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4人に1人以上が発達障害!? 引きこもる大人たちが働けない本当の理由

2011.07.07

「引きこもり男性の26%は、発達障害の可能性が高い」――

 最近注目されている「広汎性発達障害」と、年々、高年齢化、長期化する「引きこもり」との関連性が、研究者の調査報告によって、このほど明らかになった。

 調査を行ったのは、徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部の境泉洋准教授(臨床コミュニティ心理学)らのグループ。

 境准教授らは、これまで8年間にわたって、引きこもり当事者や家族に大規模調査を実施してきた。今回、引きこもりと発達障害の関連を調べるため、2010年7月から9月にかけて、全国の引きこもり家族会や当事者の集まりなどで調査用紙を配布。その場で回収(一部は郵送によって回収)する方法によって、調査を行った。

 調査対象者のうち、協力が得られた回答者は、引きこもり本人82人と家族332人。

平均年齢31.61歳、平均期間10.21年
高年齢化と長期化が一層進む

 まず家族への調査によれば、引きこもり本人の平均年齢は31.61歳で、最年長は51歳。男性が75.6%。2008年に調査したときの平均年齢30.12歳に比べると、約1.5歳上がっている。引きこもりの高年齢化が進んでいることは、ここでも裏付けられた形だ。

 引きこもり期間も、平均10.21年で、最長は34年。08年の調査では、平均8.95年だったため、今回は10年を超えて、やはり長期化も進んでいる。

 また、「就労経験(アルバイトを含む)がある」と答えた人は、181人。全体の54.5%と高い。

 これまでの引きこもりの不登校の延長というイメージと違い、半数以上が就労してから職場不適応を起こす、“新たな引きこもり層”であることが、このデータからもうかがえる。

 一方、引きこもり本人への調査でも、平均年齢は29.09歳で、最年長が52歳。男性が76.8%を占めた。家族への調査とほぼ同じような結果が示されたといえる。

引きこもり男性の26.3%が発達障害の可能性
働きだして初めて自覚する当事者たち

 中でも注目されるのは、広汎性発達障害の可能性を調べる「AQ-J-16テスト」の得点結果だ。広汎性発達障害とは、コミュニケーションに支障のある人たちで、自閉症やアスペルガー症候群なども含まれるという。

 引きこもり本人の調査結果を見ると、広汎性発達障害の可能性が高いと思われる11点以上の得点人が、男性は16人。男性全体の26.3%で、4人に1人以上という高い割合を占めた。女性は3人で、女性全体の15.8%だった。

 境准教授は「日本人全体の平均が1%前後とされていることを考えると、引きこもり本人の中に、広汎性発達障害の可能性のある人が4分の1以上の高い割合で含まれていることは、注目に値する」と指摘する。確かに、本人がある程度自覚して訪れるような精神保健医療機関のデータではないことを考えると、興味深い割合といえるかもしれない。

 さらに、父母などによる代理回答を見ると、「新しい状況は、本人を不安にする」と答えた人が最も多い第1位で、78.4%に上った。

 続いて第2位は、「一度に2つ以上のことをするのは簡単だ」に対して「いいえ」と答えた人で、69.9%だった。

「この2つの質問は、“注意転換の困難(こだわり)”に関するものです。一般の人に比べて、何かをしながら別のことをやるような、注意の配分の苦手な方が多い。機転が利かなくなり、コミュニケーションや臨機応変さが弱くなります。こうした注意転換の困難さが、引きこもりと何らかの関係があると考えられます」(境准教授)

 そして、第3位は、「自分がモノよりも人に強く惹きつけられていることに気が付いている」に「いいえ」と答えた人で60.6%。つまり、人と関わるよりも、モノに関心が行きやすい。話をしているときも、周りの風景ばかり見ている傾向があるという。

