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更年期が「地雷」を踏む~不登校・ひきこもりの親の隠れた悩み
2016.06.10
■更年期の「告白」
当欄では最新の社会問題を意識的に書いているので微妙に僕の「本業」が隠れがちになっているのだが、僕は20年以上もずっと不登校やひきこもりの支援を続けている青少年支援者であって、最近では貧困支援(生活保護サポートや児童虐待スーパーバイズ等)なども行なうようになった、現在52才のベテラン現役支援者だ。
なかでも、長年続けている「保護者カウンセリング・コンサルティング」は今も毎週行なっており、多い日で5件も面談している(6年前に仕事のし過ぎで「脳出血」になった前歴があるので、もうちょっとセーブしなければいけない)。
そんな保護者支援の中で最近気づき始めたのが、親自身の「更年期」の問題だ。
更年期に関しては素人知識しか持たない僕ではあるが、それに伴う抑うつ傾向や不眠や感情のブレの症状等、親たちと話題を共有するには素人知識でも十分だと思う。
そんな僕に対して、親のほうから「私、更年期かもしれない」という密かな告白を時折聞く。
おそらく更年期から来る抑うつ状態や感情の爆発が、不登校やひきこもりの子どもに対してマイナスの影響を与えているかもしれない。これは自分でも気づかずカウンセラーにも指摘されたことがなく「不登校の親の会」でも話題になったことはないのだが、若い頃にはなかった自分の傾向の変化はおそらく「更年期」だと思う。
そうした告白をしみじみと語る親御さん(多くは母)とこの頃出会うことが多くなった。
■「50才超えテーマ」
たぶんこれは、僕が50才を超えたこととも関係すると思う。
50才を超えた人は世間では「働き盛り」等で捉えられ、ある種の「人間の完成体」として捉えられることが多いと思う。が、50才を超えてから現れる諸問題があり、それは50才の実感を知っている者にしかわからない感覚であり、若い人に打ち明けてもスルーされる可能性がある問題だ。
更年期はその代表的問題だと思う。ほかに、たとえば「死」が身近になることや「人生の目標」の喪失等、どちらかというと世間的にはクライ話題がおおいので、ほとんどの50才超え人間は日常的にはそうした話題を控える(同世代以上の友達には語る)。
が、それら「50才超えテーマ」は切実だ。特に体調の悪化・変化が伴う更年期は深刻だと思う。僕自身、若い頃にはなかった気分のムラや集中力の軽減等をこの頃はよく感じる。
そんな自分の話を、カウンセリングの「枕」に語るわけであるが、それを受けて親たちから「実は私も……」とポロッと漏れ、そこから日頃語ることを憚っている親たちの体調の激変について語られ始める。
■更年期が「地雷」を踏ませる
感情のブレや我慢のできなさは、たとえば不登校の子どもとの会話の中で「地雷を踏む」という行為として現れる。
地雷とは、ひきこもりを長引かせるタブーワードのことで、それらは、1.登校や仕事の話題、2.親の健康・引退・死の話題、3.同級生の話題などがある。
これらは子どもが不登校やひきこもりでなければ別に地雷ではなく、親としては当たり前の話題だ。ただ、子どもがひきこもっている時期にこの話題を話し続けていると、話し続ける間は何年でもしっかりとひきこもってしまう。
ひきこもりの延命装置がこのタブーワードたちであり、とりあえずひきこもりを終了させてどこかの支援施設につなげたければ、家庭での地雷踏みをできるだけやめることだ。
が、実は、親たちは知らずしらずのうちに地雷は踏んでいる。父も母も、完全に地雷から離れることは不可能だと、長年の不登校・ひきこもり支援を通して僕は実感してきた。
だから、完全に踏まないというムリはやめて、毎日踏んでいる地雷をせめて週一程度に減らしてください、と僕は親たちにお願いしている。
ただでさえ、親は地雷を踏む。ここに「更年期」が加わると、感情の爆発や沈鬱といったイレギュラーなかたちでの地雷踏みとなる。それは、嵐のような地雷踏みであり、悲劇的なことに、地雷を踏んだあとで親たち自身が激しく後悔してしまう地雷踏みなのだ。
更年期が地雷を踏ませているのであって、親たちは好きで踏んでいるわけではない。そこのところを支援者は理解すると、親たちによりやさしくなれると僕は思います。
記事詳細
一般社団法人officeドーナツトーク代表/田中俊英
2016年6月10日 12時35分配信
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakatoshihide/20160610-00058679/
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