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社会的ひきこもりの定義と心理行動パターン1:他者に対する優越感・劣等感と思春期的な挫折体験

2011.07.05

現代の日本では、社会活動や職業活動に参加しない“非社会的問題”としてのひきこもりが増えていると言われる。ひきこもりの人の数は、自宅・自室から全く一歩も出られないような重症例の人は数万人~10万人程度とも言われるが、軽度のうつや対人不安、自信喪失、モラトリアム、就労拒否、アパシーなど『買い物や遊びでの外出・親しい周囲の人間関係』には適応できるが職業活動(社会参加)が続かないという人まで含めると、約130万人以上にも上ると推計されていたりもする。

内閣府のひきこもり推計に関する記事では、ひきこもりのライフスタイルや価値観、ストレスの感じ方と親近性を持つ“ひきこもり親和群”を取り上げている。つらい時には家や自室にひきこもりたい時がある、社会に適応できずひきこもる人の気持ちに共感できるという『広義のひきこもり親和群(予備軍)』まで含めると約155万人にもなるというが、現在ではひきこもりとニート(無業者)の社会経済的な位置づけが近くなっており、厳密なひきこもりの定義は曖昧化している。

一般的には、6ヶ月以上にわたって家や部屋に閉じこもっていて、学校や会社、仕事、ボランティアなど他者と交流する社会的活動を行っていない状態をひきこもりとしていたが、現在では『自宅に閉じこもっているか否かという物理的な状態』よりも『社会的・経済的に有用な活動や集団に参加できているか否かという適応的な指標』のほうが重視されるようになっている。家や部屋に物理的に閉じこもっておらず、他人ともコミュニケーションすることができて、趣味や娯楽、遊び(友人との交遊)、買い物、旅行などを楽しんでいるような状態で、本人に主観的な苦悩が無くても『ひきこもり』と言えるかというのは、臨床心理学的な問題というよりは、職業適応・自立に関する政治経済的(社会政策的)な問題になってくる。

ひきこもりは、うつ病や統合失調症、社交不安障害(対人恐怖症)、回避性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、心身症、ストレス反応などの精神医学的な問題とオーバーラップ(重複)して長期化することもあることから、従来は『精神疾患を伴うひきこもり(病理圏のひきこもり)』『心理的問題を抱えるひきこもり(正常圏のひきこもり)』との鑑別が重視されたりもした。

うつ病や社交不安障害を中心にした精神疾患を伴うひきこもりの場合には、まず医師の診断を踏まえたトランキライザー(向精神薬)を用いた薬物療法によって病気の症状を緩和した上で、ひきこもり状態の段階的な行動療法による改善を進めていくというのがセオリーだった。しかし、現在では一般的にいうひきこもりは精神疾患を持たない『心理的問題を抱えるひきこもり(正常圏のひきこもり)』であり、このひきこもりの類型は6ヶ月以上にわたって社会経済的活動に参加していない『社会的ひきこもり』としてまとめられている。

社会的ひきこもりの状態にある人が形成しやすい典型的な行動・心理のパターンには以下のようなものがある。

1.過去に不登校の経験や何らかの挫折・トラウマの体験があり、その影響を現在でも受けている。

2.家の外に外出する頻度が少ない。

3.学校や会社などの義務的要素のある社会活動には参加することができない(趣味・娯楽・遊びなどストレスのない活動には適応性を持っていることが多い)。

4.対人恐怖があり家族や親しい友人以外とは上手く話せない。

5.生活リズムが乱れやすく、昼夜逆転の生活になりやすい。

6.幼稚な退行的行動を取ったり、わがままな要求をしたりする。

7.両親との関係は依存と受容の良好さを示すか、自立・仕事を巡って険悪化しているかのどちらかであることが多い。

8.抑うつ感や無意味感、空虚感、将来の不安などに捕われている事が多い。

9.両親のせいで人生が上手くいかないと責めたり家庭内暴力に発展することがある(逆に完全に親子間のコミュニケーションが断絶することもある)。

精神疾患ではなくて、心理的・社会的な要因や社会・仕事への不適応状態によってひきこもっている群が『社会的ひきこもり』であるが、この『社会への不適応性・集団活動への不参加性』を特徴とする社会的ひきこもりの歴史的な始まりは、1960年代の『登校拒否(不登校)』の問題にあったとも推測されている。

