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引きこもり最多は40代という宮城県岩沼市調査

2016.07.14

東日本大震災の被災地の自治体では初めてとなる「引きこもり」実態調査が行われ、ふだん見えない長期化・高年齢化した当事者たちの存在が、データで明らかになった。

 実態調査を行ったのは、NPO法人「Switch」で、委託を受けたNPO法人「地星社」が実施し、社協が協力した。調査は、昨年度の事業として行われ、このほど『岩沼市ユースチャレンジプログラム2015事業報告書』の冊子としてまとめられた。

 同市は、2011年の震災で、行方不明や関連死も含めて187人の犠牲者を出し、2340棟余りの家屋が全壊・半壊の被害を受けた。

 同市では、生活困窮者自立支援事業の相談窓口を市の社協が開設していたことから、被災地で就学・就労支援事業や中間就労の場づくりを続けるNPO法人「Switch」(高橋由佳理事長)と社協が連携。就労支援事業の一環として、調査を同市のNPO「地星社」(布田剛代表)に委託したという。

 同社は、2015年11月、社協を通して市の民生委員73人にアンケートの調査票を配布。12月から翌年1月にかけて、民生委員30人から調査票を回収した。回収率は41%だった。

 調査では、<おおむね15歳以上で、次に該当するような方を「ひきこもり等の状態にある者」>と定義し、民生委員に説明したという。

<(1)仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6ヵ月以上続けて自宅にひきこもっている状態の方>

<(2)仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流はないが、時々は買い物などで外出することもある方>

<※ただし、重度の障がい、疾病、高齢等で外出できない方を除きます>

「引きこもり」40歳以上が約44%、半数が10年以上と長期化

 調査報告によると、回答のあった30人のうち、該当する「ひきこもり者」等の存在を自分の担当地域内で把握していたのは、11人。複数の該当者を把握していたケースも含めると、該当者の総数は16人だった。

<ひきこもり該当者の年代>については、<40代>が6人で最も多く、約38%。40歳以上の中高年層は約44%で、<60代以上>と答えた人もいるなど、ここでも高年齢化している傾向が見える。

 また、<ひきこもっている期間>をみても、<10年以上>が8人と半数に及んだ。  調査を行った布田代表は、「個々のケースを把握しているわけではありませんが…」と前置きしつつ、こう分析する。 「今回の調査の手法上、40代くらいだと、引きこもり者として外部からも把握されやすいということがあるかもしれません。また、親が介護を必要とするようになって、地域包括支援センターなどが家庭に入り、そこで初めて子ども世代の引きこもり者の存在が外部にわかるというケー スも少なからずあるようです。それから、世代的な特徴としては、就職氷河期を経験している世代なので、最初の就職がうまくいかず、それをひきずって引きこもりになっている方も多いのかも しれません」  さらに、<該当者の状況>については、<ほとんど外に出ない>が6人、「買い物程度には出る」が7人で、ほとんど外に出ずに引きこもっている人が、他の調査の割合と比べると多かった。 <同居の家族(複数回答)> については、母親が11人で最も多く、父親が6人。家族構成については、両親と本人の3人家族が4件、母親と本人の2人家族も4件だった。  一方、<ひきこもりにいたった経緯(複数回答)>の問いに対しては、<わからない>が5件で最も多かった。この5件のひきこもっている期間が、いずれも5年以上であったことから、報告書では<ひきこもり期間が長期化することで、ひきこもりにいたった経緯を把握するのが困難になっていることが伺える>と考察している。  ちなみに、<失業>と<その他>が3件で続き、<不登校>と<家庭環境>も2件ずつあった。 そして、<該当者への支援の状況(複数回答)>についても、<わからない>が14件で最も多く、<医療機関等による医療や支援><行政機関等による支援>は、わずか1件ずつのみ。報告書では<これらのケースでは、いかなる支援も受けていないことも予想される>と指摘するなど、地域に潜在化して姿が見えなくなっている実態がわかる。  最後に、<ひきこもり者への支援策として必要だと思われること(複数回答)>についても尋ねている。  回答で最も多かったのは、<専門的な医療支援・カウンセリング等の充実>で20件。<支援・相談窓口の周知・PR>が17件で続いた。 「引きこもり」の約9割が男性と圧倒的な理由  また、該当者の性別では、男性が14人と圧倒的に多く、女性は2人だけだった。その理由について、布田代表は「個々のケースを把握しているわけではありませんが…」としながらも、こう推測する。 「男性の引きこもりの方が外部から把握されやすいということもあるかもしれません。女性の場合は、実態は引きこもりでも「家事手伝い」と認識されているケースもあるかと思います。また、社会的な性別役割意識と現実の自分の姿との乖離がプレッシャーとなって、男性の方が引きこもりになってしまうということはあるのかもしれません」  民生委員を通じての調査となると、「引きこもり」という状態をどう見るか、どうしても個々の認識の違いで左右されてしまう面は拭えないだろう。  筆者は、他の被災地で、震災を機に引きこもった事例もいくつか見たり聞いたりしてきた。震災の影響について、どう考えるか、布田代表に聞いてみると、 「今回の調査では特に震災にかかわるような調査項目を入れていませんが、岩沼の多くの人は津波の影響を受けていません。個々のケースを見れば、直接・間接になんらかの影響を受けているものもあるのかもしれませんが、それはわかりません」  とのことだった。  岩沼市は、被災地の中でも、仮設住宅から復興公営住宅や集団移転先の1戸建てへの移行など、被災者と一体となった街づくり計画が、いち早く進んだ自治体として知られている。  同市の社協によれば、避難所生活や仮設住宅、移転した住宅でも被災した集落単位で入って、元々のコミュニティが保たれていたことから、震災の影響で引きこもる人たちが少なかったのではないかとみている。 「市が委託しているスマイルサポートセンターの職員が毎日のように、昨年度までは仮設住宅、いまは集団移転先での訪問活動もされていて、サロンなどに声がけする工夫もしてきました」  同市の社協では、こうして地域に引きこもる人たちが岩沼にも存在していることが明らかになったことを受け、今年度も、そんな本人たちにどうアプローチをしながら社会に出る工夫をして行けばいいのか、いまのうちからできることを行政や民間の団体などと一緒に考えていくための材料にしていきたいという。 記事詳細 ダイヤモンドオンライン http://diamond.jp/articles/-/95524

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