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「引きこもる女性」が家庭内暴力から逃げられない事情

2016.06.09

長年、親元で過ごし、セーフティーネットの谷間で孤立していた女性が、家を出て自立したいと思ったとき、一体どこを目指せばいいのか。現実には、寝泊まりなどできて一時避難できるような「居場所」がほとんど存在せず、その決意はもろくも崩れ去ってしまうケースが少なくない。

 5月に拙著『ひきこもる女性たち』を出版した影響もあるのだろう。最近、似たような状況に置かれた女性たちから、ますます多くのメールが届くようになった。それも、地方で「家族以外との関わりがない」状況の人が多く、「私と同じ思いの人がいるんだと思い、 励みになりました」といった反応も少なくなかった。

 一方で、気がかりなのは、優先的に救済の必要性が感じられるのは、家族からの否定的な目線や言動などによって、自宅が「居場所」になっていない女性たちだ。

 もちろん、女性が安心して参加できるような当事者「女子会」イベントなどは、最近、少しずつだが、開催されるようになった。

 両親や兄弟姉妹などの家族との関係が悪くて煮詰まったとき、一般的に男性の場合、思い切って「家出」同然で実家を飛び出しても、公園でのホームレスや寮での住み込み生活などを契機に、比較的自立できる道はある。しかし、女性の場合、泊まり込み前提で考えると、ほとんど自立のための選択肢がない。

 精神疾患や発達障害などの診断を受けることで、グループホームや作業所的な施設などで共同生活する方法もあるが、抵抗を覚える場合もある。また、引きこもり関係の支援団体などが運営する施設で集団生活するのも、料金が高額になるなどの理由だけでなく、ゴールを一方的に押し付けられるようなメニューに合わなければ、ミスマッチを感じてしまうだろう。

 学校や職場で傷つけられたことなどをきっかけに、心理的に引きこもってきた女性にとって、実家を飛び出して、1人暮らしを始めたと思っても、社会の側にそうした想定がされていないのか、第1歩を踏み出すまでの選択肢が限られている。つまり、セーフティーネットがほとんどない状態なのだ。

家庭内での暴力から逃げたい
だけど“逃げる場所”がない

 例えば、会社を辞めざるを得なくなって以降、10年ほど引きこもってきた40歳代のAさんは、実家の家族から暴力を受け続け、ずっと我慢を強いられてきた。

 何度も家を出ようと思って、「男女共同参画」をうたう役所の窓口や「女性支援」をうたう公的な団体の電話相談などに訴えたものの、「あなたは独身だから、受け付けられない」などの理由で、シェルターの利用どころか相談自体も断わられ、自分は底辺を這いずり回っているのだと感じた。

 孤独の中で、食べるものも寝る場所もなく、どうしようかと不安に襲われたとき、自分の身を使って風俗という生き方も頭をかすめた。

「実際、“女なんだから、風俗できるだろう”と、相談相手に勧められたこともあります。でも、できる人とできない人がいると思うし、私みたいに潔癖な人間にはできない。風俗で生きるという才能もないし、リスクも考えてしまうんです」

 地方に住む30歳代のBさんは、同居する家族との間でストレスがお互いにあると、家庭内暴力に発展することもある。

 言葉のやりとりが平行線になって鬱屈すると、Bさんが家族に暴力を振るうこともあるし、Bさんが振るわれることもある。そんなときには、家族と距離を置いて寝るしかなくなるため、一時避難できるような“居場所”を探しているものの、やはり、なかなか見つからないという。

 Bさんも、社会でのストレスから「強迫神経症」的な症状に悩まされるようになった「心理的引きこもり」のタイプだ。

 Bさんが1人暮らしを始めるうえで障壁になるのは、体調に波があって、悪いときは1人になると買い物にも出られなくなること。結果、看護や福祉に頼らざるを得なくなる。もちろん、家族と離れてしまうと、月に家賃も含めて5万円は必要になり、経済的な不安もある。

セーフティーネットの谷間にいる
女性を救う“居場所”とは?

 都内に「発達障害」当事者による『Necco cafe』を開店し、グループホームやシェアハウスも運営する金子磨矢子さんは、こう説明する。

「現状では支援を受けられる人は医療モデルだけです。制度の谷間の人のための政策も進めてくれてはいますが、まだ数年かかります。 民間では、“池上シェアハウス”(新宿区西早稲田)が先駆的な取り組みをしています。まだ、不十分ですが、これで精いっぱいという感じです。でも、男性向けなので、女性用も欲しいですね。 今、大型のシェアハウスやコレクティブハウスというのが少しずつできてきていますが、どこもそれなりにお金がかかります。発達障害の場合、医療に関わっていない人でも、徐々に支援が受けられるようになってきました。問題は、医療も薬も必要なく引きこもっている人が、支援を受けられないことです」

 最近、インターネットカフェも増えてきて、女性専用ブースもできた。ある程度のお金があれば、シャワーがあって、横になることもできる。都心でも、料金は3000円前後で半日過ごせるという。

 そうした「ネットカフェ難民」や路上生活者らに住まいを提供しようとしう「ハウジングファースト」の活動も始まった。

 一方で、自治体によっては、世田谷区などのように、地域に増える空き家を積極的に活用しようと取り組み始めた所もある。しかし、緊急的に“居場所”を必要としている当事者たちは、他人が助けてくれるのを待つだけではなく、これからは自ら思い切って声を上げていくことも大事だ。

 女性たちが家族との関係性から脱却できて、一時的に宿泊できるような安心できる“居場所”をどのようにしてつくり出せるのか。セーフティーネットの谷間にいるAさんやBさんのような当事者たちは、空き家などの資源も上手く活用しつつアイデアを募りながら、一緒に考えていける場やステークホルダーを探し求めている。

記事詳細 ダイヤモンドオンライン
http://diamond.jp/articles/-/92729

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