『登校拒否』という言葉は、本人が学校に行きたくないから意図的に登校に拒否的な態度を示しているという誤解をされる恐れがあるので、現在では中立的な意味合いの言葉である『不登校』が用いられている。登校拒否と呼ばれていた時代でも、登校拒否の生徒は『学校に行きたいけど行けない・学校に行かなければならない事は分かっているけど行けない』というジレンマの苦悩を抱えていて、学校に行こうとすると『腹痛・発熱・頭痛・めまい・吐き気』といった精神的ストレスが深く関与した心身症的な症状が出ることが多かったのである。

だが、現在ではうつ病にも几帳面・生真面目・他者配慮(責任感)の強い人が発症しやすい『古典的うつ病』とは違って、嫌な仕事やストレス状況に直面した時にだけ抑うつ感・意欲減退を生じるという『新型うつ病』が増えており、不登校やひきこもりの問題でも『~しなければならないという義務感・責任感』を果たせないことによる葛藤や苦しみは過去よりも減ってきている傾向にあると言われる。とはいえ、現在でも大多数のひきこもりの人は、『もっと外出したいけどなかなかできない・働かなければいけないと思っているけど働けない・学校に行かなければいけないと分かっているが行けない』という義務感と焦燥感、心身症的症状が相俟った葛藤の苦しみを背負い続けている。

人間関係のストレスや仕事の義務・面倒から解放されたひきこもりの状態に適応し切ってしまい、『社会参加しなければいけない・働いて経済的に自立しなければならないという義務感や責任感』が弱くなってしまうことで、ひきこもりの非社会的状況が長期化したり解決の兆しが見えなくなることもある。しかし、自分自身の力で必要最低限の収入を得てある程度の自立をしないと、将来的に金銭面や生活面で行き詰まりやすいという決定的な問題があることから、『ひきこもり状態の遷延・ひきこもりへの適応感(抜け出す意志の喪失)』は当然のことながら好ましいことではないのである。

1960年代の登校拒否(不登校)では、真面目で学業成績が良かった生徒が成績の低下やテストの不合格をきっかけにして、学校に通学できなくなる『思春期挫折症候群のタイプ』の登校拒否が目立っていたというが、それ以外にも『いじめ・友人関係のトラブル・クラスからの疎外感・学業不振や非行』などの理由によって不登校になってしまう生徒たちがいた。

思春期挫折症候群のタイプに分類されるひきこもりというのは、『自尊心・自己評価・完全主義(優越欲求)の過剰』によって、些細な失敗や挫折の結果(エリートではなくなった自己像)を受け容れられなくなり、現実の自己評価(職業選択)や平均的な人生の展開に耐えられずにひきこもってしまう事になる。学生時代の途中まで、将来は人並み以上に優れたエリートになるという“優等生としての自己アイデンティティ”を形成していると、学歴競争の挫折や失敗の経験からの立ち直りが難しくなりやすく、理想自我と現実自我の葛藤によって現実社会からひきこもりやすい心理状態になるのである。

これは思春期・青年期の挫折体験に限定されるものではなく、例えば、一流大学を卒業したが思い通りの企業に就職できなかった人、就職はできたものの早期退職をしたり、リストラをされたりしてそれ以上の就職ができないと思い込んでしまった人などにも、この種の思春期的な心性(アイデンティティ危機の葛藤)に基づく挫折感やひきこもり願望が生まれることがある。過去から積み重ねてきたような実績や経歴、自己評価に、自己アイデンティティ(自信のある自己イメージ)が依拠してしまい過ぎる事によって、『現在の挫折や失敗に対する耐性(そこから立ち直ってやろうという意志)』が極端に弱くなってしまうという問題でもある。

それとは対照的に、いじめられる体験や学校(友達)からの疎外感を原因とするタイプに分類されるひきこもりというのは、『他者からの劣等感・ストレス耐性の低さ・自己卑下・他人に対する恐怖』によって、他人と深く接するのが苦手で怖いという感情が起こりやすくなって、現実社会や職場環境に適応できなくなりひきこもってしまうのである。思春期挫折症候群は『自分は他人よりも優れているはずというプライド・思い上がりの崩壊』に自我が耐え切れなくって、優越感や自尊心を守るためにひきこもってしまうという傾向が強いが、いじめ・集団からの疎外を原因としているひきこもりは『他人との人間関係の重圧・現実社会のストレス』に自我が耐え切れないので、他人とのコミュニケーションを回避する形でひきこもってしまう傾向が強い。

 

引用先 記事詳細URL

http://charm.at.webry.info/201107/article_3.html

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