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激増する子供の自殺 背景にある「コロナうつ」
【コロナに追い詰められた子供たち】 コロナ禍は、人間のメンタルをも蝕(むしば)みます。とくに弱い者には容赦がありません。結果、女性と子供の自殺が急増しているのです。とくに、この1年で、過去に例がないほど子供の自殺が増えています。 もともと、日本は未成年者の自殺が他国に比べて多い国で、欧米諸国では未成年者の自殺率が減少傾向にあるのに日本は逆。若年層の死因のトップが自殺なのです。G7では日本だけです。 これに、ここ1年のコロナ禍が拍車をかけていますから、こちらのほうが「緊急事態宣言」ではないでしょうか? この1年で、私のクリニックでも、子供のメンタルヘルスに関する相談が増えました。ある内科医から、「うちで定期的に診ている母親の症状がおかしい。毎回、子供を連れて受診に来ているが、子供はいつも怯えている。そちらで診てもらえないか」といわれました。診察すると、母親は明らかに「コロナうつ」で、家事が手につかず、子供の面倒を見きれなくなっているようでした。 この子供は8歳で、緊急事態宣言で学校が休校になり、家にいると、毎日のように母親の感情の起伏のはけ口になっていました。父親はもともと、子供に暴力を振るうことが多かったのです。 このままではまずいと、母親の精神状態を落ち着かせるため、マイナートランキライザーの服用などの治療で、なんとかしのぎました。 精神科医の仲間から、コロナ禍が原因で子供たちが追い詰められているという話をよく聞きます。休校になったり、部活がなくなったり、オンライン授業になったりして、子供たちは家にいる時間が増えました。 しかし、その家庭がコロナ禍に蝕まれ、けんかが絶えないなどということがあると、子供は思い詰めて、自傷行為の揚げ句、自殺にまで走ったりするのです。 文部科学省によると、2020年に自殺した18歳以下の児童生徒は、前年比140人増の479人で、統計のある1980年以降で最多となっています。その内訳は、小学生14人、中学生136人、高校生329人-高校生の自殺者が増えているのが目立ちます。 背景に「コロナうつ」があるのは間違いありません。日常生活が突じょ内向きになり、閉鎖された空間の中で暮らせば、誰もがなんらかの精神の異常をきたします。 昨年の統計では、緊急事態宣言での長期休校が明けた6月と、夏休みの8月に、自殺は前年同月の2倍に増えています。 国立成育医療研究センター(東京・世田谷)が、この2月に発表したアンケートによると、回答した小学4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に中等度以上のうつ症状がありました。小学4年生以上の6%が「ほとんど毎日」自殺や自傷行為について考えていたというから、驚きです。 「コロナうつ」と言っても漠然としています。ただ単なる不安、閉塞感では「うつ」とは呼べません。精神科・心療内科には、「適応障害」という診断基準がありますが、これに該当する症状の患者が、コロナ禍で増えているのです。 閉塞感はストレスを助長し、それが「いじめ」や「家庭内暴力」をエスカレートさせます。外出自粛やテレワーク、休校やオンライン授業の導入が、家庭や学校の環境を変質させ、学校ではいじめを、家庭ではDVを増やしています。その犠牲になっているのが、子供たちです。 新型コロナの感染者増で「医療崩壊」が問題になっていますが、子供の自殺増の背景にある「学校崩壊」「家庭崩壊」も、より深刻なのです。 ■吉竹弘行(よしたけ・ひろゆき) 1995年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、浜松医科大学精神科などを経て、明陵クリニック院長(神奈川県大和市)。著書に『「うつ」と平常の境目』(青春新書)。
引用先:激増する子供の自殺 背景にある「コロナうつ」(夕刊フジ) – Yahoo!ニュース