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自閉症の子どもの挙動=親のしつけ、という間違いだらけの時代に決意した、「息子の自立」を導く教育
  • 3歳で自閉症と診断されてから、現在は大手企業の正社員として立派に働く息子。発達障がいを持ちながらも豊かな人生を送る子どもの、成長を綴った教育実録をお届けします。


    3歳児健診で「自閉症」の診断

    3歳になり、二人目を授かった事から風呂なし1DKのアパートから少し広い賃貸の古い一軒家に引っ越しました。駅から遠いのでバスに乗れば、車のエンジン音に合わせ、同じように「ウー、ウー~~~」と言っているだけ、そして「ラリ、ラリ、ラリ、~~~」と言って手をひらひらさせたりしています。


    物がきちんと規則正しく並んでいないと気が済まず、靴は、すぐに並べ替え、玄関はいつも整然と靴が並べられていました。所定の位置にものが収まっていなければ気に入らず物を並べ変える。幼児なのに几帳面すぎてそばで見ていると窮屈になってしまいます。


    手が土に触れることが大嫌い。頭をシャンプーする時、子どもを抱きかかえて洗おうとするのですが、抱きかかえる事が出来ません。シャンプーを嫌がり大変でした。


    回るものにしか興味を示さず換気扇ばかり探しては、じっと見ている。夜は、寝付きが悪くなかなか寝ず、夜中の2時、3時位に突然ワハハと笑い出し、やっと寝付くという状態です。それでも朝の7時には起きてしまいます。


    3歳児健診で「自閉的傾向」があると言われました。しかし「自閉的傾向」というものが、どういう事を意味するのか、知識が全くなく、五体満足なので、「傾向」と言うのは、おとなしい性格の事を意味しているのだろうと私はのんきに解釈し、言葉もそのうち出てくるだろうと深く考えませんでした。


    知的障がいを伴っているという事など予想もしませんでした。当時は「自閉症」が、「脳の障害」であることが医師の間にも知られておらず、医師も詳しく説明出来ない状態だったと思います。


    病院のデイケア通い

    当時、自宅に訪れてきた保健婦さんに、近くにある病院の「デイケア」に行く事を薦められました。それがどういう事なのか深く考えもせず言われるがままに「デイケア」に行くと、息子と同い年の同じような無表情な子どもが5人通ってきておりました。


    デイケアでは、指導員が一人ひとり子どもに付きましたが、黙って子どもの様子を観察しノートに記録するだけで、言葉をかける事もなく、遊ばせる事もなく1日が過ぎました。子ども達は、おもちゃがあっても「遊ぶ」という事が出来ず、コミュニケーションも取れないので、どうしてもそのようにならざるを得なかったと思います。


    「違い」・原因は親の育て方の問題ではない

    興味は換気扇や扇風機など回るもの、機械物。


    親が名前を読んでも振り向きもしない、親の元に近寄っても来ない。親を親とも思わないような行動で子どもが何を考えているかわからない、子どもの気持ちが読めない状況に私は戸惑っていました。


    次男は、すぐ寝るのに対し、長男は、夜、寝付きが悪く親子で睡眠不足。長男は、睡眠不足から、畳の上にごろんと横になり、小さなミニカーを動かして、回るタイヤだけをじっと見て日がな一日過ごす。


    それなのに、一歩外に出れば、鉄砲玉のように飛び出してしまい、親の行く方向と反対に走って行ってしまい、車に飛び込んでいってしまいそうになる。目を離すことや手を離すことが出来ず、買い物時財布からお金を出す時でさえ、きつく長男の手を握り、離すことが出来ませんでした。


    ある日、ちょっと手を離したすきに、神隠しのようにいなくなってしまいました。名前を呼んでも、親の呼ぶ声の方に戻ってくるという事をしないので、何処に行ってしまったか、全く見当もつきません。警察に連絡し、パトカーに乗りおまわりさんと一緒に探していたら、近所の他人の家の2階に上がり込んで泣きもせずポカンとしていました。


    また、公園に連れて行くと、あっという間に走って行ったかと思うと、全く見ず知らずの人達が広げていたお弁当の一つを食べてしまいました。向こうの人も開いた口がふさがらないという状態でした。躾などあったものではありません。注意しても理解せず、母親にも人間にも興味がなく、こちらの言っている事は全く理解せず、唸るだけの息子は、人間世界からかけ離れたオオカミに育てられたような子どもでした。


    このように、自閉症は、幼児期の頃から、言葉だけでなく、運動面での発達においても、すべての面において、健常な子どもとこんなにも違うのです。


    決して、親の育て方の問題や砂糖の取りすぎ、テレビの見せすぎが原因で、自閉症になったのではないと思いました。


    自ら知恵をつける事は難しいのでは?

