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引きこもり問題 周囲に相談できない日本の社会構造が影響か

2019.06.12

 元農林水産事務次官、熊沢英昭容疑者(76)による44歳の引きこもりの息子殺害事件は、“罪は罪”と指弾する声とともに、父親としての苦しみに共感する声も聞こえてくる。多くの人々がこの事件に底知れぬ不安を掻き立てられるのは、決して「他人事」とは受け取れないからだ。

【写真】殺傷事件を起こした岩崎隆一容疑者の自宅
 内閣府は引きこもりを「自室や家からほとんど出ない状態に加えて、趣味の用事や近所のコンビニ以外に外出しない状態が6か月以上続く場合」と定義する。同府の2018年の調査によると、自宅に半年以上引きこもっている40~64歳は全国に61万3000人。うち76.6%が男性だ。
 総務省統計局の調査(2016年)によれば、親と同居する高年未婚者(45~54歳)は約160万人で、この人数は過去35年でおよそ8倍に急増したとされる。この高年未婚者は、将来的に失職などで収入が絶たれた場合、親に頼るほかなくなり、引きこもりになるリスクをはらんでいるとも言える。
「働かない」「結婚しない」「家から出ない」人が増加する中、こうした子供を抱える親は日々、「この先自分たちがいなくなったら、この子はどうやって生活するのか」と思い悩む。
◆「身内で解決したい」けれど
 大企業に勤める50代のA氏の長女は東大法学部を卒業後、司法試験合格を目指して自宅で司法浪人をしたが合格せず、30代になった今もそのまま実家暮らしを続けている。
「東大法学部を出ると大半が司法試験や国家公務員試験にチャレンジしますが、全員が合格するわけではありません。男性は司法浪人して20代後半になっても就職先が見つかるケースも多いですが、女性は採用する企業が実に少なく、娘は実家で暮らしながら週2回アルバイトをしています。娘にどう声をかけていいかわからず、なんだか身内の恥をさらすようで周りに相談することもできません」
 見逃せないのは、A氏のように「誰にも相談しない」親が多いことだ。特にエリート層ほど周りを頼れず孤立する傾向がある。
熊沢容疑者に関しても、役人時代はもとより、付き合いの長い近隣の知人にも相談していた形跡はない。知人はこう話す。
「(熊沢容疑者は)奥様といつも2人で買い物に出かけていましたよ。にこにこして感じが良く、本当に穏やかで素敵な夫婦だと思っていました。10年以上の付き合いになりますが、息子さんがいることも知らなかったし、見たこともありませんでした」
 引きこもりを支援するNPO法人『ニュースタート事務局』理事長の二神能基(ふたがみ・のうき)氏は、「周囲に相談できないのには日本の社会構造が影響している」と言う。
「日本人には“家族の問題は家族で解決すべき”との考え方が根強く、家族の問題を他人に相談してはダメだと思ってしまう人が多いのです」
 追い込まれた親たちは誰にも相談できず、周囲に気取られまいと鬱屈した思いを隠しながら暮らす。
 元開業医の妻Bさん(78)の息子(53)は大学卒業後、一度も定職についていない。夫が3年前に亡くなったため、相続税や維持費の関係で広大な自宅を売却して、手狭なマンションでBさんと息子は暮らし始めた。
「生活は昔のように楽ではないのに息子に働く気はなく、家でゲームをして過ごしていまだにお金をせびられます。今は狭いマンションなので息子と顔を合わさざるを得ず、ストレスで息が詰まります。
 包丁やナイフは人目につかないようにして、使う時は引き出しの奥から取り出します。息子が凶行に使う怖れがあるからではなく、私が衝動的に使うことが怖いからです。大げさでなく、あの元次官には同情してしまっているんです」
 もちろん熊沢容疑者の犯罪は感情論で容認されるものではない。だが今の日本で、同じような悲劇がいつ繰り返されてもおかしくないことも確かである。

引用先:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190612-00000002-pseven-soci

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