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全国の自治体に埋もれた「引きこもり実態調査」の知られざる中身

2019.08.08

● 「ひきこもり実態調査」の結果は 多くの自治体で公表されていない

 全国の自治体で「引きこもり状態」にある人の実態調査が進んでいる。

 厚労省は8月2日、全国の自治体が過去10年間に実施した『ひきこもり実態調査』の調査状況を、初めて取りまとめた。

 それによると、全国の都道府県から市町村に至るまでの全自治体数1788ヵ所の中で、実態調査を行っていたのは128自治体で全体の7%だったが、そのうち調査結果を公表していたのは34%(43自治体)しかなく、66%の85自治体では未公表だったことが明らかになった。

 実施自治体数の内訳を見てみると、47都道府県では約半数の23府県で調査を行っていることがわかった。また政令指定都市でも、全体(20市)の半数近い9市で調査を実施していた。

 一方で、一般の自治体を見てみると、全国795ヵ所ある市・区のうち実施していたのは64市・区で、全体に占める割合は8%。全国926町村においてはわずか3%(32町村)に過ぎなかった。

 調査方法については、実施した128自治体のうち、民生委員・児童委員を通じたアンケートや聞き取りが83自治体と最も多く、全体の65%に上った。保健師・NPO・事業者経由でアンケートや聞き取りを行った方法が29自治体(23%)、無作為抽出によるアンケートが22自治体(17%)、全戸調査は5自治体(4%)だった。

 調査の算定方法や調査対象である「ひきこもり状態にある者」の定義は、自治体によってまちまちだ。

 「8050親子」の衰弱死事件などがあり、昨年8月に調査を行った札幌市では、市内の15~64歳の1万人を無作為抽出。調査票を郵送により配布し、郵送で回収する方法で行い、有効回収数は3903人だった。

 定義は、内閣府に準じたものながら、きっかけが「統合失調症または身体的な病気と回答した者」「専業主婦・主夫、家事手伝い」といったケースを除外している。

その結果、「ひきこもり群」の該当者数は、15~39歳が18人(出現率1.25%)、40~59歳が28人(同1.45%)、60~64歳が21人(同4.09%)に上り、年齢層の出現率から約2万人と推計した。

 長野県では今年2月~4月にかけて、民生委員・児童委員5040人に対するアンケート調査を実施。有効回収数は4505人で、89.4%と有効回収率が高かった。

 定義は、「おおむね15~64歳」で、「社会参加ができない状態であるが、時々買い物などで外出することがある者」であって、かつ「在宅での訪問診療、介護保険や障がい福祉サービス等を受給している者を除く」として、該当者数は2290人に上った。

● 事件で話題になった川崎市は? 自治体で異なる「引きこもり」の定義

 昨今、殺傷事件との因果関係の有無で議論になった神奈川県川崎市は、昨年12月から今年1月にかけて、区役所関係部局及び医療、福祉、教育、家族会などの関係機関・団体の678ヵ所に対応事例の報告を求め、210ヵ所から有効回収している。

 定義は、「15歳(中学卒業後)~64歳で、3ヵ月以上、学校や仕事などに行っておらず、家族や援助者・医療者以外の人との交流がなく、主に自宅で過ごしている者」としている。該当者数は445人だった。ただし、「1機関・団体当たり10人以内」とした。

 8月26日に「全国ひきこもり支援基礎自治体サミット」を岡山県立大学で開催する岡山県総社市では、2016年1月~9月、民生委員・児童委員161人と福祉委員572人に聞き取り調査を行った。定義も「義務教育終了後であって、おおむね6ヵ月以上、社会から孤立した状態にある」と広がりを持たせることでリスクを見つけやすくし、該当者は207人だった。

 こうした調査結果の一覧を見ると、実際には実態調査を行っていても、「ひきこもり」と定義付けながら、39歳までの偏った調査しか行っていない自治体も散見され、現場での実態把握がまだ不十分であることもうかがえる。

また、66%の自治体が調査結果を非公表にしてきたのは、該当者が発見され、課題は浮き彫りになったものの、どう「ひきこもり支援」につなげて展開すればいいのか、具体的な施策がまだ見えていないという実情があるのかもしれない。

● 埋もれた調査結果に 施策として活用する重要性

 今回の実態調査の取りまとめについて、厚労省社会援護局地域福祉課の担当者は、こうコメントする。

 「都道府県では約半数の自治体が何らかの調査を実施していて、これまでも各自治体が『ひきこもり』に問題意識を持ち、施策の実施や検討の手掛かりにしていたものと推察される。『経済財政運営と改革の基本方針2019』(骨太の方針)の『就職氷河期世代支援プログラム』では、『各都道府県等において、(支援)対象者の実態やニーズを明らかにし、その結果に基づき必要な人に支援が届く体制を構築することを目指す』とされていることから、これまでひきこもり調査を実施したことがない自治体おいては、今回の取りまとめも参考にしながら、支援体制を構築する前提として、支援対象者の実態やニーズの把握など積極的な検討をお願いしたい」

 全国に地域家族会を持つ「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」や「引きこもり当事者」グループなどは、このように埋もれた調査結果を有効に施策として活用するためにも、各自治体の支援協議会の中に委員として入り、地域共生の支援の仕組みづくりに意見を反映できるよう要望している。

引用先:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190808-00211196-diamond-soci

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