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「スマホ依存」の専門外来が警鐘 小学2年生でも依存症に、ゲームで脳が萎縮のデータも
  • 「依存症」といえば、アルコールやギャンブル依存の怖さが叫ばれてきたが、最近では、こちらの深刻さが増しつつある。インターネット、そしてスマホの普及によって、顕在化してきた「ネット依存」。文明の利器に蝕まれる若者の実態を、専門外来の院長が詳らかにする。(「週刊新潮」2020年10月29日号掲載の内容です)


    今の世の中、何でもIT、ITという方向に流れていますよね。もちろんIT化は大事。しかし、それと同時に、ネガティブな側面もあるのでバランスの取れた対策が重要です。  例えば、この夏、文科省が、中学生によるスマホの学校への持ち込みを実質、容認するとの通知を出しましたが、果たしてそれでいいのか。登下校時、子どもの安否が確認できるというメリットと共に、デメリットもきちんと伝えないといけない。  近年、子どもたちのネット依存は急激に増えています。健康・社会生活への影響は大きく、深刻さは増し、単に家庭の問題では片づけられない状況になっています。自然に改善することが少なく、何らかの相談・治療介入をしなければ、彼らの大切な将来が閉ざされてしまう可能性が大きいのです。 〈そう語るのは、国立病院機構・久里浜医療センターの樋口進院長である。  2011年に日本で初めてネット依存症の外来を開設し、現在も治療に当たる。完全予約制だが、「600回電話してようやく予約が取れた、という患者さんもいる」(同)ほど患者が殺到。年間のべ1500人を診察し、日本で最も、ネット依存症の患者を診ている医師と言ってよい。そして、依存症患者の増加を加速させているのがスマホの普及なのだが、それは後述するとして、何が院長をして、危機感を抱かしむるのだろうか。〉  きっかけは08年でした。当院はもともとアルコール依存など、依存症を専門的に診てきた病院ですが、厚生労働省の科学研究を行った際、成人のアルコール依存症に関する実態調査に加えて、新しい依存症としてインターネット依存の調査も実施してみたのです。すると、ネット依存症が疑われる人が、約275万人いるという推計値が出た。275万人といえば、ちょうど大阪市の人口と同じくらいの数に当たる、膨大な人数です。ネット依存とは、「日常生活や社会生活、健康に支障を来すほどの、インターネットの長時間使用」状態を指しますが、この人たちをいったい誰が診ているのか。専門的に診察している施設などどこにもありません。誰かがやらないと大変なことになる、との危機感が生まれました。そこで、まず隗(かい)より始めよ、と外来を開設することにしたのです。  そうしていざ始めてみると、驚くべきことに、患者さんの70%は未成年者でした。その半分は中高生で、残り半分が小学生とその他。僕が診た最年少は何と小学2年生でした。依存症には、開始年齢が早ければ早いほどなりやすくなりますが、低年齢化もここまできたか、と思いましたね。  その子は小学1年生までは普通に通学できていました。しかし家庭内にトラブルがあり、親が子どもに手をかけてあげられなくなったため、小学2年の4月にスマホとタブレットを買い与えたという。しかし、一人でも静かにしてくれるようになったのはよかったけれど、オンラインゲームに熱中するようになってしまいます。結果、2学期から登校できなくなり、夜中までゲームを続けるので昼夜逆転の生活になってしまいました。たまりかねた親がスマホを取り上げると、怒って大暴れする。手に負えなくて、何度か警察を呼んだこともあったそうです。その子が初めて受診したときは、それこそタブレットを持ったまま何も話さなかったですね。2回目からも、診察は受けてくれましたが、それでもタブレットを持ったままだった。月に1度診察に来ていたんですが、最近はご無沙汰で、どうなってしまったのか。心配です。  あるいは、16歳の女子高校生の例。  彼女は元気で友だちも多く、中学では陸上部で活躍していました。でも一つのことにこだわる傾向があり、小学生の頃からゲームに熱中するので、親が警戒して、中学になって本人がほしがってもスマホは買わず、ガラケーを与えていました。ところが本人が希望する高校に入れたため、中学3年生の終盤、祖父母が入学祝いとしてスマホを与えた。これが災いします。LINEやツイッターに熱中し、高校に入るとオンラインゲームにハマるようになったのです。学校を休みがちになり、成績も急落、学年では下位に低迷する状態に。両親がスマホを取り上げようとすると暴言を吐き、家の中の物を投げ、壁に穴を開け、包丁を手に抵抗したこともありました。彼女は、自分でも依存症だと気づいていたので、いやいやながらも、月1回、病院に通ってくれました。


    こうした臨床例は山のようにあります。  当院に来る患者さんに共通する症状は、昼夜逆転する、家族に対して暴力をふるう、物に当たる、壊す、引きこもる、成績が低下する、欠席が続く、食事をとらない、朝起きられない……。  そのほとんどの原因はゲーム依存です。  インターネットのアプリには、ゲームやSNS、動画などがありますが、前述の例からもわかるように、患者さんのほとんど、実に90%以上はゲーム、それもオンラインゲームに依存しています。  その中でも、子どもの多くが心を奪われているのは、“武器”を使って敵を倒すシューティングゲーム、あるいは生き残りをかけたバトル系のゲーム。その意味で、ゲーム依存には圧倒的に男子が多く、当院の患者での男女比は、男子10~15人に対し、女子が1人、といったくらいです。そしてこれらはオンラインゲームで、ゲーム会社によって、依存しやすい仕掛けが随所に組み込まれているんです。  彼らは夜中、ネット上に集合して仲間と一緒にゲームをするわけですが、それぞれに役割が決まっているので抜けにくい。また、ゲームが終わったあとも作戦会議をツイッターやスカイプでやったりするのです。  さらにオンラインゲームではランキングがあって、強いと序列が上がる。闘いに勝たなければ上には行けないルールなので、“アイテム”という有料の武器が必要になります。強くなるためにそれを買ううちに、どんどん課金が増えていく。  オフラインのゲームならば、「終わり」があります。ゲーム仲間からの誘いや競争がありません。自分のペースでゲームを楽しむことができます。しかし、オンラインゲームは自分自身をアップデートできるし、競争があり、仲間もいるので、果てしなくゲームが続きます。課金も底なし沼のように増えていく。親のクレジットカードを盗み取って課金に課金を重ねた結果、半年で約200万円課金した子もいました。  だから、親御さんの悩みは深刻そのもの。課金については消費生活センターに相談をして、「未成年者なので返して」と言えば返金してもらえることもあります。ただ、それをやると、子どもが手に入れたアイテムも返品されてしまい、ランキングも下がってしまうんですね。それにキレた子どもに殴られた親御さんもいます。  そもそも親御さんは、まず、外来まで子どもを連れてくるのに一苦労。初診で、患者さん自身が診察室に現れるケースは7割程度です。残りの3割は、親だけが診察に来て、悩みを打ち明ける。自殺を考えるところまで追い詰められているケースもあります。  子どもを連れてこられたケースでも、簀巻き状態にして無理矢理連れてくるケース、車の中で殴り合いをした末に何とか病院にたどり着くケース、あるいは行き先を教えなかったり、新しいゲームのデバイスを買ってあげるから、などと、半ば騙して連れてくる場合もあります。  とにかく、親の苦労はすさまじいですね。


    脳も変化



    スマホの普及で…



    引用先:「スマホ依存」の専門外来が警鐘 小学2年生でも依存症に、ゲームで脳が萎縮のデータも(デイリー新潮) – Yahoo!ニュース


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