境界性パーソナリティ障害

パーソナリティ障害の中で最も多くの研究が行われている境界性パーソナリティ障害は女性が多く、感情・行動・対人関係の不安定さから、社会生活に著しい苦痛や支障を引き起こしてしまい、うつ病や不安障害、摂食障害、依存症などの背後に、境界性パーソナリティ障害があるケースも少なくありません。 代表的な症状としては
・見捨てられるのが不安で、必死にしがみつき相手を困らせる
・自殺企図や自傷行為を繰り返す
・めまぐるしく気分が変動する
・対人関係が両極端で不安定
などがあります。
つらい感情を感情として抱えられず、言葉でなく行動で表現してしまいます。悲しみや不安を、リストカットや行きずりの性交渉や薬物依存などで表します。 感覚が繊細な人たちで、他人の何気ない発言や行動を深読みして対人関係に難をきたします。わかってくれる人を探し求め、すがって傷ついて……を繰り返します。

反社会性パーソナリティ障害

反社会性パーソナリティ障害は、社会の規範を破り、他人を欺いたり権利を侵害したりすることに罪悪感を持たない障害です。精神病質、社会病質、あるいは非社会性パーソナリティ障害とも呼ばれます。診断するには、少なくとも18歳以上で、15歳以前にいくつかの素行症の症状が出現していることなどが要件になります。素行症とは、社会から要求される規範や規則を守らない行動の反復、持続です。たとえば、人や動物への攻撃、所有物の破壊、虚偽または窃盗、重大な規則違反などが挙げられます。

この障害を持つ人たちは、窃盗や非合法な職業、飲酒運転、速度超過など、逮捕されるかもしれない行動を繰り返すことがあります。いらだたしく攻撃的な面があり、殴り合いのケンカに参加したり、家族に身体的暴力に及んだりするケースもあります。子どもがいる場合は、虐待やネグレクトや、育児放棄につながる可能性もあります。自分の利益や快楽(金銭、性交渉、または権力を手に入れること)のために、人を欺いたり操作したりするほか、将来の計画を立てられないために衝動的な行動に出る傾向が見受けられます。

パーソナリティ障害の原因は?

パーソナリティ障害の発生には、さまざまな要因が関与していると考えられています。第一は遺伝的要因です。
それは、パーソナリティ障害の特性が同じ家系の人に見出されることが多い、一卵性双生児で二卵性双生児よりも一致いやすい、といった臨床遺伝学的研究によって確認されています。
さらに、パーソナリティ障害と生物学的特性との間のさまざまな関連が確認されています。
たとえば、反社会性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害などの患者では、その衝動性がセロトニン系(神経伝達物質であるセロトニンによって信号が伝えられている神経組織)の機能低下と関連しているという知見が報告されています。このような所見は、パーソナリティ障害が生物学的に決められていることを示しています。

そして、もっとも重要なのが環境的要因で、家庭環境が関係しますが、核家族化した家庭では、親の影響が非常に大きくなっています。その一つは、愛情や世話がほどよく行き届いたかどうかという点です。ネグレクトされて育ったり、見捨てられたりする体験は、傷つきやすく、不安定な人格を生みます。もう一つは、親が、行動の手本になるということです。子どもは、言葉を学ぶように、親の行動から学びます。親が何に価値を起き、どう振る舞っているかを受け継ぎます。たとえば、演技性パーソナリティ障害の人では、容姿や性的魅力をとても重要視する家族がいることが多いのです。

また、親の行動を模倣するだけでなく、親との関係を、他人との間で再現してしまうこともあります。虐待され、親から粗末に扱われた人は、他人から同じように扱われるような関係を再現してしまいやすいのです。境界性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害では、劣悪な養育環境(発達期の虐待、貧困や施設での生育など)が発生要因として関与していると考えられています。

パーソナリティ障害の全般的診断基準

パーソナリティ障害を診断する際には、以下の条件を満たすことが必要です。
1、その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った内的体験および行動の持続的パターンであり、それは以下の2つ以上の領域に表れる。

  • ① 認知(自己、他者、および出来事を知覚し解釈する様式)
  • ② 感情(情動反応の広がり、強さ、不安定さ、適切さ)
  • ③ 対人関係機能
  • ④ 衝動コントロール

、その持続的パターンには柔軟性がなく、個人的および社会的状況の幅広い範囲に広がっている。
、その持続的パターンによって、臨床的に明らかな苦痛、または社会的、職業的もしくは他の重要な領域における機能障害が引き起こされている
、そのパターンは長期間安定して持続しており、その始まりは遅くとも青年期もしくは成人期早期までさかのぼることができる。
、その持続的パターンは、他の精神疾患の表れ、またはその結果では、説明されない。
、その持続的パターンは、薬物(薬物乱用や投薬)の作用や一般身体疾患(たとえば頭部外傷)の直接的な作用によるものではない。

診断方法

パーソナリティ障害の診断は、まずさきに示した全般的診断基準にその患者が当てはまるかどうかを吟味します。次いで、個々のパーソナリティ障害の類型記述(診断基準)に照らしあわせて、規定数以上の診断基準を満足しているならば、その類型を診断します。厳密には(たとえば、研究で用いられる診断の場合)、それぞれの類型の特徴(診断基準)の有無を面接で一通り調べるという手法(構造化診断面接)が使われることがあります。従来から行われている患者の全体的な症状から直観的にパーソナリティ障害類型を決める診断法は、医師の間で意見が十分に一致しないという問題点が指摘されています。

パーソナリティ障害の治療

パーソナリティ障害の治療には、比較的長期にわたって患者と支援者が協力して努力を続けることが欠かせません。そこでは、どんなことが問題になっているのかということや、その対策について一緒に検討します。ここではとくに、患者が積極的に治療に参加することが大切です。
治療では、支持的精神療法、認知行動療法、精神分析的精神療法などの精神療法(orカウンセリング)が行われます。境界性パーソナリティ障害に対する治療プログラムが科学的に有効であることがわかり、効果の高い治療法も開発され、実際の治療に活かされています。
薬物療法では、感情調整薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や少量の抗精神病薬がパーソナリティ障害の症状を軽くするのに有効であることがわかっています。また、合併しているほかの精神疾患の治療も重要です。
かつては、パーソナリティ障害はなかなか変化せず、長期間にわたって患者を苦しめると考えられてきました。しかし最近の研究では、パーソナリティ障害の特徴の多くは、年齢とともに徐々に軽快することが明らかにされています。また、治療によって回復が早くなると考えられるようになっています。

一番大事なことは、ご本人の「治りたい・治したい」という気持ちです。

治療では、過去のつらい出来事やできれば知らぬふりをしたい事ともきちんと向き合わなければいけません。
また、治療期間も人によっては長期にわたることもあります。
ジーサポートでは、パーソナリティ障害か否かの「診察や診断」といった医療行為は行っておりませんが、 パーソナリティ障害の方々によくみられる「パーソナリティ障害の特性」を理解し改善・解決へ向けてのアドバイスやサポートをご提供しております。
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