 ちなみに、第4位は「物事を自発的にすることを楽しむ」に「いいえ」と答えた人で、59.6%。つまり、自主性の問題だ。

「発達障害の診察を受けたことがありますか」の問いには、「ある」と答えた人は24人。全体のわずか7.2%だった。

「大学時代までは、何とかやっていけるのですが、ただ、働きだすと、コミュニケーションで行き詰って、職場不適応になってしまうと考えられます」(境准教授)

恨みやつらい経験、感覚に敏感
気持ちの切り替えが困難に

 恨みやつらい経験についても聞いている。

「誰か、あるいは何かに対して、強い恨みを持っていることはありませんか?」の問いには、「ある」と答えた人は112人。全体の33.9%に上った。

 その内訳は、「学生時代のいじめ」26.8%、「父親」19.6%、「両親」17.9%、「母親」16.1%、「会社や上司」7.1%と続く。

「この質問も、注意転換の困難さと関係しています。思い浮かべる記憶を再体験し、それに囚われてしまい、気持ちを次に切り替えられなくなるのです」(境准教授)

 嫌な記憶が蘇ることは、誰にでも起きることだろう。ただ、その記憶にかき乱されてしまって、「ま、いいか」と思うことができなくなってしまうのかもしれない。

 こうした記憶は、「感覚異常」にも関連してくる。

「視覚や聴覚に異常を感じたことはありますか」の問いに、「ある」と答えたのは72人で、全体の21.7%だった。

 その内訳は、聴覚46.9%、視覚56.3%、嗅覚9.3%。「服装にこだわりがある」と答えた人は79人で、全体の23.7%。

「感覚に対して敏感で、記憶によって想起される感情に対しても敏感になっていることがわかります。こうした敏感さも、発達障害に起因する場合もあると考えられます」(境准教授) 

 実は、これらの結果は、引きこもり本人の調査の回答のほうが、より高い得点を示しているという。

非常に強い就職活動への不安
「体験の回避」をする傾向も

 引きこもり本人の回答で特徴的だったのは、就職活動に対する不安だろう。

「就職活動においてうまく自分をアピールできるか不安である」(「ややあてはまる」も含む)と答えた人は、8割を超えたほか、「企業側の人と上手くコミュニケーションがとれるか不安である」「自分の言いたいことを上手く企業側に伝えられるか不安である」「面接などでいい印象を与えられるか不安である」(同)と回答した人が、軒並み70%以上を占めた。

 また、「長い就職活動を乗り切れるか不安である」(同)という回答者も80%以上に上る。中でも、一般の大学生に比べて差が出たのは、「就職活動中の悩みについて、誰に相談したらよいか不安である」(同)といった「サポート面への不安」の高さだ。

 さらに、「今の時期、何をすればよいかわからず不安である」(同)という回答も70%を超えるなど、「準備不足への不安」も示された。

「就職活動に対する自己効力感」についても、「OBやOGから必要な情報を得ること」の質問に「全く自信がない」「あまり自信がない」と答えた人が、合わせて8割近く。「できるだけ多くのセミナーに参加すること」や「家族や親戚、先輩から必要な情報を得ること」「今年の雇用傾向について、ある程度の見通しをもつこと」など、「就職活動に対する自信」の平均点は28点と低く、一般の大学生の35点に比べると、やはり自信のない実態が示された。

 さらに、境准教授が「引きこもりの重要な要因」として注目するのは、「自分にとって好ましくない思考や感情、感覚、記憶などを回避する傾向」だ。平均点が低いほど、こうした体験の回避の傾向が強くなる。引きこもり本人の平均点は29点で、一般の大学生の39点に比べると、体験の回避の傾向が強いことがわかった。

「体験の回避の傾向が強いと、就職活動への自信は弱くなります。これらの要因は、心理療法の1つである認知行動療法で変容可能。発達障害の人が多いことを考えると、本人の背景に応じた支援を受けることが重要です」

 こう提言する境准教授は、今年度もさらに詳細な因果関係を調査する予定だそうで、福祉的支援をはじめとした、多様な支援を必要としている引きこもりメカニズムの解明に期待したい。

引用先 ダイヤモンドオンライン
http://diamond.jp/articles/-/13017

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