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ごみの中 薄暗い部屋に座る弟「優秀だったのになぜ…」兄に抱えられ10年以上ぶりに外へ
  • 「ケン、行こう。ちゃんとした生活に戻ろう」-。今年3月、本島中部の公営住宅。開け放たれた玄関ドアの向こうの暗がりで、兄のオサムさん(58)=仮名=と弟のカズヤさん(49)=同=が、3人兄弟の次男、ケンさん(52)=同=の説得を続けていた。(「家族のカタチ」取材班・又吉嘉例)




    ケンさんがこの住宅の一室にひきこもって10年以上になる。同居していた母親が2018年末に84歳で亡くなった後、一人残された部屋で大量のごみに囲まれ、テレビの前に座って終日を過ごすようになった。  表情はうつろで、誰の呼び掛けにも応えない。うつ病などの精神疾患に加え、皮膚科や内科的疾患を疑った家族はこの日、ケンさんを部屋から何とか出して、医療機関へ連れて行く手はずを整えていた。  公営住宅の集会所に、兄弟や行政関係者ら15人が集まった。「本人の安全を第一に、何とか受診につなげましょう」。玄関ドアの前で、相談支援専門員の平川裕太さん(37)は「ケンさんを連れてくるのは、家族が主体でなくてはいけません。私たちはあくまで見守りです」と2人に強調した。  もし、部屋から出てきたケンさんが周囲に暴力を振るうようなことがあれば、警察官が介入することになってしまう。ケンさんを「加害者」にするわけにはいかない。兄弟はケンさんに呼び掛けた。「今日はお前のために、大勢来ているんだよ」  部屋の玄関ドアを開けると、すえたにおいが鼻を突いた。窓にはカーテンが引かれ、昼でも薄暗い。湿気でむっとした部屋には、おびただしい数のビニール袋が並んでいた。中にはミネラルウオーターの空ボトル、コーヒー牛乳や乳酸菌飲料の紙パック、パンの包装ビニール…。大量のごみに囲まれるように、ケンさんはいた。  ■抱えられ外に 本島中部で10年以上ひきこもり状態を続けていたケンさん=仮名(52)=を家から出して医療につなげるため、公営住宅の集会所には兄のオサムさん(58)=同=や弟のカズヤさん(49)=同=だけでなく、公営住宅管理者の職員や自治会長らが顔をそろえた。  障がい者やその家族の生活相談に乗る相談支援専門員が受診先の医療機関と調整、万一に備えて所轄警察署の生活安全課から署員2人も協力に駆け付けた。   無理に連れて行こうとすれば、ケンさんがどう反応するか分からない。部屋の中の危険物の有無や連れ出すルート、車の駐車場所を確認。ケンさんがパニックに陥って逃げてしまうことも考えられるため、本人の安全を考え、部屋のある階まで各階に人を配置した。  長期戦になることも予想されたが、オサムさんとカズヤさんらが部屋に入って15分後、2人に抱えられるようにして、ケンさんは出てきた。上下の服はぼろぼろに破れ、風呂に入らないため黒ずんだ肌がところどころ露出していた。  兄弟3人を複数の人が支えながら廊下を歩き、階段を下りて車に乗り込むと、そのまま本島中部の精神医療機関へ。受診後、ケンさんは統合失調症の疑いがあると診断され、医療保護入院となった。  長男のオサムさんは、やせ細ったケンさんを抱えながら「離せ」という弱々しい声を聞いた。その体の軽さにも驚いた。「骨をつかんでいるみたいだった」。病院の計測で、身長160センチ弱のケンさんの体重は38キロまで落ちていたと分かった。「優秀な弟だったんだ。なぜこうなったのか…」。オサムさんは力なく首を振った。




     引用先:https://news.yahoo.co.jp/articles/e496088ee79cda38c454785583e14bd0cd4aa0a9

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