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子どもがニート? ひきこもり?…「老後破産」の現実
2016.02.22
誰もがなりうる「ひきこもり」
ファイナンシャルプランナーとして、多くのご家
庭の家計シミュレーションを作成し、将来の家計の状況を確認していただいている。もっとも、不確定な未来のことだけに、いくつかの前提条件を仮定し分析を行うことになる。その前提条件のうち、代表的なものが、「子どもは大学を卒業したら、親の家計から独立する」というものである。
通常であれば、子どもが23歳になる時点で、生活費を1人分少なくした家計設計を行う。大学受験浪人をした、大学院に進学する、などで多少遅れることはあっても、20代半ばからは子どもは社会人として働き、まったくお金がかからないという前提である。
ところが、この数年はこの大前提が崩れてきている。学校を卒業しても、自立できない子どもが増えているのだ。いわゆる「ひきこもり」や「ニート」の状況になる子どもが少なくない。そうなると、将来の家計予測は一変する。
ちなみに、私たちファイナンシャルプランナーの仲間で、「働けない子どものお金を考える会」という活動を続けている。今回は、その経験を踏まえ、子どもが独立しないという予想外の事態で家計設計が窮地に陥るケースを考えてみよう。
「ひきこもり」と言われる状態にある人がどの程度いるのかは、調査によって異なるが、平成22年に内閣府が行った調査によると、約69.6万人と推計されている。15歳以上39歳以下の約1.8%に相当する。これに、仕事をしたりしなかったりという「ニート」的な状況の人を加えると、自立した生計を立てられない若者は、かなりの数に上るだろう。
今や、子どもは23歳になったからといって、就職して家計から独立するとは限らない。その後も子どもの生活費が親の負担になってしまうことがありうるのだ。
また、いったん就職しても、その後にドロップアウトしてしまい、無職となって親元に戻って過ごすというケースも多い。たいていの親は、子どもが就職すると「やれやれ」と安心し、負担が減ったことに安堵する。それがいきなり、先の見えない負担増となるのだから、戸惑いも大きい。夫婦2人で老後をエンジョイするつもりだったのが、一転して深刻な状況に陥ってしまうこともある。
「ひきこもり」は、社会での人間関係、就職活動の難航など、自信喪失となることがきっかけで、誰にでも起こりうる。そして、いつそのような状態になってもおかしくはない。いったん就職しても安心はできない。それだけに、「23歳以降も子どもが独立しない可能性」も頭に入れておきたいものだ。
大きく狂う老後の計画
いったん、子どもが「ひきこもり」や「ニート」の状態になると、親の老後の家計状況は、大きく変わってしまう。経済的に余裕があるはずだったのが、一挙に老後破産を心配しなければならなくなる。下のグラフは、ある相談者の当初の想定と、子どもの「ひきこもり」が続くとの想定を比べたものだ。
家族構成:夫55歳(会社員)、妻55歳(専業主婦)、子ども25歳
現在の収入:夫の年収(手取り)550万円(60~64歳は半額)
60歳時の退職金:2000万円(うち750万円は住宅ローンの繰り上げ返済に充当)
年金額:夫190万円、妻90万円
生活費:夫婦2人の場合21万円(月額)、子どもを含めると28万円(月額)
夫婦2人だけであれば、年金で通常の生活費が賄え、貯蓄残高を維持できる。この分を趣味や旅行に充てることも可能である。それに対し、子どもが独立できない場合は、夫の退職金で増えた貯蓄を取り崩す状況が続き、いずれ貯蓄が底をついてしまうことになる。その違いの大きさがはっきりとわかるだろう。
「ひきこもり」が家計の状況を悪くする要因
このように、子どもが「ひきこもり」や「ニート」になった場合、残念ながら家計の状況が悪化する。その要因として、以下の三つのポイントを挙げることができる。
<1>事前に、子どもが「ひきこもり」や「ニート」になることを予想していない(人ごとと思い、予兆に目をそむける)
「ひきこもり」などが増えたとはいっても、まだ世の中の多数派というわけではない。学校を卒業すると、就職して親元から独立する方が一般的だ。それだけに、自分の子どもが「ひきこもり」や「ニート」になることは考えにくいし、考えたくもない。期待していた子どもが急に会社を辞めて、自室にこもりっきりと考えて事前に準備などする人はいない。それだけに、実際にそういう兆しが見えても予想外の状況に困惑し、現実から目をそむけてしまう親が少なくない。
