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「責めずに見守ってくれた」朝起きられない…起立性障害、改善までの道のり
自律神経の不調により発症する起立性調節障害(OD)について2月20日付本紙朝刊で報じたところ、多数の反響が寄せられた。10代に多く、めまいや立ちくらみがあり重症化すると長期の不登校や引きこもりにつながる。それを防ぐには周囲の理解と、当事者の不安を取り除く環境を整えることが欠かせない。症状が改善した当事者や家族の話から必要な支援を考える。
安心して戻れる環境を学校がつくってくれた
福岡市の中2男子(14)は入学後2カ月ほどで症状が出始めた。昼ごろまで頭痛やだるさで起き上がれず、長く立っていられない。すぐにODと診断された。 母親(45)は登校を強制しなかった。自身も高校時代、同じ症状で不登校になった経験があったからだ。「周りに言われると本人はつらい。不安はあったが親としてどーんと構えようと思った」。学校側も理解を示し「無理せず、来られるときに来たらいい」。担任がほぼ毎日、家を訪れ、体調を気にかけてくれた。
学校側の提案で、体調が比較的良くて登校できた日もまず保健室に行き、体調を見ながら1時間過ごしてから教室へ向かうとスムーズに授業になじめた。 コロナ禍も思いがけず有利に働いた。昨年3月、一斉休校に。すると不登校の負い目が和らいだ。毎朝早めに起き、兄弟と一緒にジョギングするなど生活リズムを整えた。6月、休校が明けると毎朝登校できるようになった。サッカー部の早朝練習にも参加した。 今も雨の日など天候によってはつらい朝もある。だが男子は言う。「自分のことは自分が一番分かる。一番きつかったとき、家族が責めずに見守ってくれたこと、安心して戻れる環境を学校がつくってくれたこと。本当にありがたかった」
「大丈夫。治るから」。弟を励ました兄2人
福岡市の別の母親(55)は長男(26)と次男(24)、三男(12)の全員が小学校高学年から中学にかけてODと診断された。当初、無理に学校に連れて行ったが、子どもたちは吐いたり、担任に責められ症状が悪化したりしたという。 母親は医師や専門家に相談を重ね、次第に向き合い方を変えた。大切にしたのは自尊心を傷つけないこと。不登校が続く子どもたちに「人生は長い。大丈夫、大丈夫」と言い続けた。 スクールカウンセラーの助言もあり、長男と次男は定時制高校へ。授業は午前、午後、夜間の3部制で、生徒の体調に合わせてカリキュラムを組む。自由な校風で、運動部にも復帰した。2人とも症状は高校在学中に改善。長男はその後、大学を卒業し、現在はソフトウエア開発の会社に勤める。次男も大学に進み、薬剤師を目指して勉強中だ。 三男はODの症状で学校に行けない日も多い。兄2人は弟に「大丈夫。治るから」と励ます。母親は言う。「お兄ちゃんたちは成長期が終わって時間が解決したのかもしれないが、高校生活を心から楽しんでいた。周りの理解次第で子どもの状態はまったく変わる。多くの人にODのことを知ってほしい」
安心できる場所をつくることが大事
大阪医大病院の吉田誠司医師(小児科)の話 ODの子どもは体の症状だけでなく、周囲の無理解に苦しみ、時に自分を責めてしまう。彼らが安心して過ごせる場所をつくることは心の苦しみを和らげ、症状の緩和にもつながる。 (本田彩子)
【ワードボックス】起立性調節障害(OD)
自律神経の働きが崩れ、体を起こしたり立ったりするときに脳などへの血流が低下して発症する。小学校高学年から高校生に多い。主な症状に立ちくらみやめまい、朝起きられない、頭痛、腹痛などがある。
引用先:「責めずに見守ってくれた」朝起きられない…起立性障害、改善までの道のり(西日本新聞) – Yahoo!ニュース