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「ASD(自閉症スペクトラム障害)」のパートナーが患う「カサンドラ症候群」とは?ならないためにできること
こんにちは、公認心理師、精神保健福祉士の水口明子です。前回「ASD(自閉症スペクトラム障害)」についてご説明させていただきましたが、ASDを持つ方と、その方を支える家族や身近な人(パートナー)のコミュニケーションの行き違いによって、支える側の方たちが抱える心の問題があります。それを「カサンドラ症候群」と言います。今回はASDを支える人たちが抱える心の問題についてお話させていただきます。
「カサンドラ症候群」はASDのパートナーが患うメンタル不調
「カサンドラ症候群」とは、ASDの方の身近にいる人たち(パートナー)に心身の不調が生じる状態のことを指します。特に、ASDの方を支えようと努力しているような、夫婦、親子、恋人関係に起こる場合が多いとされています。 しかし、「カサンドラ症候群」と名称がついているものの診断名ではなく、心理学者がASDのパートナーが陥る状態について名付けた総称となり、病院で医師が判断してくれるものではありません。なので、ASDのパートナーに起こるメンタル不調には別の診断名がつきます。身体的なものから精神的なものまでありますが代表的なものでいうと、身体面では不眠、片頭痛、体重の増減など、精神面では抑うつ症状や不安障害、無力感などが挙げられます。 なぜこのようなメンタル不調を引き起こすかというと、ASDの特徴が関係しています。前回お話させていただいたものと同様になりますが、ASDには、マイペースな行動が目立ち、集団行動が苦手などの「社会性に障害傾向がある」、話の理解が難しく、相手の表情などから気持ちを読み取ることが苦手などの「コミュニケーションに障害がある」、予定が変わってしまうとパニックを起こすなど、活動の切り替えが苦手な傾向がある「強いこだわりを持っている」という3つの特徴があります。 このような特徴を持つことでパートナーなどの親しい人ともコミュニケーションがうまくできず、精神的、情緒的な相互関係を築くことが難しくなる場合があるのです。パートナーという近しい関係だからこそ、一方通行の思いが心的ストレスとなり、そのことから不安障害や抑うつなどの心の病が出てきてしまいます。
ASDを支えようと思い込まないこと
「カサンドラ症候群」としてうつなどの精神症状や不眠などの身体症状が出た場合には、症状に合わせた薬物療法を用いるなど対処療法がメインとなります。 しかし、カサンドラ症候群を患う原因はパートナーとのコミュニケーションの不和から起こるものなので、対処療法では根本的な解決とはなりません。解決するためには、ASDを持つパートナーとともに解決、症状の緩和にあたる必要があります。 パートナーとともに解決にあたる場合には、まずはASDを持つパートナー自身がASDのことを理解してそのことを受け入れる必要があります。大人になってから発達障害に気づく場合は、障害について受け入れられずに本人が認めない場合も多く、パートナーとしてはまずはそこを受け入れてもらうことが治療への第一歩となります。 もし相手が治療を拒む場合は、自身のことを優先して少し離れてみることも視野に入れてください。パートナーを支えようとあなた自身が辛い毎日を送っているということは、自分よりも相手を優先してしまっているということ。依存などの関係性になっている可能性もあります。まず優先するべきはあなた自身です。このことは忘れないでください。 そして、相手がASDを受け入れている場合は、お互いができないこと、辛いことを理解し合うために話し合いの時間を持ってみてください。それだけでは解決しない場合は、集団療法などのプログラムを取り入れている病院などを受診することでコミュニケーションの不和は少しずつですが解消されていきます。ASDに対応しているプログラムを行っている病院は多くあります。一人で抱え込まずに、外部に相談することを覚えていてください。 カサンドラ症候群とは、ASDを持つパートナーとのコミュニケーションの不和からくる身体面、精神面に影響を及ぼすメンタル不調のことです。ASDの方と、そしてパートナーであるあなたのどちらか一方が悪いというものではありません。相手のためと背負いすぎず、お互いができること、できないことを理解し合うのが解決への第一歩となります。
引用先:「ASD(自閉症スペクトラム障害)」のパートナーが患う「カサンドラ症候群」とは?ならないためにできること(Suits-woman.jp) – Yahoo!ニュース