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ひきこもり支援、実態は「放置」…「自立支援」施設元スタッフが明かす
2019.07.31
「ひきこもり支援」をうたう民間ビジネスで、トラブルが続出している。ひきこもりが全国115万人にものぼるなか、一体何が起きているのか。
関東の静かな住宅街にある2階建ての一軒家。雨戸は全て下ろされ、人の気配はない。今は誰も住んでいないというこの家はかつて、「ひきこもり自立支援施設」だった。
「自立支援というのはうそ。入居者は自由を奪われ、軟禁状態でした」
数年前までこの施設でスタッフとして働いていた男性は、こう語る。男性が施設で働くようになったのは、地元ハローワークの紹介だった。紹介されたのは、「ひきこもり支援」を目的とした「農園付きシェアハウス」。未経験者歓迎で資格も必要なく、仕事は入居者の相談にのるなどの支援という話だった。農作業を通したひきこもり支援に共感した男性は応募し、採用された。
だが、行ってみて驚いた。行った先は、住宅街の一軒家で、農園はどこにもない。シェアハウスは「寮」と呼ばれ、「寮長」と呼ばれる男性が責任者として住み込んでいた。部屋は5、6部屋あり、10代から70代の男性10人ほどが個室か2人相部屋で暮らした。彼らは自身の合意なく、自宅から連れ出された人ばかりだった。男性によれば、施設では引き出す人を「対象者」、対象者を連れ出す日を「実行日」と呼んでいた。
「実行日には施設の経営者と寮長、私たちスタッフの計6、7人で朝9時ごろ、ワゴン車で引き出す人の家に行きます。対象者の手足をつかみ連れ出し寮に連れていく。親は事前に契約を結んでいますから何もしません。親には事前にスタッフ4、5人で納得するまで説得を続け、同意も取りつけています」
施設では、昼夜2交代制で常時3、4人のスタッフが働いていた。仕事は買い出しや掃除といった雑用と、入居者の話し相手や監視業務。夜は玄関口に布団を敷いて逃げ出す人がいないか見張った。新しく入居者が入った時は暴れたりしないよう部屋の中に24時間立って見張っていたという。
「スタッフには何の情報も与えられません。入居者の名前や、誰がどういう理由で入居しているのかも教えてもらえない。寮長に聞いたり、意見や提案したりするとすぐクビです」
玄関は外から鍵がかけられ、部屋の窓は防犯用ロックで開かないようになっていた。寮に入る際は財布、免許証、携帯電話などは没収され、外部との連絡は制限された。施設のパンフレットには、「就労プログラムによる支援」や「カウンセラーによるカウンセリング」がうたわれていたが、就労プログラムは行われず、カウンセラーが来ることもなかった。手首を切るなど自傷行為をする入居者もいたが、放っておかれた。3食、調理人のつくる食事が提供され、スタッフが図書館で借りた本などを差し入れるが、入居者はテレビを見るくらいしかない。それでも入居料は1人月60万円だと聞いた。逃げ出す入居者も多くいて、逃げ出したまま行方知れずになった人もいたという。
男性は施設運営に疑問を持ち、辞めた。後にネットで、寮の経営者は入居者との間で強引な引き出しや高額な入居料を巡りトラブルを起こしている人物だと知った。男性は言う。
「ひきこもりの子を持つ親の弱みにつけこんだ、悪徳ビジネスとしか言いようがありません」
※AERA 2019年8月5日号より抜粋
引用先:https://dot.asahi.com/aera/2019073000079.html?page=1
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