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朝起き「つらい」、体重減…コロナで異変、頑張る子ほど
【埼玉】さいたま市のカナさん(45)が小学6年生の三男、サトシさんの異変に気づいたのは昨年10月だ。
「歯が揺れる」と急に言い出したかと思うと「気持ちが悪い」と訴えてくるようになった。朝起きると「つらい」と口にした。 かかりつけの医者に診てもらうと、精神科医を紹介された。だが、予約を取るのに半年待ち。「食べ物のにおいがきつい」と食事を十分に取れなくなり、エネルギー補給のゼリー飲料でしのいだ。体力は落ち、風呂にも入れなくなった。体重はひと月で3キロ減った。 新型コロナウイルスの感染の広がりで、昨春は臨時休校が続いた。いつもと違う日常。家族でのキャンプが大好きだったサトシさんが楽しみにしていた林間学校も中止になった。 「無理をさせない方がいい」。小児科の臨床心理士から言われ、12月から学校に通っていない。「怠けているだけじゃないの?」と疑っていた高校1年生の長男と中学1年生の次男も、いまは気遣ってくれる。 処方された睡眠薬でぐっすり眠れるようになり、最近は笑顔をよく見せる。浮き沈みはあるが、体調のいい日は2人で散歩する。カナさんは「心と体のバランスがどこかで崩れてしまったんだと思う」と話す。 さいたま市の小6のミサキさんも最近までつらい日が続いた。おなかがしょっちゅう痛くなり、学校を休みがちになった。原因は自分でもわからない。 コロナのニュースが続くと、母親のヨシコさん(35)から「怖いから外に出て遊んではだめ」とたしなめられた。習い事のピアノの発表会はなくなり、始めたばかりの新体操の教室は一度も開かれなかった。 専門医に診てもらい、治療を続けると症状は徐々に和らいだ。「娘に『おなかが痛い』と言われて『大丈夫だよ』『寝なさい』と、きつくあたってしまった日もあった。このまま改善していって欲しい」とヨシコさんは願う。「おなかが痛くなると勉強をする気持ちも起きなかったけど、いまは学校で読書をするのが楽しみ」。ミサキさんは、そう話した。=名前は仮名(岡本進) ◇ コロナ禍でふだん通りの学校生活を送れず、体や心の異変を訴えて医療機関を受診する子どもたちは増えているという。感染症に詳しい小児科医で、埼玉県小児保健協会会長の峯真人(みねまひと)さん(68)に現状を聞いた。 ――子どもの受診が目立つようになったのは、いつからですか。 「去年の学校再開後の6月後半です。『子どもが夜、眠れない』『おなかが痛いと、しょっちゅう言う』といった親からの相談が相次ぎました。夏休みに入り落ち着きましたが、休み明けを控えた8月後半にまた増えた。当院(さいたま市岩槻区)では不安障害と診断した子が通常時の2倍、起立性調節障害は1・5倍に増え、50人ほどが通院中です。ほぼ毎日、1、2件の相談が寄せられます」 ――起立性調節障害とは。 「子どもから大人へ心や体が変わっていくときに起きやすい病気です。ストレスなどが原因で体の成長に自律神経の発達が追いつかなくなる。小学校の高学年なのに、夜に母親の布団に潜り込み、手を触ってようやく落ち着いて眠れるという子もいました」 ――深刻ですね。 「『おなかが痛い』と訴え、専門科で内視鏡検査までして『心配ない』と言われた子がいました。でも、本人からすれば気のせいではなく、理解されにくいところに深刻さがあります。『こんなにつらいのなら生きているのが嫌だ』という子までいます。まじめな頑張り屋さんこそ、症状は出やすい」 ――親はどう対応すべきですか。 「病状を悪化させないために早めの処置が重要です。お子さんの様子を細やかに観察してください。おかしいと思ったら、小児科医や地域の相談センターに相談してほしい。診断がはっきりすることで学校の先生の理解も得られます」(聞き手・岡本進)