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ひきこもりからの脱出「5つの作戦」―今ひきこもりの君へおくる踏み出す勇気

2019.08.06

元ひきこもりで、自らのアスペルガーを克服し、立ち直った発達障害カウンセラー・吉濱ツトムさんは、2000人以上ものひきこもり者を治療してきた。本稿で、自身の経験をふまえ“ひきこもり脱出”への極意を伝えてくれた。(吉濱ツトム著『今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気』より)

ひきこもり脱出への生存戦略

 人生100年時代。特に最先端医療の進歩では長寿の可能性が高まっています。

「死ねない時代の到来」を予言する識者もいます。とはいえ、永遠の生命が私たちにあるわけではなく、まだ私たちの世代では40代~50代は人生の後半戦でしょう。

 要は、残り50年という時間から逆算して、「社会参加の段取り」を考えなければなりません。

 ここで改めて本年3月に内閣府から公表された「生活状況に関する調査報告書」を見てみましょう。

 多くの中高年のひきこもり者61万3000人(40~64歳)のうち、正社員として働いた経験が73・9%で約45万3000人。契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなどの非正規雇用も39・1%で約24万人に上ります(100%を超えているのは複数回答、つまり正規も非正規も経験している層がいるため)。

 中高年のひきこもりの多くが、社会参加の第一歩は正社員からはじまっているのではないでしょうか。
 ただ、そこで現実的にドロップアウトした事実があるということではないでしょうか。つまり、「会社という組織で務まらなかった」という厳しい現実があったと読み取れるのです。
 本来ならば、ドロップアウトする以前に発達障害についての知見、認知があったら対策を立て、改善でき、会社を辞めずに済んだかもしれません。
 特に日本人に5%くらいはいると思われる「隠れアスペルガー(グレーゾーン)」の人であれば、「0か100か」的な極端な思考を好みます。

 真性アスペルガーだと「0か1か」、それこそ「生きるべきか死ぬべきか」的な狭隘な認知をします。劣等感がめちゃくちゃ強いために他の選択肢が見えてきません。僕も昔はそうでした。でも、その環境、具体的には職種、仕事に向いていなかっただけではないかという見極めがなかっただけかもしれないのです。

「ひきこもりのきっかけ」は何だったのか。内閣府の同調査では、以下の回答が報告されています。

退職したこと 36・17%
人間関係がうまくいかなかった 21・8%
職場になじめなかった 19・1%
就職活動がうまくいかなかった 6・4%

ここから、中高年のひきこもりの実像が見えてきます。箇条書きにします。

自分の適性を知らず、就職活動に失敗(新卒時)
   ↓
世間体を気にして入社した結果、間違った環境を選んだ
   ↓
特に興味もなく、好きでもない仕事をしていた
   ↓
やる気がなく、失敗を重ね続けた
   ↓
仕事仲間となじめず、いつの間にか孤立した
   ↓
次第に会社が苦痛になり、退職した
   ↓
そして、ひきこもった(結果)

 ということではないでしょうか。

 ならば、その場合の「ひきこもりからの脱出」は、いたってシンプルです。

 スタート地点まで〝巻き戻し〟をし、再スタートから別コースをたどればいいのです。つまり、こういうことです。

就職活動の失敗と向き合い、自分の適性を知る(再スタート)
   ↓
世間体は関係なく他人とを比較せず、自分に合った環境を探す
   ↓
「これなら続けられる」という業務を見つける
   ↓
自分にとっての得意分野で「小さな成功体験」を少しずつ重ねる
   ↓
一緒に働く仲間ともうまくやっていけそうな気がする
   ↓
仕事は確かに大変なこともあるが、やりがいも感じる
   ↓
持続的に働くことができる(結果)

 ひきこもり脱出の生存戦略とは、この認知ができることです。

 それができれば、具体的な行動が可能になり、前向きな社会復帰へとつながっていくのです。そこには、あなたという「一個人」としての立場が、会社員としての立場よりも大きく存在しているのです。

 僕の仕事は、来談者と向き合い本人に適する戦略を立てていくことですから、あなたの意向と目標=戦略が決まれば、次は戦術(どうすれば達成できるかという作戦)に入っていきます。その作戦のお話をしていきましょう。

ひきこもりからの脱出「5つの作戦」

 作戦に入る前に、僕には設定している「やらないルール」があることを来談者にお伝えしています。それは、

  個人セッションする上で、来談者の「内面(心)」は見ない。

 精神分析医のような「心の診断」をしない。

「心を見ない」というと誤解されそうですが、人格を無視するという意味ではなく、適性を見ていくこと、就労に導くことに重きを置いているという意味です。心が行動を決めるのではなく、行動や環境が心を変えていくという行動療法に基づく手法です。

 セッションの目的は、生きづらさの元凶となる発達障害を認知してもらい、社会復帰できる体力づくりの支援、適性を見ながら就労支援をすること。
 ですから、僕はそのための環境変化のプログラムを提案します。即効性重視です。

 まず、ひきこもりの原因が発達障害にあるのかどうかを見極めていきます。

 発達障害ならば、ADHD(注意欠陥・多動性障害)なのか、ASD(自閉症スペクトラム障害、特にアスペルガー症候群)なのか、LD(学習障害)も含まれているのか。また、アスペルガーならば、真性かグレーゾーンなのか、などの障害の種類や脳の特性を判断しながらセッションを開始します。

 もちろん、セッション前には医療機関で発達障害の診断テストや身体の状態を調べてもらいます(僕は医師ではありませんから「診断」をしてはいけないのです)。

 あまりにも症状が重い場合は、ご家族やご兄弟などのサポートを要請します。

 作戦を実行し、課題を遂行してもらうためには、周囲からの「環境圧力」がなければ効果が得られないことが多々あるからです。

 僕のセッションでは、基本的に以下の「5つの作戦」を行ってもらいます。

  (1)代謝に基づいた健康法(糖質制限・栄養療法・有酸素運動)
  (2)環境を変えて行動をうながす(環境圧力)
  (3)行動が変われば心が変わる(行動療法)
  (4)ものごとを中立に受け止める(認知療法)
  (5)才能を発揮するための習慣化(ルール化)

 実はこの5つの作戦とは、僕がひきこもりから脱け出すことに成功したという「5つの改善法」のことです。

 ひきこもりの苦しさを経験し、そこからなんとか脱出したいともがき、試行錯誤した結果、見出したのがこの5つの改善法です。です。

 おかげで僕は、自分の特性「発達障害」との付き合い方もわかりました。

 そして26歳で社会復帰を果たしました。

 僕は苦しみから解放され、ひきこもりから脱出し、人生を取り戻したのです。

 こうしたことから、僕はそれ以後、たまたま同じ悩みで苦しんでいる人に出会った時に、「僕はこれで脱出した。だから試してみよう」と5つの改善方法を伝えてきました。

 もちろん当時、僕はこれが仕事につながっていくなどとはまったく考えていませんでした。単純に自分にとって効果があったから勧めてみただけなのです。

 でも、それがさまざまな人に効果があったようで、評判が口コミで広がり、いつしか僕の生業となり、現在に至っているというわけです。

 個性はさまざま、適性の見つけ方もさまざまですが、この「5つの作戦=トレーニング法」はどの方にもあてはまり、効果が得られます。

「身体の改善」、「行動の改善」が心の安定を生み、安定した心がまた、身体と行動へと好循環をもたらすという流れを、身をもって体験してもらうのが狙いです。

 ぜひ、実践していただきたく思います。

引用先:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190806-00010502-besttimes-soci

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