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苦しいなら逃げて──発達障害を抱える夫婦が語った「幸せ」になる極意
  • その生きづらさは発達障害のせいかもしれない

    仕事が長続きせず転職ばかりしている、友達がうまく作れない、など。このようなネガティブな行動を自分の性格のせいにして苦しんでいる人がいたら、いったん立ち止まって発達障害を疑った方がいいかもしれせん。


    ADHD(注意欠如・多動性障害)やASD (自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)といった発達障害は、社会生活でさまざまな困難をきたすとされていますが、それを自覚したうえで適切な行動を取れば、生きづらさがかなり解消されるとも言われています。


    それを実践している姿をYouTubeで発信しているのが、沖縄在住の動画クリエイター・ナカモトフウフさんです。お二人が上梓したエッセイ『ADHDの旦那って意外と面白いんよ 本気で発達障害に向き合った夫婦の物語』には、ADHDである夫・ダイスケさん、彼を支える妻・ちゃんまりさんそれぞれの視点からADHDへの向き合い方が語られていて、ADHDの人だけでなくその関係者にとっても大いに参考となるでしょう。


    今回はお二人に、ADHDに向き合う中で見えてきた夫婦生活を維持するコツなどをうかがいました。


    ゴミをポイ捨てする夫にイライラしなくなった理由

    ──お二人はADHDに関する情報をYouTubeで発信されてきましたが、それを『ADHDの旦那って意外と面白いんよ』(以下、本書)という書籍として出版することが決まったときはどんなお気持ちでした?


    ダイスケさん(以下、敬称略) すごく前向きに捉えていましたね。自分たちのことを洗いざらい書けるいいチャンスだなと。あとは、同じような悩みを抱える人の助けになればいいなと思いました。


    ちゃんまりさん(以下、敬称略) 私たちがADHDに向き合おうと決意した頃は、ADHDの当事者が発信した情報があまり世に出ていなかったんです。専門家が解説する症例みたいなものしかなくて、周囲の人が具体的に取るべき行動とか、ADHDの人自身の心理状態とかがまったくわからなかった。ですから、当事者である私たちがそういうリアルな事例を発信すれば、役に立つと感じる人がいるのではないかと思いましたね。


    ──本書では「ADHDの人とは基本的に距離を置いた方がお互いにストレスが少なく済むので、必要以上に関わらないことをお勧めします」と、非常に冷静な意見を述べていますよね。そこがすごくリアルに感じられたのですが、すぐにそんなクールな考えになれたのですか?


    ダイスケ 僕はもともと俯瞰的に物事を見る性格なので、それほど難しいことではなかったですね。ただ20歳そこそこの頃にADHDの診断を受けたときは、そんな風には考えられなかったですけど。仕事をやりながら2~3年くらいかけて身につけていった気がします。


    ちゃんまり 私も最初の頃は、そこまでクールな考え方はできなかったです。ダイスケさんがADHDだとわかっても、その行動には感情が乗っているものだと思っていたので。たとえば、ゴミをポイ捨てするのは単に面倒くさがっているだけじゃないのか、とか。それを見てこちらも感情的になってしまうことがあったんですけど、ADHDの人の場合は感情とは関係なくオートマティックにそういう行動になると知り、思考がバチッと切り替わりました。


    夫婦に必要なのは「淡々とやるべきことをやる」こと

    ──考え方が変わると気持ちも楽になりました?


    ちゃんまり そうですね。ギャーギャー責め立てること自体が無駄というか。その時間を別のことに使ったほうが有意義だと考えるようになりました。相手のダメなところではなく、良いところに目を向けたほうが、人間関係が良くなることを痛感しました。


    ダイスケ 結婚してだいぶ経った頃にちゃんまりもASDだと判明したので、自分たちのような発達障害の人間が気持ちよく生きるためにはどうすべきなのか、いくつか共通の認識を持つようにしましたね。簡単に言うと、周りの人に対してこういうことを言うべきではない、するべきではないという認識ですね。「発達障害だから理解してよ」と言ったところで、嫌われちゃうだけなので。よく「淡々とやるべきことをやっていく」という言葉を夫婦でかけ合っているんですけど、大きいことなんてしなくていいから、淡々と真面目に目の前のことをやっていこうと。そうすれば、だらしない部分やできない部分が目についても、お互いに許せるのではないか。夫婦関係や人間関係についてはそんな風に考えています。


    ちゃんまり そこはダイスケさんにかなり学ばせてもらいましたね。発達障害の先輩として頼りにしています。


    YouTubeは「見たい人は自由に見てね」くらいの感覚

    ──YouTubeでは夫婦喧嘩や離婚危機など、ADHD以外のこともかなり赤裸々に発信していますけど、そこへの抵抗はなかったのですか?


