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“60万円払って無給労働”が国の就労支援? ブラックすぎるサポステの信じられない実態

2014.08.21

働くことに悩みを抱えた当事者を新たに傷つける“ブラックサポステ”の実態について、『AERA』の今週号に執筆した。

サポステとは、厚生労働省の支援事業である「地域若者サポートステーション」(愛称・サポステ)のことだ。

「事業を受託している支援者のやり方に合わないと、支援してもらえない」

そう訴えて筆者の元にメールをくれたのは、20代女性のAさん。

「社会に出て働きたいのに、私の意向はまったく聞いてもらえず、上から目線で詰問される。まるで就職という道を外れると、個人に問題があるかのように『君たちのために支援してあげてるんだよ』という感じが、何とも気持ち悪いんです」

話を聞いてみると、サポステ側の支援と当事者の思いとのミスマッチぶりが浮かび上がった。

元々、サポステ事業についてのミスマッチぶりは、他の当事者たちからも聞いていた。

筆者は、サポステ的な事業について、引きこもる当事者が最初に外に出ていく先の「居場所的な機能」としての役割があると思っている。

しかし、とくにAさんが体験したというサポステの実態には、違和感を覚えた。

「対人恐怖症でひきこもり傾向」
サポステで“強要”された人間性

Aさんは、大学卒業後に入社した会社でセクハラやパワハラを受け、恐怖で緊張して言葉を発することができなくなり、退職。ハローワークでも、窓口の相談員から「早く決めなきゃ、空白期間が付いちゃうよ」などと、まるで自分が悪いかのように責められた。

そんなとき、「働くって、何だろう?」と思いながらネットで見つけたのが、サポステ事業だった。

厚労省のホームページを見ると、サポステについて、こう紹介されている。

<働くことに悩みを抱えている15~39歳までの若者を対象に、キャリア・コンサルタントなどによる専門的な相談、コミュニケーション訓練などによるステップアップ、協力企業への職場体験など、就労に向けた支援を行っている>

この事業は、2006年度からスタート。運営は、厚労省が認定した若者支援の実績やノウハウのあるNPO法人や株式会社に委託され、現在、全国に160ヵ所ある。

ホームページの対象者を見て、自分のことだと思ったAさんは、国の支援事業であることからも信用して、昨年7月、近隣のサポステへ相談に行った。

しかし、そのサポステでは、あらかじめ用意されたメニューを次々に“強要”してくる一方で、Aさんの話は聞いてもらえない。

60万円払って無給でホールスタッフに!?
“ブラック以下”の実態に驚愕

そして、勧められたのは、「シルバーセンターが行っているゴミ拾いの手伝い」や「介護施設」、「被災地の飲食店」などでのボランティアだった。

仕事をしたいからと思って断ると、「なんで断るんですか?」と叱られたという。

空白期間が延びるにつれて、Aさんと家族との関係も悪化していく。当事者たちは、親からのプレッシャーを受け、自分の意思とは裏腹に追い詰められる。

そのうち、面談で勧められたのが、半年ほどの団体の有料プログラムだった。

「50万~60万円かかると言われました。それも、前半はビジネスマナーやコミュニケーションマナー、後半は団体が運営している飲食店でホールスタッフとして働く。給料のことを聞くと、無給だと言われ『働かせて頂いてるんだから、受け取ろうとするほうが間違っている』と説教されました。なぜ当事者が、働く場をお金で買わなければいけないのでしょうか」

Aさんが説明を受けたのは、“体験”の名の下、飲食店という職場で無給どころか有料で働かされる“ブラック以下”の実態だった。

Aさんが施設長に疑問をぶつけると「基本がなっていないのに理想が高いだけではうまくいかないよ」「あなたがやりたいんなら、どうぞハローワークへ行って、勝手に仕事探してください」と、啖呵を切られたという。

以来、Aさんはサポステをやめた。

労基署担当者がサポステの存在も知らない?
Aさんの通ったサポステ、労基署の言い訳

後日、労基署に確認すると、「信じられない話だ」と驚きを隠さなかった。

そのうえで「時間拘束や指揮命令などの労働者性があれば、一般的には労働と考えられる」と指摘。労基法違反にあたる可能性も示唆されたが、驚いたことに労基署の担当者は、同じ省内の事業であるサポステのことをまったく知らなかった。

