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大人になって「ASD(自閉症スペクトラム障害)」と診断されたら…。病気を知ることでその辛さは軽減できます
こんにちは、公認心理師、精神保健福祉士の水口明子です。前回「ADHD(注意欠如・多動症)」についてお話させていただきましたが、大人になってから発達障害と診断を受ける方の中でADHDと並んで多いのが「ASD(自閉症スペクトラム障害)」です。大人になってから「ASD」の診断を受ける方の多くは社会での生きづらさを感じている場合もあります。今回は「ASD」についてお話させていただきます。
自閉症の一般のイメージと「ASD」は異なる
まず初めに、「自閉症」と聞いて、皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか。よく私たち心理師が一般の方から聞くのは、小さい頃から友人たちと仲良くすることなく1人で遊んでいる、感情を表すことが苦手で物静か、といったようなイメージです。「ASD」も自閉症スペクトラム障害という名称なので、同じようなイメージを抱く方が多いですが、実際はそうではありません。“スペクトラム”とは「範囲」などを表しており、ハッキリとした境界線がないことを意味しています。なので、重度のASDの方もいれば、軽度の方で知的能力に何の問題もなく、さらには一般の方よりも優秀な能力を持つ方も多くいます。ひとまず、このことを覚えておいてください。 続いて、「ASD」の特徴について説明します。ASDの原因はいまだに特定されておらず、ADHD同様に先天的な脳の機能障害で、さまざまな遺伝的要因が複雑に関与し合い、発現するのではないかと考えられています。 ASDには3つの特徴があります。 ・社会性に障害傾向がある マイペースな行動が目立ち、集団行動が苦手な傾向があります。また、他人への興味が薄く、人との交流を避けることもあります。 ・コミュニケーションに障害がある 話の理解が難しく、相手の表情などから気持ちを読み取ることが苦手です。逆に自分が興味あることを一方的に話し続けてしまうこともあります。 ・強いこだわりを持っている 予定を決めて、その予定が変わってしまうとパニックを起こすなど、活動の切り替えが苦手な傾向があります。また、自分ルールがあり、それに強いこだわりを持っていて柔軟に変更できません。 上記はあくまでも主な特徴で、症状が強く出る人もいれば弱い人もおり、さらには2つ以上の特徴を併せ持つ方もいます。
うつなどの二次障害を発症する場合も多い
大人になってからASDの診断を受ける方の多くは、ADHD同様に診断を受ける前から対人関係がうまくできないことを悩み、うつなどの二次障害を抱えています。うつなどの精神疾患の治療を続けていく中で、ASDの診断を受ける方も多いのです。これは医師の診断結果が間違っているということはなく、二次障害に隠れている一次障害(ここではASDのこと)を診断すること自体が難しいものであり、長期間の治療を要するものとなるからです。 いち早く治療を行うためにも、セルフチェックも大切です。少しでもご自身で気になることがある人は下記のチェックリストを行ってみてください。 ◆ASDチェックリスト ・話をしているときに、他人がどのように感じているかを理解することが難しい ・話をしているときに、表情、しぐさなどから何かを読み取るのが難しい ・誰かと話すときに、どのタイミングで話すか聞くかの判断が難しい ・集団で働いたり、活動することが難しい ・他人が自分に何を期待しているかを理解することが難しい ・社交的な場面でどのようにふるまえばいいかわからない ・人と雑談したり、世間話をするのが苦痛である ・言葉通りに物事を受け取りすぎるので、他人が意図していることに気づかない ・自分の思い通りのやり方でなくなると、非常に困惑したり、動揺してしまう ・全体像よりも、細部にこだわってしまう ・自分がパニックになったときには、その場から逃げ出したくなる ・どのように友人をつくるのか、社交的につきあうかがよくわからない ・他人が気にならないような感触のものでも、肌に触れると不快になることがある ・時々耳をふさいで、自分にとっては不快な音を遮断したくなる 上記の症状で該当するものがあり、その症状により日常生活に支障がきたすような辛さを感じている場合は、一度病院で検査を受けてみることをおすすめします。 (上記のリストは、RAADS-14スクリーニングを日本語訳したものを1部修正加工したものになります)
発達“障害”ではなく、発達の“特徴”と捉えてみる
私は、ASDやADHDなどに発達障害という“障害”の文字を使うこと自体に違和感があります。人それぞれ得意なものがあれば苦手なものがあるなど、みんなが持ち合わせているものであり、特別なものではないからです。つまり、個性ともいえるような、発達の“特徴”が少し顕著なだけなのです。 ADHDと違って薬物治療がまだ確立されておらず、うつなどの二次障害がある場合などは症状がある精神疾患の薬を使うなどの対処療法しかない状況ですが、投薬治療の他にも、カウンセリングや、ソーシャルスキルトレーニング(社会で人と人とが関わりながら生きていくために欠かせないスキルを身につける訓練)などで、自分の苦手なことへの対処方法を身につけていくことができます。 大人になってから診断を受けた場合でも、ADHDと同じくASDも社会で生活することは可能です。まずはその生きづらさをいち早くなくすためにも、一人で悩まずに、医師やカウンセラーに相談してみてください。 ASDの発達の“特徴”は、集団療法などで苦手なものへの対処方法を身につけることで、社会への生きづらさを軽減することができます。
引用先:大人になって「ASD(自閉症スペクトラム障害)」と診断されたら…。病気を知ることでその辛さは軽減できます(Suits-woman.jp) – Yahoo!ニュース