    ちゃんまり 意外となかったですね。逆に出すことは出すけど、「こんなの需要あるのかな?」という感覚でした。


    ダイスケ 僕は抵抗なんて1ミリもなかったです! 深~く考えると抵抗みたいなものが見つかるかもしれないですけど、いずれにしても自分たちの姿を見せて生きていこうと決心したので。そこに必要ないことは考えないようにしているのだと思います。


    ちゃんまり 最初はおしゃれな感じのものを発信していましたけど、そういうものより人間くさいもの、私たち夫婦の人となりを視聴者の皆さんは見たいのではないかと考えるようになりました。あとは、自分たちの記録をちゃんと残しておきたいと思って。最近はその意味合いが強くなってきた気がします。


    ──やはり、視聴者の良い反応を見ていると、もっと続けようという気になるのでしょうか?


    ダイスケ それよりも、やりたいことがあるうちはやり続けようという考えですね。やりたいことを映像としてそこに置いておくから、見たい人は自由に見てね、くらいの感覚です。だから、お金を稼げようが稼げまいがやり続けると思います。狙ってやっているわけではないので、正直、どこに需要があるのかいまだにわからないですね。YouTubeでは沖縄の風景やバイク、旅行のことも発信していて、一貫性がないようにも見えますが、どれも自分の中の「好き」という共通点があります。夫婦生活を発信しているのもその延長だと思います。とにかく、僕はちゃんまりのことがとても好きなので。


    「自分には無理!」と開き直ってもいい

    ──配偶者を「とても好き」と堂々と言えるのは素晴らしいですね。YouTubeや本書を目にした方は、その言葉がダイスケさんの本心であることがよくわかると思います。ところで、本書を読んでどのように感じてほしいですか? もしくはどのように活用してほしいですか?


    ダイスケ とても難しい質問ですね。おそらく、自分の中にはその具体的なイメージがないんだと思います。どう感じるかは人それぞれ、自由じゃないですか。それぞれの解釈で、自分の人生に当てはめて、活用できそうならやってもらえればいいかなと思います。


    ちゃんまり 発達障害のパートナーのいる方がこの本を読んだとしても、正直、役に立つかどうかはわからないと思います。私たちがたまたまこのやり方でうまくいっているだけかもしれませんし。ですから、この本を読んで「私もこうしなきゃいけない」「できない私が悪いんだ」と自分を追い詰めるのではなく、「自分には無理!」と開き直ってもいいと思います。あくまでも一つの事例としてこの本を捉えてほしいですね。


    苦しいと感じたら「逃げて」ほしい

    ──ちなみに、私自身は本書で書かれたコミュニケーション方法は、ADHDの人だけでなく普通の人に対しても応用できるのではないかと思いました。


    ダイスケ それはあるかもしれないですね。いい加減さを認めることもある程度は必要だと思います。今の日本の社会って、複雑に物事を考えないと生きていくのが難しい状況だと思うんですけど、複雑にすればするほど人生の難易度も上がっていきますよね。よりシンプルにしていった方が、人生を謳歌しやすいのではないでしょうか。みんなレゴブロックみたいな細かいパーツで人生を組み上げようとするんですけど、そうじゃなくて、大きいブロックで物事を考えるのも重要だと思います。


    ──確かに、何歳までにこれくらいの貯蓄がないといけないとか、キャリアアップするなら何歳までに何回転職しなければならないとか。人生を細かく組み立てることで、息苦しさを感じている人も多いと思います。


    ダイスケ いろんな強迫観念がありますよね。僕は苦しいと感じたら「逃げて」と伝えたいです。達観した意見だと反発を感じるかもしれませんが、苦しみ続けるくらいなら騙されたと思って逃げてほしい。少なくとも日本は、全部捨てても死ぬような国ではないですから。誰にとっても人生は1回きりですから、自分の人生を大事にしてほしいです。


    ちゃんまり これって夫婦生活にも言えますよね。私たちは発達障害の壁をなんとか乗り越えましたけど、できるかどうかは相手にもよると思うので。これ以上無理だと思ったらとっとと逃げてほしいと思います。まずは自分の幸せを優先してほしいですね。


    引用先:https://news.yahoo.co.jp/articles/8cc2febfc3b0840c465067624ab32eeb0fef6b0d


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