労基署から情報提供を求められたため、Aさんと相談していると、その担当者から再び電話があって、こう言われた。

「あそこ(サポステ)は特殊な人が行くところ。(利用者に対しては)ぜひハローワークで相談されるよう、お勧めします」

筆者はAさんと一緒に、このサポステを訪ねた。

対応した施設長は「厚労省への取材申請が必要だから」との理由で、筆者ら記者への説明を拒んだ。筆者がその場で厚労省に電話で確認すると、担当者がこう説明した。

「間違った情報を出さないでほしいという趣旨でお触れを出した。取材の制限はしていない。問題ないです」

とりあえず施設長は、Aさんの抗議に個別に対応。その後、施設長は筆者らに向かって、こう話した。

「Aさんに嫌な思いをさせてしまったことについては、力が及ばなかったと申し訳なく思っています。(団体の)自主事業で専門の人たちも入るので、費用はどうしてもかかってしまう。引きこもりの人たちの特性は知っているつもりだが、利用者に合っていたのかどうかとか、立場的には言われるままになってしまうので、本人の気持ちを汲んであげないといけない。そこにつなげるための入り口がサポステなのではないか。そう思われるのは嫌だと私たちも思っているのですけど。つい先走ってサポステ利用者の勧誘と受け取られる接し方をしたのかもしれない」

そして、Aさんの求めに応じて、個人情報も一部を返却。残りの情報を彼女の目の前でシュレッダーにかけた。

「切り捨て」「たらい回し」の声も
先入観ではねつける国の支援事業に疑問

Aさん以外にも、別のサポステの利用者から「通院歴や薬の有無などの個人情報を聞き出されたあげく、あなたは病気だから、ここではないと追い払われた」「対象にしているのは、社会復帰の可能性のある健全なひきこもり層だと言われた」など、就労につながりやすい人を「選別している」との情報提供が後を絶たない。救済を必要とする深刻な層や40歳以上の相談者に対し、「切り捨て」や「たらい回し」が行われているとの批判もある。

厚労省によると、昨年度のサポステの「新規登録者数」は4万3229人。「のべ来所者数」は63万9083人だった。

年度内の「進路決定者数」は1万9702人。そのうち、「就職」は1万6416人としている。

ただ、その内訳を聞くと、バイトも含めた「非正規」が1万2382人で、約75%を占める。「就職」と表記しているが、実態は「就労」だ。

追跡調査の有無を聞くと、今年度から各サポステで始めたという。

昨秋の行政事業レビューで「有効とは言い難い」と一旦、ゼロ査定の評価を受けた影響もあるのだろう。しかし、実際に利用している当事者にとって大事な評価軸は、「就職」数ではなく、「のべ来所者数」のほうではないのか。

では、サポステ事業者が運営している飲食店の無償就労を斡旋し、利用者からお金を徴収して働かせている行為について、厚労省も容認されているのか。倫理的にどうなのかと尋ねると、こう返事が来た。

「ご指摘の事案については引き続き事実確認を行うこととしていますが、いずれにしても各サポステにおいて、職場体験がその趣旨・目的に沿って適正に行われるよう今後も指導を行ってまいります」

また、サポステでの利用者の選別等については、

「ご指摘の“就労の遠そうな『ひきこもり層』は引き受けるな”との指示を出した事実はありません」

としたうえで、行政事業レビューの指摘を受け、今年度より、自治体が「単独で措置する事業によって、国が措置する事項と同じ支援が受けられる者」「生活困窮者自立促進支援モデル事業によって、サポステと重複する支援が受けられる者」に該当する場合については、支援の対象者としないことを要領に明記。他の支援機関でサポステと同様の支援が受けられる者については、当該支援機関へ誘導するよう指示しているという。

さらに、前年度から今年度にかけて、9ヵ所のサポステが入れ替わったことについて、更新の基準を尋ねると、こう答えた。

「サポステは毎年公募しており、提出された企画書の内容や前年度の事業実績などを企画選定委員会において総合的に審査し、選定しています。また、行政事業レビューでの指摘を踏まえ、サポステ事業との類似事業と重複があるか否かについても企画書をもって審査したところです」

厚労省は、サポステの対象者を「就労の意思はあるものの様々な課題を抱えている者」と規定する。ただ、意欲の有無を誰がどのように判断するのかの根拠もはっきりしない。

救いの手を求める人を先入観ではねつける国の支援事業とは何なのか。

傷ついた当事者が営利事業に誘導される実態を放置していたり、「進路決定者」数を指標に求めたりする余り、本人の気持ちやペースが置き去りにされているのだとしたら、新たなサポステ事業を設計から構築し直すしかない。

 

引用先 ダイヤモンドオンライン

http://diamond.jp/articles/-/57935

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