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引きこもりの息子、業者頼った末…遺体で発見 「一体どうすれば」自問自答続ける親
  • 全国に100万人以上いると推計される引きこもり。同居する親が世間体を気にして相談できず、適切な支援にたどり着けないケースは少なくない。福岡県筑後地区では、両親が6年前から引きこもっていた長男(30)を民間の自立支援業者に預けたが、長男は昨年末に姿を消し、遺体となって発見された。「一体どうすればよかったのか」。両親は自問自答を続けている。


    「家に帰りたい」。昨年11月、愛知県内の自立支援業者に預けていた長男から母親(52)に電話があった。長男は1年前から業者の寮で他の引きこもりの人たちと共同生活をしながら、青果市場などで働いて自立を目指していた。再会した際は疲れ切った表情をしており、両親に「共同生活は好きじゃない」「働いてばかりだった」とこぼした。  自宅に戻った後は仕事を探すどころか、家事すら手伝わないようになった。父親(54)は「成長して帰ってきたかと思ったら、全く変わっていなかった」と受け止め、長男にもう一度寮生活に戻るように説得。母親は「あなたの働いている姿が見たい」と励ました。  再入寮を目前にした同年12月末、長男は家出した。その6日後、熊本県荒尾市沖の有明海に浮かぶ遺体が漁師によって発見された。警察署に駆けつけた母親は泣き崩れ、父親は「息子を追い込んでしまった」と全身が凍り付いたという。遺書はなく、部屋に残されていた長男のパソコンのデータは消えていた。  長男は高校卒業後、2007年に地元の印刷会社に就職。10年には別の印刷会社に転職し、経営悪化による賃金カットや仕事量の増加を理由に、14年に退職した。友人との付き合いも途絶えて自宅から出ないようになり、次第に家族と食卓を囲むこともなくなって自室にこもりがちになった。「何のために仕事をするのか」と悩んでおり、父親が就職するように促しても聞き入れず、けんかになることもあり、親子の会話は減っていった。  「引きこもりが長引くほど、社会復帰が難しくなる」。父親は焦燥感に駆られながらも、知人には打ち明けることができずに疲弊していき、精神安定剤を常用するようになった。相談した役所からは、引きこもりの当事者同士で悩みを共有する交流会を紹介された。「息子が参加すると思えない」と考えた末に、「最短3カ月で自立支援」とうたう業者をインターネットで見つけ、長男を預けた。



    「生きてさえいてくれれば、よかったのかもしれない」


     「生きてさえいてくれれば、それでよかったのかもしれない」。父親は後悔しつつ、働かない長男を見過ごすわけにはいかなかったと振り返る。「過去に戻って子どもの頃からの再教育が必要と思うほど、自立させるのは難しかった。同じように悩んでいる引きこもりの人や家族が大勢いる。国や自治体に支援のあり方を考えてほしい」




    親が責められたり、たらい回しにされたりするケースも


     引きこもりの自立支援を巡っては、自治体の体制が十分に整っておらず、家族にとって利用しにくい状況にある。国も対策を講じているが、専門家の見方は厳しい。  内閣府の調査では、全国の引きこもりは、40~64歳で約61万3千人(2018年12月時点)、15~39歳で約56万3千人(15年12月時点)と推計される。都道府県と政令市は「ひきこもり地域支援センター」を設置。市区町村では生活困窮者の窓口で職員が相談を受け、今年4月からアウトリーチ(訪問支援)を強化している。  引きこもり問題に詳しいジャーナリスト池上正樹さんは「自治体の引きこもりへの理解はまだまだ乏しく、専門のスタッフも少ない。『なぜ放置し続けたのか』と逆に親が責められたり、たらい回しにされたりするケースもある。家族は疲弊しているだけに、公的機関があてにならなければ、民間の自立支援業者にすがってしまう」と指摘する。  専門スタッフを抱え実績を重ねる支援団体もあるが、一部の業者の中には預かった子どもを施設で監禁したり、暴力をふるったりするケースもあるとされ、国が注意を呼び掛けている。




     約40年間引きこもりの支援を続ける和歌山大の宮西照夫名誉教授(精神医学)は「業者に預けられた子どもが、親から見捨てられたという気持ちになることもある。立ち直りには2、3年はかかり、焦りは禁物だ」と強調。自治体の体制については「支援の入り口にとどまるのが実情。社会復帰の段階まで、信頼できる支援団体と連携していくことが重要だ」と続けた。  筑波大の斎藤環教授(同)は「親は同じ悩みを共有できる各地の家族会に入って、支援情報を共有することも大切。自治体も積極的に支援窓口の存在をアピールすべきだ」と語った。  (御厨尚陽)


    福岡県が筑豊と筑後に支援拠点


     引きこもりの人を支えるため、福岡県は1日、県ひきこもり地域支援センター(同県春日市)のサテライトオフィスを筑豊、筑後の両地区に開設した。身近な地域で支援を受けられるよう相談窓口の充実を図る。  引きこもりの人は、県内に約4万人いると推計されている。本人は相談に出向かないことが多く、親の高齢化で家族からの相談も難しい場合があるため、支援体制の拡充に乗り出した。  筑豊オフィスは同県田川市の交流施設「いいかねPalette」内、筑後オフィスは同県久留米市長門石3丁目のビル内に開設。社会福祉士などのコーディネーターが2人ずつ常駐、電話や来所での相談に応じるほか、自宅を訪れて社会参加への支援や就職・就学のための情報を提供する。支援団体などとの研修も重ね、地域ネットワークの構築を目指す。  筑豊オフィス=0947(45)1155▽筑後オフィス=0942(37)2280。開設時間はいずれも平日の午前9時~午後5時。 (豊福幸子)



    引用先:https://news.yahoo.co.jp/articles/74a83e520528bec966e7a6a03f98110ff096254e


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