関連ニュース・事件
私の夫は発達障害?専門家が教える診断基準と対処法
「話しかけても『うん』『そう』などいつも反応が薄い」
「家族のことを提案するのはすべて妻である自分から。夫は反論せずなんでも『イエス』」
「忘れ物が多く、いつも服を脱ぎっぱなし。何度言っても治らない」
「自己中心的で機嫌が悪くなると声を荒げる。テレビに向かってよく文句を言っている」
このような夫の言動に悩んでいる人はいませんか?
私の夫ってなんだか変?と思いながらまわりの人に相談しても、「男の人はそういうものよ」となかなかわかってもらえず、行き場のない苦しい思いを抱えている妻たちがいます。
実は、上に書いたエピソードはすべて発達障害の特性が表れているもの。発達障害特性が見られる夫を持ち、その障害特性に翻弄されて身体的・精神的にダメージを受けている妻たちの症状を「カサンドラ症候群」と呼びます。
そんな夫と妻のエピソードと解決法がまとめられている書籍が『私の夫は発達障害?』(すばる舎)。著者の真行結子さんは、夫との関係に20年悩み、うつ状態を経験。その後、シニア産業カウンセラーの資格を取得し、カサンドラ症候群の人を支援する団体を設立しました。
真行さんの団体では、医師による発達障害との診断がおりていなくても、発達障害特性に重なる夫の言動に起因する悩みを妻が抱えているのならカサンドラであると判断しており、多くの妻たちが相談に訪れているのだそうです。
私の夫ももしかして発達障害?と思うふしがある方に向け、書籍では診断表も掲載されています。スウェーデンの自閉症研究者ギルバーグによる診断基準で、発達障害であるかどうかを知る目安になります。あくまで目安となりますので、こちらを見て、より正確な診断を望まれる方は医療機関を受診してみてください。
発達障害(アスペルガー症候群)チェックリスト
1 社会性の欠如<極端な自己中心性>
(次のうち少なくとも二つにチェックがつくと、発達障害の傾向があるとされています)
□友だちと相互にかかわる能力に欠ける
□友だちと相互にかかわろうとする意欲に欠ける
□社会的シグナルの理解に欠ける
□社会的・感情的に適切さを欠く行為
2 興味・関心の狭さ(次のうち少なくとも一つ)
□ほかの活動を受けつけない
□固執を繰り返す
□固定的で無目的な傾向
3 反復的な決まり(次のうち少なくとも一つ)
□自分に対して、生活上で
□他人に対して
4 言葉と言語表現の問題(次のうち少なくとも三つ)
□発達の遅れ
□表面的には誤りのない表出言語
□形式的で、細かなことにこだわる言語表現
□韻律の奇妙さ、独特の声の調子
□表面的・暗示的意味の取り違えなどの理解の悪さ
5 非言語コミュニケーションの問題(次のうち少なくとも一つ)
□身振りの使用が少ない
□身体言語(ボディランゲージ)のぎこちなさ・粗雑さ
□表情が乏しい
□表現が適切でない
□視線が奇妙、よそよそしい
6 運動の不器用さ
□神経発達の検査成績が低い
(『私の夫は発達障害?』より)
出典:Gillberg IC, Gillberg C(1989) Asperger syndrome: some epidemiological considerations:a research note. Journal of Child Psychology and Psychiatry 30:631-8
次ページでは、実際に著者の真行さんが夫との関係に悩み続け、自身がカサンドラ症候群と知り今に至るまでのエピソードを紹介します。
なんでも言うことを聞いてくれる真面目な夫。でもそんな夫がストレスに……
真行さんの旦那さんは真面目に働き、お給料はすべて家庭に入れ、決められたお小遣いの中でやりくりし、常に穏やかで、お願いしたことはやってくれる人。
一見パーフェクトな人に見えますが、なにが悩みの種だったのかというと、休日の過ごし方・家族のイベント・子供の教育方針・家の購入に至るまですべての提案をするのは妻の真行さん。提案に対して夫は反論せず、すべてイエス。悩みごとを話しても「そうですか」の一言。複雑な相談になると石のように固まってしまい、いつもひとりで答えを模索しなければいけませんでした。
こんな調子だったため、夫と一緒に暮らしていても、家族としてエピソードを「分かち合う」感覚は持てずにいたそうです。しかし、真面目に働き自分の言うことをなんでも聞いてくれる夫のことは、まわりに相談しても「いい旦那さんじゃない」と言われてしまい、悩みを理解してもらうことはできません。
さみしさと、夫への嫌悪と怒り、そして自責の念により心のバランスを崩してしまった真行さんは精神科を受診。うつと診断され、仕事も3年休職することになってしまいました。そんなある日、発達障害について調べて行く中で「カサンドラ症候群」という言葉を知り、まさに自分がカサンドラなのだと気づきます。
夫に医療機関を受診させようとするも、混み合っていて予約が取りにくく、初診までに数ヶ月待つという状況。当時の真行さんは診断までに半年にも及ぶ期間には耐えることができず、発達障害について知識があるカウンセラーの「夫婦カウンセリング」を選択しました。そこで数回のセッションを受けた後、「あなたの夫は、生活にも夫婦関係においても困っていません。このままカウンセリングを続けても、夫は変わらないと思います」と告げられます。
「改善を試みる妻と、それに向き合えない夫」の構図がカサンドラを生む
真行さんの家庭のように、旦那さん本人が困っておらず、妻がひとりで夫を改善させようと悩んでいる場合にカサンドラが生まれます。カサンドラ症候群からの回復には「お互いが向き合い歩み寄る姿勢」が重要なポイントです。
実際に、発達障害のパートナーとよい関係を保っているカップルには以下のような共通点があるそうです。
(1)夫の、自分には発達障害特性があるという自覚
(2)妻の、発達障害への理解および夫への適切な対応
(3)よい関係づくりに向けて夫と妻が努力していること
(4)悩みを「家庭」のみで抱え込んでいない。周囲の理解とサポートがある
(5)夫の受診、正確な診断、その後の医療機関等でのサポート
(『私の夫は発達障害?』より)
カサンドラからの回復には、夫婦の歩み寄りが不可欠。そのため、夫にその姿勢が見られない場合は思い切って「夫と距離をとる」選択も必要です。
カサンドラに陥った妻の多くは、がんばり屋で我慢しがちな傾向にあります。夫婦関係の「継続」にこだわるのではなく、ふたりの関係の「質」にこだわるというのもひとつの選択です。
引用先:https://news.yahoo.co.jp/articles/fba9c96464523e5582cec4951058c3e769f7c6cb