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ひきこもり女性46歳の事情「結婚したら母親の世話ができないと思った」
昨今、40代以上のひきこもりが若年層よりも多いことが明らかになり、衝撃が走っている。それにより、80代の親が50代の子供を養う「8050問題」が勃発。しかも中年から突然ひきこもりになってしまう人が半数を超え、高年齢化が進んでいる。 ⇒【図解】ひきこもり中年の主な要因 また、自己責任論によりSOSを出せない、困ったと言えない、言ってはいけない空気が社会に蔓延している。NPO法人KHJ全国ひきこもり家族連合会の深谷守貞氏は、一昨年に起きた元農水次官によるひきこもりの息子殺害事件を例に挙げ、こう指摘する。
親亡き後の不安に苛まれる。孤独死に至ることも
「親が育て方の責任を取ろうと、社会の仕組みを構築する側にいる方でさえ社会制度を十分に活用しようとせず、自分でなんとかしようとして殺害に至るまで追い込まれてしまった。 ひきこもりのことを甘ったれ、子ども部屋おじさん、親のすねかじりなどと排斥し、その親には育て方が悪い、自分の子どもだから何とかしろと言う。そんな心ない声が溢れる中では、親も助けを求められないのです」(深谷氏) また、こうした社会との齟齬は、発達障害や、その二次障害として発症した精神障害が関係しているケースもあると、多くの専門家も指摘している。
アルコール依存症で精神科病院送りになり、発達障害と診断
佐藤宏さん(仮名・49歳)は幼少時から極度の肥満とアトピー性皮膚炎が原因でいじめられ、友人はひとりもいなかった。2浪してなんとか大学に入学するも馴染めず中退。以来数十年にわたるひきこもり生活を続け、一時はアルコール依存症で精神科病院送りになり、そこで発達障害と診断された。 現在は83歳の父親とふたり暮らしで、父親の貯金と年金で漫画やアニメのフィギュアを購入したりしている。本人は暴れることも多く会話が不可能であるため、弟に話を聞くと「兄に同情の余地はあるが、ストレスのはけ口にされ続け、兄のせいで自分もいじめられていたのでこの世で最も嫌いな人間になってしまったことが辛い。父親の死後に自分が面倒を見なければならないと思うと不安」と言う。 「ひきこもりが、親の死後に生き残っていく方法」を模索するために結成されたファイナンシャルプランナー集団「働けない子どものお金を考える会」の一員で、社会保険労務士の浜田裕也氏はこうした負の循環について解説する。 「親がひきこもりの子の言いなりになり、子がやりたい放題になってしまう事例が稀にあります。老親の通帳を子が奪い、必要最低限のお金を親に渡し、あとは自分が好き勝手に使う。そして親に暴力を振るったり暴言を吐く。それによって親が追い詰められ、いろいろなところに相談をしても解決せず、放置してしまうようになる」
主婦の場合は見逃されやすい。女性のひきこもり事情
内閣府の調査で明らかになった61.3万人のうち4分の3が男性であったが、女性のひきこもりはどのような状況にあるのか。ひきこもる原因に男女差はないが、前出の深谷氏によると、やはり女性ならではのケースも散見されるという。 「主婦でも実質的にひきこもりに該当する人は多い。外出せず、家事をする以外自室から出ませんが、家事手伝いとされ見過ごされているのです」
介護からひきこもりに
また根岸恭子さん(仮名・46歳)は精神疾患の母親を学生時代からサポートしてきた、いわば「ヤングケアラー」からひきこもりになった「介護型」だ。 「母子家庭で、30代の頃にようやく母の体調が落ち着いてきたので遠方に就職しましたが、母がまた調子を崩したので退職して帰郷しました。男性は結婚して奥さんに親の世話を手伝ってもらう人が多いですが、私はそういう発想になりませんでした」 「結婚したら母親の世話ができないと思った」と言う根岸さん、男女の意識の差も障害になりうるよう。 地元では再就職が難しく、現在は親子で生活保護を受けているという根岸さん。支援には、ジェンダーギャップも考慮されるべきかもしれない。 【NPO法人KHJ全国ひきこもり家族連合会・深谷守貞氏】 社会福祉士、ソーシャルワーカー。KHJにてひきこもり当事者と家族の支援を行う。同団体の分会「兄弟姉妹の会」を担当 【社会保険労務士・浜田裕也氏】 ファイナンシャルプランナー、「働けない子どものお金を考える会」メンバー。内閣府ひきこもり支援者読本の一部共同執筆に参画
引用先:ひきこもり女性46歳の事情「結婚したら母親の世話ができないと思った」(週刊SPA!) – Yahoo!ニュース