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必ずしも「発達障害=アスペルガー」ではない! “大人のADHD”の人が直面する理解されない辛さ
2014.09.25
週刊ダイヤモンドの今週号に掲載された、『増加する大人の発達障害~職場はどう向き合うべきか~』という16ページにわたる大特集の取材執筆に携わった。
おそらく活字週刊誌で、雇用の現場に向かって、「大人の発達障害」への理解と対応の入門編を、特集としてこれだけ大きく取り上げたのは、初めての試みだったのではないか。
当連載でも、これまで「大人の発達障害」の話題をたびたび掲載してきた。
中でも、2010年3月の「成績優秀なのに仕事ができない“大人の発達障害”急増の真実」の記事には400万以上、2012年2月の「成績優秀なのに仕事ができない“大人の発達障害”に向く仕事、向かない仕事」の記事にも、100万を超えるアクセスが寄せられている。それだけ「大人の発達障害」は、身近な問題として関心が高いのだろう。
同じ発達障害でも全く異なる
「アスペルガー症候群」と「ADHD」
いま改めて取材してみると、“職場のトラブルメーカー”や“困った人”として見られがちな「大人の発達障害」という概念も、少しずつ整理されてきたように思える。
発達障害とは、生まれつき脳機能の発達に偏りがあるために、社会性、コミュニケーション力、想像力の欠如など、様々な特性が際立ってしまうという疾患だ。
大きく分類すると、アスペルガー症候群などの「自閉症スペクトラム(ASD)」や、「注意欠陥多動性障害(ADHD)」、「学習障害(LD)」がある。
ところが、世間では発達障害というと、いまもアスペルガーのイメージだけで捉えられていることが多いという。
アスペルガーには、コミュニケーションや対人関係、社会性の障害、パターン化した行動、趣味・関心の偏り、不器用といった特性があり、ADHDは、不注意(集中できない)、多動・多弁(じっとしていられない)、衝動的に行動するという違いがあるといわれる。ただ、そうした能力の凸凹からくる特性は個人差が大きく、同じ障害があると診断された人同士でも、似ていないように見える。大人になったらなくなるという間違った解釈もされてきた。
「自治体の発達障害の相談窓口に行っても、自閉症には強いけれど、ADHDには弱い感じがします。(大人のADHD向けの)病院もまともに紹介できるところが少ない」
ある大人のADHD当事者は、そう実情を明かす。
「役所が支援団体などに外注するのはいいんですが、発達障害はアスペルガーだけではないということをまず理解していないのが最大の問題です。できれば、大人のADHDの支援ができる団体にも委託してくれたほうが、我々のようなADHD当事者にも、相談しやすいんですけど」
それどころか、ある県の窓口では、当事者が大人の発達障害を相談できる病院を問いあわせたところ、「2ヵ所しかない」と言われたそうだ。しかも、それらの病院に尋ねると、いずれも「子どもしか診ることができません」と言われて断られたという。
地方では、大人の発達障害を診療できる医療機関の情報さえ、まだ整備・確立されていないのが現実だ。
外来予約も困難、当事者団体も未だなし
大人のADHDの人々が味わう孤独感
そんな中、本誌の特集でも紹介されているのが、日本で数少ない大人の発達障害専門の外来とデイケア施設を持つ昭和大学附属烏山病院である。
「成人発達障害外来」の月1回の初診予約には、全国から電話が殺到。デイケアでの取り組みのほか、なかなか電話がつながらない現状についても触れている。
記事には出てこないが、筆者が取材した当事者は、いつ電話しても話し中になるため、実家のアナログ回線を試しに使ってみたそうだ。すると、通じやすかったのか、運よく予約が取れたと話していた。
しかし、ほとんどの当事者は、外来に通うことさえ難しい状況なのである。
実際、社会に出て困っている当事者は、ワーキングメモリーやマルチタスク、そのほか忘れっぽいものを改善するために、どうすればいいのかといった壁にぶち当たる。
中には、大人のADHDの治療薬で、集中力を持続させる「コンサータ」(メチルフェニデート塩酸塩)の助けを得て、改善したいという人もいる。ただ、薬を処方できる医師の情報も、事実上、当事者同士の口コミなどで入手するしかない。
「発達障害というと、アスペルガーの人たち主体の団体などはあるんですが、大人のADHDだけの当事者団体がない。家事ができないとか、約束事は忘れちゃうけど、営業成績はいい。人付き合いはできるのに、肝心な用事ができないといった条件で絞って、純粋なADHDの団体ができてほしいと願っているんですけど、なかなか先頭に立って頂ける方がいないんです」(ADHD当事者)
疎外感を抱くというADHDの人たちが安心できるような居場所もどこかにできるといいかもしれない。
発達障害の人々を雇用する企業も登場
「個人の特性」への理解が必須
企業の雇用現場でもこれまで、発達障害=アスペルガーと思われていることが多かったそうだ。
最近、企業は障害者枠を使い、こうした目に見えない障害の人たちを雇用する動きが広まりつつある。いずれは一般枠で雇用できるとようになると理想的だが、まずは障害者枠から少しずつ職場環境を作りだしていくしかない。
本誌の特集でも、サザビーやアフタヌーンティーなどのブランドで衣料、服飾雑貨、飲食サービスを展開するサザビーリーグの子会社「サザビーリーグHR」が、30人近い発達障害の当事者を雇い入れている取り組みを掲載した。
同社の管理者から聞いた話で興味深かったのは、「適度に休んでね」と放っておくと、いつ休んでいいのか、タイミングがわからない。放っておくと、ずっと仕事している、ということ。
休憩のときには全員休ませようとしても、それでも「やらなきゃ」と仕事し続けてしまうというのだ。
当事者の特性をよく表しているが、真面目であるゆえに、疲れて心身を壊す原因にもなりかねない。
せっかく雇用の枠を増やしても、発達障害のそれぞれの特性を理解していないと、適材適所で本人たちの持っている潜在能力を活かすことができないし、職場で当事者たちを傷つけることにもなりかねない。
ADHDにしても、アスペルガーにしても、働きたいと思っているのに、社会で失敗を繰り返し、自分自身を失って、引きこもってしまう当事者は少なくない。
定職に就くことをあきらめて、生活保護を受けざるを得ない人もいる。
人間誰でも、大なり小なり凸凹はある。その凸凹の目立つ人が、発達障害ということなのだろう。
これまで凹の部分ばかりが着目され、社会からはじかれてきた。そうではなく、周囲は本人の凸の部分を見つけだし、伸ばしていくことを心がけていく努力が必要だ。
もし意欲があれば、当事者と一緒に勉強していきながら、ともに成長していくことができる企業を目指してほしいと思う。
引用先 ダイヤモンドオンライン
http://diamond.jp/articles/-/59575
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