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「死にたい、1人にしてほしい」と言われた時、どう接したらいいの?
AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、夫から「死にたい1人にしてほしい」と言われたというご相談です。
【今回のお悩み】
主人が抑うつ状態で治療中です。今日病院にいったら、休診の時間で受診できませんでした。処方された薬が数日前になくなってしまい、今は抗不安薬と漢方だけ飲んでいます。このほかに落ち込んだ時といらいら時の頓服薬はあります。それが原因かはわかりませんが、死にたくなった、1人にしてほしいと言われました。こんなとき、本当に1人にしていいのでしょうか。どう対応すればいいかご教示ください。(30代・女性)
【医師の回答】
身近な人の自殺を防ぐ「TALK」の原則と「CALM」
家族など大切な人に「死にたくなった」といわれてしまったら誰でも不安になり、どうしていいかわからなくなってしますよね。
自殺を防ぐための対処として「TALKの原則」を覚えておくとよいと思います。
(1)Tell:言葉に出して心配していることを伝える。
(2)Ask:「死にたい」という気持ちについて、率直に尋ねる。
(3)Listen:気持ちを傾聴する。
(4)Keep safe:安全を確保する。
(参考/文部科学省資料)
さらにもう一つのポイントは、あなた自身が落ち着くこと=CALMです。
TALKとCALMと覚えてしまいましょう。
まずは慌てず、深呼吸をして落ち着いて(CALM)から、TALKの原則に乗って対応していきます。
【(1)Tell 】
気持ちが落ち着いたら次にすべきことは、とにかくそばにいることです。そばにいるだけで自分も相手も落ち着いてきます(CALM)
「1人にしてほしい」と言われてしまっていても「何もしないからそばにいたい」と明確に伝えてください。
自殺においては、死にたくなった瞬間を乗り越えれば大部分を防ぐことができると言われています。(アメリカ「ゴールデン・ゲート・ブリッジ」※の事例、研究が有名です)。近くに誰かがいる限り、ほとんどの人は危険な行動には出ません。
※サンフランシスコの大きな吊り橋「ゴールデン・ゲート・ブリッジ」は、飛び降り自殺が後を絶たない。しかし、1978年にここでの自殺を制止された人515人を追跡調査したところ、94%が存命または自然死しており、自殺者(または自殺の可能性がある事故)は6%とわずかだった。なお、ゴールデン・ゲート・ブリッジは、飛び降りた人を受け止めるネットを建設中と報じられている。
【(2)Ask・Listen】
そして次に「私はあなたに死んでほしくない。だから話を聞かせてほしい」と話しかけてください。ポイントは、沈黙を恐れずじっくりと待つことです。ここでも重要なのはCALMです。沈黙に耐えられず矢継ぎ早に質問するのはNGです。
話を聞くことができれば「一緒に解決していきたいから、クリニックが次あいている日に相談に行こう」等と約束をしましょう。
【(3)Keep safe】
相談者のご主人は死にたくなるほどつらい気持ちでしょうから「次のクリニックの開院日は私が調べておく」など肩の荷を下ろしておいてあげることも重要です。
ここまで約束をしたらできるだけ一人にしないことも重要ですが、現実的にはそうもいかないので、もう一つ約束をしておきましょう。
それは「また死にたくなったり、つらいこと、困ったことがあったりすれば、すぐに声をかけてほしい」と伝え、約束してもらうことです。
最後にやっておくべきことは、自殺に使えそうなものを目に触れないところに隠すことです。ベルトなどひも状のもの、刃物、洗剤などです。
少しでもハードルを上げることが自殺予防には大きな効果を発揮します。
そして、クリニックに一緒に受診して状況を説明しましょう。本人からはなかなか切り出せないかもしれないので、家族からしっかりと伝えることが重要です。
最後になりますが、緊急的な状況で一人ではどうしようもないと思った場合、各都道府県の医療機関案内など利用するとよいでしょう。「“お住いの都道府県名“ ”医療機関案内“」などと検索すると出てくるはずです。
また、休日夜間ならば各都道府県の「精神科救急医療機関案内」に相談することが可能です。他にも自殺相談の窓口もありますからこちらに相談してみるのもよいでしょう
精神疾患の家族を支えることは、とても大変で心細いものです。一人で抱え込まず福祉や他の家族、友人などできるだけたくさんのサポーターを作ってください。
【相談先】
〇夜間休日精神科救急医療機関 案内窓口
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/ercenter.html
〇「いのち支える相談窓口一覧」
https://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php
堤多可弘(つつみ・たかひろ)
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 副院長/精神科医・産業医
弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。 現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長とスタートアップ企業の取締役を務めるとともに、首都圏及び青森県の企業や行政機関の産業医を10か所以上担当。 ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。 共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医 」(祥伝社新書)がある。
引用先:https://news.yahoo.co.jp/articles/b9adf34cba98a7c54efeefddd96a77335a4bd7cc