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引きこもりを過剰に警戒する人の大いなる誤解

2019.06.19

■家庭が唯一、安心できる居場所だから引きこもっている

 川崎市の児童ら殺傷や練馬区の元事務次官の一連の事件が、引きこもり本人や家族の間に与えた動揺は、いまだに収まりそうもない。

 NPO「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の本部には、全国の家族や当事者たちから「引きこもりというだけで事件を起こす」と見られているようで「怖い」と怯える声や相談が、事件前より数十倍も届いている。

 メディアでは、「死ぬならひとりで死ね」「不良品」などといった無神経な発言が流布され、そのたびに追い詰められた家族間では新たな悲劇が誘発されかねない危機的状況が続き、本人は「引きこもり行為への偏見や差別が助長される」「外に出られない」などと、ますます委縮する状況になっている。身近に行ける居場所などの情報を求める相談も各地から多く寄せられた。
 「引きこもり状態」に陥りやすい人は、心優しくてまじめなタイプが多く、今の状態に至るまでの間には、命を守るために回避せざるをえなかった長いヒストリーが人それぞれある。典型的なのは、学校や職場で痛い目に遭ったり傷つけられたり、その積み重ねによるトラウマを持っていることだ。

 衝突や傷つけ合うことが嫌で、人との交流を避けた場所でしか生きられない。そして社会から撤退せざるをえなくなり、家庭が唯一、安心できる居場所になっているから、引きこもっているという人も少なくない。
 一般的に、最後の拠り所である居場所に待避している当事者が、理由もなく外に飛び出して行って、無関係な人に危害を加えることは考えにくく、事件とは程遠い存在なのだ。

 しかし、不安をあおられた家族からは「どうしたらいいのか?」といった相談の電話が、家族会にひっきりなしにかかってくる。しかも、相談してくるのは、家族会の会員ではない。これまで誰にも相談できずに孤立していて、突き動かされるように初めて受話器を取ったような人がほとんどではないかと感じられる。

一方で、家族会の会員たちは、事件の報道を見ても、比較的落ち着いて受け止められている様子だ。これは、同じような悩みを抱える家族同士、横でつながって情報を共有できているかどうかの違いなのではないか。

■すべての人が家庭内暴力を起こすわけではない

 引きこもらざるをえなかった人たちの背景や状況は、実に多様で1人ひとり違っている。ただ、心優しくてまじめである傾向は、前述したようにほぼ共通している。

 親の期待がわかっているがゆえに、その期待に応えられない自分が情けないし、親にも申し訳ないと思っている。そんな後ろめたさから、ますます身動きが取れなくなっているところに、今回の事件が起きた。
 引きこもりがちな長男を殺害した元事務次官の事件では、両親に対する家庭内暴力が背景にあったという。事件以降、一部のメディアからは「どうして引きこもりの人は暴力を振るうのか?」と暴力を振るうことが前提の質問を受け、「引きこもる心の特性の人は本来、暴力や争いとは程遠いタイプ」と説明しても、ストーリーありきの「引きこもり」と「暴力」のメカニズムを執拗に聞きたがり、辟易した。

 しかし、引きこもり状態にある人すべてが、家庭内暴力を起こすわけではない。
 その割合については、2017年度、KHJ家族会の副代表でもある境泉洋宮崎大学教育学部准教授が調査した貴重なデータが報告されている。それによると、現在、家庭内暴力があると答えた家族は544人のうち18人で、3.3%。過去に受けたことがある家族も含めると、123人で22.6%だった。

 では、なぜ親子で会話やコミュニケーションができなくなるのか。

 親としては「いつまでこんなことしてるんだ」と、どうしても子の引きこもる行為を否定しがちで、働かないことを責めたがる。でも、子の側からすれば、それは自分自身が痛いほどわかっていることであり、最も言われたくない言葉でもある。「働け」などの言葉を言わずに、心の中に押しとどめて、そっと応援していることが伝わるような関係をつくることが大事だ。

子が親に望んでいることとは、温かく自分を肯定してくれることだと思う。引きこもるといっても、1人ひとり状況は違うものの、「周りが自分の話を心から聞いてくれない」とメールや対話などで筆者に訴える当事者たちは、とても多い。

 富山県射水市で、月に2回の引きこもり家族会に加え、少人数の会も随時開いているKHJ家族会富山県支部のNPO「はぁとぴあ21」の高和洋子理事長は、こう話す。

 「子が自分の行為を反対されたり、否定されたり、追い詰められたり、戻そう、治そう、正そうとされれば、人間としての存在価値を感じられなくなる。引きこもる行為は、誰もが起こりうる選択肢であることを理解し、“生きててよかった”と思えるよう、本人の主体性を大切に寄り添っていってほしい」
 子どもの側の気持ちから考えると、親に話をしても心から聞いてくれない。話をしても、親の価値観が表に出た瞬間、これまで痛い目に遭ってきた経験から言葉はなくなる。

 最初に子が物や壁にあたったり壊したりするのも、親がわかってくれないことへの代償行為であろう。一般的に、家庭内暴力に行きつく背景には、それでも親がわかってくれず、さらに責め立てたり、追い詰めたりすることなどによる、それぞれの家庭内での長いストーリーがある。
 それまでの間に家族会などに相談できればいいのだが、もし暴力に遭った場合には、警察に通報したり、公的機関に相談してシェルターなどに避難したりするなど、世間体を気にして家族だけで抱え込まないようにしなければいけない。

■孤立しないように支援していく体制づくりを

 高齢化していく親子が、これからを生きていくためには、家族が公的な相談機関につながって、本人が家から出られなくても生活支援を受けられるような受け皿が大事だ。
 しかし、せっかく家族や本人が勇気を出して相談しても、「親の育て方が悪い」とか「何でここまで放置していたんですか?」などと責められて、支援をあきらめてしまうなど、相談を受ける側の体制の問題もある。支援対象年齢の上限や障害認定の有無に関係なく相談に乗り、孤立しないように支援していかなければいけない。

 また、窓口では資格を持った人が対応すればいいという話ではなく、やはり「引きこもる」人の心の特性の傾向や気持ちが理解できる人材を現場に配置、増員しなければいけないし、そのようなスタッフを育成して、研修も拡充していく必要がある。

引用先:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190619-00287373-toyo-soci

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