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やる気のある人の出鼻をくじき追いつめる 引きこもり支援“たらい回し”の現実

2014.04.03

深刻な状況に陥っているにもかかわらず、公的な目的のハードルに自らを合わせられないため、支援が受けられずにいる人は少なくない。

 そのため、税金が投入されている公的な支援であっても、支援団体等の設計思想に合わなくなって、離脱していく人たちがいる。

 こうして「もうこれ以上、傷つけられたくない」からと、支援の仕組みから一旦こぼれ落ちると、長期にわたる引きこもり状態に入って、地域に埋もれていった人たちを筆者は何人も知っている。

なんの力にもなってくれない役所、支援団体
30歳代の男性が受けた“たらい回し”

「自分がうつ病になったのは、会社に行く以外は引きこもっていて、ストレスのはけ口が皆無だったからだと思います」

 そう語る30歳代の男性は、高校時代から対人恐怖や赤面恐怖に悩み、会社に入社するものの、うつ病と言われて数年で退職。高校時代から含めると、ずっと長い間、引きこもり状態が続いているという。

 また、親に状況を訴えても理解はなく、家の外には、どこにも相談しようとしなかった。

 そこで、男性は退職後、役所が開設する「ひきこもりサポートネット」に自ら相談。そのサポートネットの担当者に紹介され、福祉課や支援団体などに連絡した。しかし、「たらい回しや冷たい対応、高額な請求等で、結局、何の力にもなってくれませんでした」と明かす。

 その後、いろいろ調べたところ、「ひきこもり地域支援センター」という国の相談機関があることを知った。

 そこで、同センターに行って状況を相談。紹介された病院に通い始め、「外出が怖い」「食欲がない」「眠れない」「元気が出ない」などの症状を訴えたものの、こんな対応を受けた。

「病院の先生に処方ミスをされ、SOSの電話も煙たがられるようになりました」。

さらに、男性が(処方ミスに対して)「私は食欲がないとしか聞いてない」と説明する医師の態度に怒り、同センターに連絡して抗議すると、

「私たちは、あの先生を提案しただけ」
「私たちは、精神疾患のない『社会的ひきこもり』を対象としている」

 と釈明されたという。

「誰が好き好んで孤独に引きこもるのか。何らかの悩みや事情があるからではないのか。 うわべだけの支援には、うんざりです。毎日、自分を精神的に責めているのに、崖から背中を押された気分になるのではないでしょうか」

 そう男性は、訴える。

「死のうと思いました。約4日間飲まず、食わず、眠れず、ひたすら横になりいろんなことを考えました。そして、やはり死のうと思いました」

 もちろん、役所の担当者や支援者、医療関係者の中にも、当事者の抱える問題に向き合い、本気で取り組んでいる人たちがいる。その一方で、本気ではない「形だけの支援」が、せっかく前向きになって、自分から変わらなければいけないからと思って赴いてきたような、やる気のある当事者の出鼻をくじき、つらい思いをさせているという構図がある。

 しかし、男性は、踏みとどまった。

「ふと、おばあちゃんの顔、親戚のおじさんの顔が浮かんだんです。本当に心配してくれているのに、僕の人生について泣いてくれたのに、それはいけない、と踏ん張りました」

 男性は、もう一度、最後の力を振り絞り、自分で調べた病院に「地面を這う気持ちで」向かい、これまでの経緯を説明し、何とか現在は回復の傾向にあると自覚している。

「本当に、情のある支援に辿り着けるのは、経験上、とても困難です。私は、いまだに辿り着けていません」

「そんな態度では働けない」「社会性がない」
暗澹たる気持ちにさせられた20歳代男性

 20歳代の「発達障害」という男性は、これまで障害者就業・生活支援センターや発達障害者支援センター、地域若者サポートステーションなどの公的支援機関に通い続けてきた。しかし、現在は「何の支援もなく、どこにも行く所もなく、実質引きこもり状態で生活している」状況だ。

「1年前までは就労支援を受けており、障害者雇用に前向きな企業との面接の話も頂くことができたのですが、支援機関の就労カウンセラーから“そんな態度では働くことはできない”という発言を受け、精神的に参ってしまい、通い続けることができなくなってしまいました」

 男性は「働きたい」「社会に参加したい」と思っても、現在受けられる支援は、障害ゆえのハンディキャップに応じたニーズから乖離したものが多く、その結果、引きこもり状態が続いてしまっていると明かす。

「どこかに、とっかかりはないものかと足掻けば足掻くほど、暗澹たる気持ちになる。社会の間隙から這い上がることの難しさに日々苦悶している状態です」

 社会参加や就労への意思が強ければ強いほど、そのことが不安を増幅させ、「仕事にも社会にもつながれない」現状に苦しむ人たちは、少なくない。

 男性は、ある支援団体に通っているとき、こんな体験をした。

「就労支援を受けているときには、障害ゆえの特性を『社会性がない』と叱られたり、いままでやろうとしてもできないことを支援として行われることが多々ありました。その都度、それに対して、私から異議を唱えてはみたのですが、『発達障害という認知の偏りを持つ特性を持っているから、そんな風に被害的に受け取るんだよ』と言われることが多く、会話が成立することがありませんでした」

 男性は、本当にそうなのだろうかと疑問に感じつつ、いまだにどう受け止めていいのか、自分でもわからずにいる。

「4月に入っても、まだたらい回しは終わっていない状態です。こちらから働きかけても、連絡もなく、支援のための支援さえないようです」

男性は、こう問いかける。

「蜘蛛の糸は、どこにもないのだと痛感しております。でも、公的な支援機関でさえ、働けないと言われた自分が、これから先、つながれる場所はありますか?」

 長年、引きこもり状態にある女性からは、こんな話を聞いた。

 彼女が住む最寄りの地区の地域若者サポートステーション(サポステ)に、勇気を出して相談に行ったときのことだ。最初は、スタッフから「よく来たね」と歓迎され、丁寧に対応された。

 ところが、何度か通ううちに、だんだんとスタッフの様子が変わってきたという。

「なんで求人に応募しようとしないのか?」「なんで就労支援のカリキュラムを受けようとしないのか?」

 スタッフは、明らかにイラつくような態度で彼女に接するようになり、やがて連絡が来ることもなくなった。

 そこは、就労より前の段階にある、人間関係の苦手な彼女が求めていた“支援の場”ではなかったのだ。

 サポステの場合、NPOなどの支援団体が国から委託を受けて運営している。中には、当事者の気持ちに寄り添って丁寧に向き合っているところもある。しかし、その一方で、「費用対効果が見えない」というサポステへの批判が高まる中、国の課した数的なノルマに追われ、就労実績を上げようと必死になっているところもあって、やっとの思いで訪れたような引きこもり当事者との間で、ますますミスマッチが生じている現実もあるのかもしれない。

 当事者や親の高年齢化、生活困窮化が進む中で、社会につながれずに救済を求めている人や、助けを求めていなくても深刻な状況に迫られているような人たちが、どうすればよりよい福祉や支援に辿り着けるのか。消費税をアップさせるのもいいが、年齢や状況に差別されることなく、すべての人たちが公平に支援を受けられるような福祉の仕組みをこの際、もう一度、作り直すべき時にきている。

引用先 ダイヤモンドオンライン
http://diamond.jp/articles/-/51083

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