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ひきこもり25歳長男が「1人暮らし」提案 年収800万円は残り3年、両親の決断は…
筆者は、ひきこもりの人やその家族に対する支援を行っています。ある日、ひきこもりを続ける25歳男性の両親から相談がありました。男性(長男)は「1人暮らしをして現状を変えたい」と両親に提案しましたが、長男は無職なので、1人暮らしの生活費などは親が負担することになります。「ずっと費用を負担し続けることは難しい。果たして、長男に1人暮らしをさせるべきかどうか?」と悩んだ両親が筆者に相談してきたのです。
期間限定で支援を検討
相談者の家族構成は次の通りです。 父=56歳、会社員 母=53歳、専業主婦 長男=25歳 長男は大学まで特に問題なく進学しましたが、「授業がつまらない、分からない」という理由で友人と遊んだり、アルバイトに没頭したりするようになりました。その結果、大学の授業に出席することが大幅に減り、ついには単位が足りず留年。ショックを受けた長男は親に相談することもなく、大学を退学しました。退学後は就職活動もアルバイトもせず、無気力な日々を過ごすようになったそうです。 そんな長男も20代後半になり、ひきこもり続けている状態に焦りを感じ始めたのかもしれません。ある日、両親に向かって、「何かきっかけが欲しい。1人暮らしを始めて、現状を変えたい」と言ってきたのです。両親は長男の1人暮らしを応援したい気持ちはあるのですが、一方で、どうしてもお金の心配が頭をよぎってしまいます。 母親は筆者に言いました。 「長男は無職なので、生活費などは私たち親が負担することになります。主人はもうすぐ60歳で定年を迎えますし、いつまでもお金を負担することができません…」 母親の不安はもっともです。そこで、筆者は父親の収入について確認しました。現在の父親の年収は800万円ほど。60歳で定年を迎えた後は継続雇用となり、年収は300万円台に下がってしまう予定とのことでした。定年を迎える前までなら、何とか長男の生活費は負担できそうです。 筆者は次のように提案しました。 「例えば、『お父さまが60歳で定年になるまで、期間限定で1人暮らしをしてみる』ということはどうでしょうか? 60歳まであと3年ほどありますし、その間に息子さんに何か変化が出てくるかもしれません」 「そうですね。定年までなら何とか支援もできそうですし、長男にもそのように伝えてみます」 父親はそう答え、母親も同意しました。 両親と筆者で話し合ったところ、長男には月11万円くらいなら何とか支援できそうなことが分かりました。ただ、この予算には家賃分も含まれています。家賃分を差し引くと、生活費はかなり厳しいものになってしまいます。 そこで、筆者は次のような話をしました。 「息子さんの国民年金保険料とスマホ代はすでに、同居状態の今でもご負担いただいていると思います。したがって、この2つを除いて予算の内訳を立ててみて、その範囲内でやりくりをしてもらうとよいかもしれませんね」 「具体的にはどのような感じになるのでしょうか?」 「内訳は食費、水道光熱費、日用品(被服、雑費含む)、予備費くらいのざっくりとしたものでよいと思います。実際に1人暮らしをしてみないと分からないこともありますし。内訳は息子さんご自身に立ててもらうようにしてください」 「分かりました。そのようにしてみます」 父親はそのように答えました。 筆者との面談後、両親から事情を聴いた長男は表のような内訳を立ててみました。予算を立てた後、早速、長男と母親は物件を探しました。無事住まいも見つかり、こうして長男の1人暮らしが始まったのです。
思い通りにいかないことも…
長男が1人暮らしを始めて、しばらくの間は、長男と母親で毎日のように連絡を取り合っていました。連絡を取ったときは、長男が率先して、自炊や洗濯、掃除、ゴミ出しをしている様子が伝わってきたそうです。しかし、3カ月もたつと次第に連絡する回数も減り、長男の生活にも変化が現れました。 毎食の自炊が次第に面倒になり、自炊の頻度が落ちてしまいました。今のところ、コンビニ弁当などの外食と、たまに自炊することで何とかしのいでいます。当初、親子で想定していたよりも食費が2万円ほど多くかかるようになり、オーバーした分は親が負担しています。洗濯は月に数回、掃除はほとんどやっていません。弁当の空き容器やお菓子の袋、ペットボトルなどのゴミを部屋の至る所に放置している状態です。 心配した母親は月に1回、長男の自宅へ様子を見に行くようになりました。部屋の中を見た母親は文句を言いたいのをぐっとこらえ、黙々と片付けや洗濯を始めます。さすがに長男もばつが悪いようで一緒に手伝います。片付けが済んだ後は、小さな声で感謝の気持ちを伝えるようにもなりました。 「同居していた頃の長男は掃除などを全く手伝おうとせず、私が長男の部屋の掃除をしようものなら、ものすごい勢いで怒っていました。それが今は掃除も手伝ってくれるようになったので、少しは変わったのかもしれませんね」 母親はそう振り返りました。 そのような暮らしを続けて半年が過ぎた頃。長男はフードデリバリーの仕事にチャレンジするようになったそうです。今のところ、1日に1、2件なので収入は月2万円ほど。それでも、全く稼げなかった頃に比べれば大きな前進です。 「体力や自信がついてくれば、ピザ店の配達の仕事もしてみたい」 長男はそのような目標を掲げました。 「当初思い描いたような生活ではないかもしれません。でも、本人なりに頑張っているようですし、あまり口出しをせずに見守っていこうと考えるようになりました。もし、長男が家賃分くらい稼げるようになったら、『(主人が60歳になった後も)引き続き、1人暮らしをさせてみようか?』ということも夫婦で話し合っています」 母親は筆者にそう語ってくれました。
引用先:ひきこもり25歳長男が「1人暮らし」提案 年収800万円は残り3年、両親の決断は…(オトナンサー) – Yahoo!ニュース