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いい子があっけなく「ひきこもり」化する原因

2019.09.18

子どもから親への家庭内暴力が、年々増えている。今年は、家庭内暴力に悩まされていた元農水省事務次官が、「他人に危害を加えないために」という理由でわが子を殺害したという事件も起こった。

2018年版「犯罪白書」によると、少年による家庭内暴力事件の認知件数の総数は、2012年から毎年増加しており、2017年は2996件(前年比12.0%増)であったという。こうした子どもによる家庭内暴力の最大の原因は何か。精神科医の片田珠美氏は著書『子どもを攻撃せずにはいられない親』で、「子どもをいい学校、いい会社に入れなければいけない」と思い込む「勝ち組教育」にこそ最大の原因があると説く。
■「勝ち組教育」にこだわる価値観

 家庭内暴力のほとんどのケースで「親への怒り」が一因になっていることは間違いないだろう。親に怒りを抱かずに暴力を振るう子どもはほとんどいない。

 では、何が子どもの怒りをかき立てるのか。もちろん、子どもへの暴力や暴言、無視やネグレクトもその一因なのだが、それだけではない。「いい学校」「いい会社」に入ることこそ幸福につながるという価値観にとらわれ、勉強を最優先させる「勝ち組教育」がかなり大きな比重を占めているという印象を私は抱いている。
 不登校やひきこもりの若者たちの再出発を支援するNPO法人「ニュースタート事務局」代表の二神能基氏も、「『勝ち組』になるしか生きる道はない」という狭い価値観によって、子どもを追い込むような教育のあり方を問題にしており、「『勝ち組教育』がすべての根源」と主張している(『暴力は親に向かう――いま明かされる家庭内暴力の実態』)。

 もちろん、どんな親でも「子どもを勉強のできる子にしたい」「子どもをいい学校、いい会社に入れたい」などと願う。この手の願望の根底には、子どもの幸福を願う気持ちだけでなく、「子どもを『勝ち組』にして自慢したい」「子どもが『負け組』になったら恥ずかしい」という気持ちも往々にして潜んでいるが、ほとんどの親は自覚していない。

こういう不純な気持ちも入り交じっているので、「勝ち組教育」にこだわる親は、子どものありのままの姿をなかなか受け入れられない。なかには、できの悪い子どもは自分の子とは思いたくない親もいる。

 こういう親の気持ちは、口に出さなくても、以心伝心で子どもに伝わるものだ。もちろん、「なんでお前はできないんだ」と子どもに言う親もいるだろう。いずれにせよ、「勝ち組教育」にこだわる親によって子どもも洗脳され、「『勝ち組』になれなければ、だめなんだ」と思い込むようになる。
■「いい学校」に入ったのに不登校に

 それで一生懸命勉強して、うまくいっている間は問題が表面化することはない。だが、一握りの極めて優秀な人を除けば、ずっと「勝ち組」でいられるわけではない。いつか、どこかでつまずくときがやってくる。そういうとき、親の「勝ち組教育」によって洗脳された人ほど、なかなか立ち上がれない。

 頑張って「いい学校」に入ったのに、ささいなきっかけで不登校になって長期化することもあれば、せっかく就職した会社を辞めた後、「いい会社」にこだわりすぎて再就職先が見つからないこともある。
 これは、「『勝ち組』になるしか生きる道はない」という狭い価値観を親から刷り込まれてきたせいで、つまずいたときに、別の道を思い浮かべることも、探すこともできないからだろう。

 仮に別の道を選んだとしても、それまでの自分を支えていた「勉強ができる」というプライドが災いして、「自分は『負け組』だ」というコンプレックスにつねにさいなまれる。それが、そこからはい上がろうとする気力をそぐこともある。

 そういう事例を精神科医として数多く診察してきた。だから、「『勝ち組』になるしか生きる道はない」という価値観を子どもに押しつけ、狭い一本道に追い込んできた親は、自らの「勝ち組教育」のせいで立ち直れなくなった子どもが家庭という密室で暴力を振るい、暴君と化し、親を奴隷のように扱うようになったら、それを子どもからの復讐と受け止めるべきだと思う。

