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「ひきこもり」兄弟姉妹からの相談激増 「ひきこもる弟が気がかりで未婚」53歳男性の決断〈AERA〉
2019.08.22
ひきこもりが長期にわたり、高齢化した親も子も孤立と不安に襲われる「8050問題」。もちろん、きょうだいたちも例外ではない。ノンフィクションライター・古川雅子氏が現状を取材した。
出口の見えないまま積み残された問題が、きょうだいにのしかかるケースが増えている。
都内の会社員女性(45)には、20年間顔も見ていない弟(34)がいる。10代からひきこもる弟は、今も実家に住む。だが、9年前、父(76)は闘病中の母と実家を出て、今もアパート暮らしだ。きっかけは弟の暴力だった。
「私は母親との折り合いが悪く、20歳で家を出てしばらく家族と音信不通でした。母が末期がんになって関わらざるを得なくなり、その時初めて常態化していた弟の暴力を知らされたんです」
最初の暴力は妹に対してで、妹は実家を出た。次のターゲットは母親。すでに母は体調を崩していたが、病院嫌いで入院を拒んだ。弟の母への暴力と母の容体悪化に困り果てた父が、女性にSOSを送ったのだ。
母の死後、弟と別居を続ける父が郵便物の受け取りで実家に帰った際、家のメンテナンスをしたことが引き金になり、弟から殴る蹴るの暴行を受けた。それを機に、父は弟に毎月の生活費を渡すのをやめた。
以来、出入りのなくなった実家にひきこもったままの弟は、生きているのかさえわからない。持ち家で家賃はかからず、光熱費は父親の口座から引き落とされ、最低限のライフラインは保っている。だが、父は直接的には一切関わろうとしなくなった。
「せめて生存確認ができれば」と望みながらも問題を先送りする父の代わりに、女性が行政の相談窓口を訪ねても、きょうだいという立場では不審がられ、門前払いされることもあった。
「親と違って、どの距離感で関わっていいのかがわからない」
父の死後、弟に向き合ってサポートするのは、経済的にも精神的にもきょうだいでは難しいと感じる。相続の不安もある。
「20年も会っていない相手と、対話が成立するとは考えにくい」
全国組織の家族会「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の本部事務局長の上田理香さんは、「兄弟姉妹からの相談が顕著に増えている」という。同会が行った生活困窮者相談窓口への調査(2017年)によると、40代に比べ50代では「本人の父母」「本人」の相談が減り、兄弟姉妹が3倍に増えた。
神奈川県に住む男性(53)は、こう話す。
「大学を出てから就職せず、ひきこもりがちな弟(49)のことが気がかりで、なかなか自分の幸せに踏み出せなかった」
30年近く弟に仕送りを続けてきた郷里の母は、88歳。年金暮らしで貯金を取り崩し、実家のリフォームにも手をつけられない。仕送りは「もう限界に近い」と母親はぼやく。母を助けようと、送金を一部肩代わりしてきたが、弟が50歳になる今年度末で仕送りを終えると告げた。
これを機に、男性は「これからは自分の将来についても考えていこう」と考え始めた。知人から見合いを持ちかけられ、女性との交際にも踏み出した。
KHJの上田さんは言う。
「ひきこもり当事者のきょうだいには、自分が幸せになったり、うまくいったりすることに引け目を感じるという人もいます。きょうだいも、家族の困難を自分だけで背負わず、第三者の力を借りながら、自分の人生も大事にしてほしい」
(ノンフィクションライター・古川雅子)
※AERA 2019年8月26日号
引用先:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190821-00000019-sasahi-soci
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