    興味を持つのは小さなミニカーだけ、それ以外のおもちゃに興味を示すという事もなく、「遊ぶ」という事が出来ない。「子どもからのアプローチがない」「真似をしない」「目を合わせない」「指差ししない」「這い這いしない」など次男との大きな違い。この状態のまま何もしないで自由にさせていて本当に良いのだろうか? 長男は、「言葉」があるという事さえ理解していないようで「言葉」を聞くどころか、あらぬ方向を見たままです。何も進歩がありません。


    次男との違いから、長男は、自ら知恵を吸収していく事は難しいのではないかと思い始めました。ならば、母親の私の方から、あの子の世界を広げ、楽しい遊びを教え、遊びを通して知恵をつけさせていく方法が必要ではないかと私は考え始めました。


    当時は、自閉症は、親の責任だという考えが浸透していたので、近所の人から宗教団体に誘われるなど、周りから追い詰められていました。子どもの心が読めず戸惑う毎日、子どもの幸せについて本当に悩みました。どう考えたら子どもにとって「幸せ」なことなのだろうか?


    子どもの幸せとは

    子どもの幸せとは何なのか?


    私が、障がいを持つ子どもの教育を考えた時に、突き当たった問題がこの問題でした。


    この子が幸せに生きていけるにはどうしたら良いのだろうか?


    当時、自閉症の子どもに対しての教育方針が前述のように「子どもの行動を全て受け入れ、躾をせずに、子どものなすがまま自由気ままにし、子ども自ら行動する事を待ち、教育していく事が子どもにとって良い」と言われていましたが、私は、この考え方に素直に納得がいきませんでした。


    次男には、禁止し、長男には許す。そんな教育が通用するのか? 障がいの子の突飛な行動を全て受け入れ、温かく見守る事が子どもの幸せにつながるのだろうか?


    この子は、私達にとって何でもないような世界、普通に生活していれば当然ある全ての音に対しても、パニックを起こすほど嫌な感覚として受け取っている。車に対して真正面から飛び込んで行ってしまい、危険である事も何もわかっていない。親を親とも認識していない。それら、数々のおかしな行動は、果たして子どもが好き好んで、そのような行動をとっているのでしょうか? 私は疑問を持ちました。


    これらの行動は、障がいによる行動では? 何かが違う。子どもは、遊びの楽しさを感じられないのは、何かが欠けている。このような宇宙人のような感覚しか持たない息子も、私達と同じ世界の中に生きて行かなければならない。これからの長い人生、どの様にして生きていく事がこの子にとって幸せなのだろうか?


    私達の生きている世の中には、言語があり、楽しい、悲しいという感情の世界があり、美しいという情緒世界があり、もっともっと広い世界に生きています。それなのに。


    長男もこの世界の中の一員であり、感情豊かな人間になって、この素晴らしい世界を楽しんで生きていってもらいたい。しかし、現在の長男の世界観は狭く、興味を持つ意欲もないのでこのままの感覚を維持し成長し成人になっても、本人にとっても、生きづらい世の中になり感覚的に息苦しさを感じてしまうのではないかと思いました。


    あるがままを受け入れる世界とは、温室で育てるようにして、一般社会と分離して生活する事に繋がらないだろうか?


    この子の困った行動を親だったら受け入れて許す事が出来ても、親亡き後、他人は受け入れる事は難しいだろう。子どもの行動を許し、いつまでも盾となって守ってやるわけにはいかない。


    親がいなくなって世の中に放り出された時、一人でどんな世の中でも対処し、対応出来る力をつけておいてあげる事が、この子の幸せにつながり、親の役目ではないだろうか?


    何とかして感情豊かで情緒のあるこの世の中の生活を受け入れられるようになり、一般社会の中で、普通に生活出来るようにしてあげなければと考えました。


    これが、子どもの幸せに対する私の考え方でした。そして、教育のスタートでした。


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    よしえつ さえ


    1948年、長野県伊那市生まれ。東京都在住。自閉症の教育法が定まらなかった時代、世界に名だたる小児神経学の医師や優秀な先生方と巡り合う。その先生方の指導を家庭生活の中で実践してきた結果、知的障がいがあり、言語能力2歳レベルしかない自閉症の息子を大手企業の正社員となるまでに成長させることができた。 現在はその教育経験を活かし、発達障がい者の教育指導を行っている。


    引用先:https://news.yahoo.co.jp/articles/d4c6c3fcfead502ffefabc77d36ae0b9fa0c75e2


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