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引きこもり支援が辿り着いた「恥を感じさせない社会」という当然の指針

2019.08.22

● 京都の実践者研究会が出した 「8050時代」の新たな指針

 「助けを求めることが当たり前の社会を」という(引きこもる)当事者の視点から、「自らの生き方を追求し、支援を求めるのは権利」であり、「当事者を真ん中に置いた地域の仕組みづくりが基本」だとする提言が、京都府の生活困窮の実践者の研究会で取りまとめられた。

 提言は、8月に開かれた公開セミナーでも紹介されるなど、地域が直面している「8050時代」の新たな指針になるものとして注目されている。

 この提言をまとめたのは、京都府社会福祉協議会を事務局に、府内の専門家や現場の福祉担当者らでつくる「生活困窮社会における地域づくり研究会」(座長・吉永純・花園大学社会福祉学部教授)。2015年の生活困窮者自立支援法の施行による支援の見直しも見据え、法の趣旨を活かした地域づくりを進めるため、研究会はオープンで開催し、当事者の発言や地域の実践報告も交えながら、参加者と一緒に2年にわたり議論してきた。

 困りごとを抱えている人が自ら支援を求めるには、勇気が必要だ。「どこに相談すればいいのかわからない」という声は、本人や家族の間でも多く、「支援制度やサービスの利用の仕方を見えるようにする」ことが大切になる。

 同研究会では、生活困窮者が長期の失業、いじめ、DV、一見してわかりにくい障害や病気など、複合的な課題を抱え、「生活の不安にさらされていることが多い」と指摘。それでいて、困窮の原因が「自己責任」と考えさせられがちなため、支援を求めることを「恥」や「お世話になる」といった意識になり、「知られたくない」という思いから交流が希薄になり、「支援制度や施策の情報から疎外されている」としている。

 また生活困窮者は、誰かに相談したことがあっても、そのときに問題が解決しなかったことから、相談支援に不信感を持っている場合もある。この結果、「自分の人生をあきらめる」ことにつながっていく。このような生活困窮者は、「相談相手が身近にいない」「支える人とつながらない」場合、孤立した状況に置かれているのが実情だという。

こうしたことから、「誰もが支援を必要とする側にも提供する側にも立ち得る」という共生社会の理念を前提に、「当事者が自己の生き方を追求し、支援を求めることは権利であることの理解を進めることが必要だ」と訴える。

● 自己肯定感を持てる 地域づくりへの働きかけ

 たとえば、気軽に生活相談できて、生活保護相談・申請がしやすい仕組みづくりや、スマホでの生活困窮情報のサイトやアプリの開発、ネットをしていない人たちへの情報提供手段として、コンビニ、スーパー、駅、図書館などのパブリックスペースにもチラシやガイドブックを配布するといった、自分らしい生き方を選択できる社会の仕組み、地域づくりの必要性を挙げる。

 そして、引きこもり状態などの同じ経験を持つ仲間との交流や情報交換ができる場、保護者・家族同士で話すことができる場、誰もが役割を持って活躍できる場づくりが、自己肯定感を持てるような地域づくりにつながるとしている。

 その他にも、地域住民から当事者に温かい言葉かけ、優しさのある気遣いの積み重ねができるような「地域の力」を高めること、人が生活困窮に陥り、心身にダメージを受けたとき、生活保護制度は「もう1回生きる選択」に不可欠であり、健康的で安心できる暮らしを取り戻すことが展望できる重要な制度であること、誰もが人として生命・健康が保障され、医療を受けることができる「無料低額診療制度」、24時間体制で当事者の住まいの確保や生活を支える福祉サービス、などの重要性が報告された。

 さらに、現場の実践報告からの学びとして、京丹後市の「出張相談」や、長岡京市の「相談記録の共有化と定期的な支援会議の開催」、母子生活支援施設の「地域からの相談に応じるコンシェルジュ」など、京都で行われている優れた実践広げることが解決の糸口になり、これらをシステム化することが研究会に求められていると説明する。

 一方、行政の役割として、滋賀県野洲市の「くらし支え合い条例」、野洲市、舞鶴市、京丹後市の「生活困窮者への税の徴収猶予減免」と、国民健康保険証の交付、京都市の「地域あんしん支援員事業」などの役割を期待する。

 その上で、ネットワークによる生活困窮者発見と支援の仕組みを構築するためのポイントを次のように提言する。

1つ目は、生活困窮者の発見と情報提供、専門相談窓口につなぐ役割を担う「暮らしの情報窓口(仮称)」と、暮らしに関わる機関や団体でプラットホームを構築する「暮らしの相談窓口(仮称)」の開設や、連携、人材養成、社会資源の掘り起こしなどの地域づくりの中核的ネットワークの形成。2つ目が、生活困窮に関わる実践交流と研究の交流の場による調査研究の継続。そして3つ目が、市町村の地域福祉計画の中に、こうしたネットワーク化と相談支援の仕組みづくりを明記させることだ。

 地域の実践者向けに開かれたセミナーの場では、生活支援担当者から「家計改善のための支援をしていく中で、世帯の抱えている課題が見えてくる。そこでできたつながりを起点に、地域との関係づくりに再構築できるのでは」との報告もあった。

● 恥ではなく、困ったことは 相談先に繋げられる仕組みを

 また、「8050問題に遭遇したが、現時点では困窮ではないときに、どんな予防的な支援が可能なのか」「引きこもっている方が居場所などで前向きになってきたとき、どう原因をアセスメントして、次の支援につなげればいいのか」といった問いを受け、議論も行われた。

 吉永座長は、「当事者の声から始めなければわからない。親の立場からすると、焦って心配が先にあるので、子の気持ちに立てなくなる。困ったことは、恥とかではなく、早いうちに課題を解決できる見通しが立てられるよう、相談先につながる仕組みを一歩一歩進めたい」と、従来の支援者主体の支援施策構築とは違う、共生社会にふさわしい福祉の現場からの当事者本位の方向性を打ち出した報告となった。

引用先:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190822-00212489-diamond-soci

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