<2>一時的ではなく、長期にわたり、家計の負担となる(ひきこもり、ニートの長期化傾向)
特に最近は、「ひきこもり」や「ニート」が長期化し、独立しないまま在宅する子どもの年齢も上昇してきている。40代、50代の「ひきこもり」も珍しくない。20代の間だけ面倒を見てやればよい、というわけにはいかなくなっている。そうなると、家計に与える影響も長引き、その分、老後のために準備していた貯蓄を取り崩してしまうことになる。家計の危機だ。ところが、親としてはどうしても子どもが立ち直り、自立できることを期待してしまう。そのために、「ひきこもり」の状況になっても、親自身はなかなか対策を立てようとしない傾向がある。
<3>社会保険などによる公的な救済策があまり整備されていない
病気や障害などで、経済的に困った時に頼りになるのが社会保険のはずだ。たとえば年金は、高齢になった、一家の働き手が死亡したなど収入が得られなくなった場合、国民みんなの支えで経済的な弱者を救済する制度だ。「精神障害」で障害者であれば、障害年金の対象にもなる。
だが、「ひきこもり」については助けてくれないことが多い。特に年金制度は「ひきこもり」には冷たい。収入が得られない状況だが、年金は支給されない。
収入が少なく、国民年金の保険料が払えない時には「免除制度」というものがある。しかし、本人だけでなく、世帯主の所得も審査の対象になっており、ほとんどが親と同居のケースなので、親が現役の場合はもちろん年金生活者であっても、保険料免除とならないことが多い。また、親の所得を除いて適用する「若年者納付猶予」という制度があり、今まで20代だけだったのが、今年(平成28年)の7月から40代にまで対象が拡大する。ただ、保険料の支払いは猶予されたとしても、子どもが年老いた時に受け取れる年金額が少なくなることには変わりはない。
もし子どもが「ひきこもり」になったら
子どもが自立してくれ、経済的に親を頼らないでいてくれればそれに越したことはない。しかし、もし子どもが経済的に自立できない状況になったら、親子で老後破産とならないように、早めに対策を考えておきたい。
対策のポイント |
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*子どもの「ひきこもり」が長期化することを前提に、将来の生活設計を考える。 *自分たち夫婦の老後の生活設計もきちんと考える。 *子どもができることから少しずつ手がけていく。 |
まず、「ひきこもりがずっと続く」ということから考えるようにしたい。これが思いのほか難しい。親としては、子どもの早期の立ち直りを期待する。「ひきこもり」がずっと続く状況は考えたくもない。しかし、長期化を想定することは立ち直りをあきらめることではない。最悪の事態に備えておくということであって、子どもの状況が改善すれば、計画は良い方向に修正されるだけだからだ。
また、子どもの立ち直りのために、すべての時間とお金を子どもにかけてしまう親も多い。子どもの将来は心配だが、自分たちの老後の生活もしっかりと考えたい。また、そのことが子どもの生活設計にもつながる。
そして、「きちんとした定職に就く」ことだけにこだわらないことだ。もちろん、そうなった方が良いのだが、短時間のアルバイトができるだけで、将来の経済状況は大きく改善する。年収50万円だけでは生活できないが、それでも20年続けば1000万円の収入になる。
これらの考え方を変えるだけで、多くの「ひきこもり」家庭のご両親は、希望が持てるようになる。前向きになって将来の計画を考えれば、子どもの生涯にわたって、家計の破産を防ぐことはできると考えている。
<今回のポイント> |
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1.ひきこもり、認めたくない、まさか我が子が 2.あきらめない、でも長期化も視野、家計見直し 3.まず自分、連れと老後、そして子と |
引用先 http://www.yomiuri.co.jp/matome/archive/20160217-OYT8T50046.html?from=yhd
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