そして、自分が正しいと信じてきた価値観に疑問符を打たない限り、子どもの暴君化を止めることはできないだろう。

 子どもが家庭内で暴君化すると、「家庭内ストーカー」になることもある。「家庭内ストーカー」は、精神障害者移送サービスの「トキワ精神保健事務所」を創業した押川剛氏によれば、「年齢は30代から40代が主で、ひきこもりや無就労の状態が長く続いている。暴言や束縛で親を苦しめる一方で、精神科への通院歴があることも多く、家族は本人をどのように導いたらいいのか、わからないまま手をこまぬいている」(『「子供を殺してください」という親たち』)というものだ。
 もう1つの特徴として押川氏は、「本人に立派な学歴や経歴がついていること」を挙げている。「中学や高校からの不登校というよりは、高校までは進学校に進みながら、大学受験で失敗した例や、大学卒業後、それなりの企業に就職したが短期間で離職したような例が多い。強烈な挫折感を味わいながらも、『勉強ができる』という自負がある」(同書)。

■医者からも相談が多い「子どものひきこもり」

 こうしたケースは、押川氏の事務所へもたらされる相談事例のなかで近年爆発的に増えているそうだが、私自身も同様のケースについて相談を受けることが少なくない。だいたい、知り合いの医者からの相談で、「子どもがひきこもっていて、家庭内暴力もひどい。どうしたらいいか」というものだ。押川氏の印象とは少々異なり、中学や高校で不登校になったケースが多いという印象を私は抱いている。
 例えば、大きくなったら医者になるのが当然という雰囲気の家庭で育ち、小学校低学年の頃から中学受験のための塾に通って、私立の中高一貫の進学校に入学したものの、できる子ばかりが集まっている進学校では成績が下位に低迷し、そこで不登校になったケースがある。あるいは、名門大学の医学部への入学を目指して何年も浪人したが、どうしても合格できず、ひきこもるようになったケースもある。

 医者以外の道を選んでも、それまでの自分を支えていた「勉強ができる」という自負が災いするのか、なかなかうまくいかない。もう一度大学受験に挑戦して医学部以外の学部に入っても、「あんなレベルの低いやつらと一緒に勉強するのは嫌だ」と言って中退したり、やっと仕事が見つかっても、「思っていた仕事と違う」と言ってすぐに辞めたりする。

当然、無就労の状態が長く続くわけで、結果的にひきこもりになる。そして、家庭内で「こんなふうになったのは、お前のせいだ」と何時間でも親を責め続けることもあれば、親を蹴ったり突き飛ばしたりすることもある。しかも、就寝中の親を起こして暴言を吐いたり、暴力を振るったりすることもあるので、親は慢性的な睡眠不足に陥り、心身ともに疲れ切る。

 このような親子関係は、「親への執拗な攻撃、抑圧、束縛、依存、そして一線を超えたときには殺傷事件に至る」という点で、一般的な異性関係のストーカーと構造がよく似ているため、押川氏は「家庭内ストーカー」と命名したという。
 暴君と化した子どもを見ると、なぜ親をここまで攻撃するのかと首を傾げずにはいられない。だが、子どもの訴えをじっくり聞くと、親がやってきたことに対するしっぺ返しとしか思えない。

■過干渉でも心の触れ合いがなかった

 例えば、幼い頃から勉強を強要され、友達と遊ぶこともできなかったとか、成績が悪いと口をきいてもらえなかったとか、少しでも口答えすると、「親に向かってどういう口のきき方をするんだ!」と怒鳴られたという話を聞くことが多い。
 また、子どもが挫折や失敗に直面したときには、親は慰めるどころか逆に「どうしてできないんだ」「どうしてそんなにだめなんだ」などと叱責したという話もしばしば聞く。

 こういう家庭環境では、つねに緊張感が漂っていただろうし、子どもが安心感を得るのも難しかっただろう。したがって、子どもが「家庭内ストーカー」になった背景にはほとんどの場合、無自覚のまま子どもを攻撃したり、支配したりした親の存在があると私は考えている。
 押川氏も、「家庭内ストーカーとして、『暴君』と成り果てている子供たちも、その生育過程においては、親からの攻撃や抑圧、束縛などを受けてきている。過干渉と言えるほどの育て方をされる一方で、そこに心の触れ合いはなく、強い孤独を感じながら生きてきたのだ」(同書)と述べている。

 まったく同感だ。つまり、「親からの攻撃や抑圧、束縛など」への復讐として子どもが「家庭内ストーカー」になったという見方もできるわけで、親の自業自得と言えなくもない。

引用先:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190918-00302368-toyo-bus_all

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