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2030年「ひきこもり長寿社会」到来で財政難か大量衰弱死か 精神科医・斎藤環が警鐘〈AERA〉

2019.08.24

「ひきこもり」診療の第一人者、精神科医の斎藤環さんによると、全国のひきこもっている 人の推計は現時点で200万人以上、20年後には1千万人を超えるという。 

ひきこもりを日本独特の問題と考える人がいるかもしれませんが、背景にあるのは「家族主義」です。ひきこもりが多いのは、日本や韓国、最近では中国、ヨーロッパではイタリアやフランスです。5カ国とも家族主義で、子どもが社会参加できなかった場合、子を家に抱え込み、親が面倒を見続けてしまう。対して、アメリカやイギリスのような個人主義の国では、社会に参加できない者はホームレスになるしかありません。社会参加できない人の受け皿が家庭になるか路上になるかの違いです。

 内閣府のひきこもりの推計は全国で約115万人ですが、私はその倍の200万人以上いると確信しています。その半数が中高年ではないか。ひきこもっている人は、基本的にはつつましく暮らしており、「自立しないこと」を除けば切迫した危機感はありません。それがかえってあだとなっています。

 私は「2030年にひきこもり長寿社会が到来する」と警鐘を鳴らしてきました。あと10年もすれば、65歳以上の数万人のひきこもりが一斉に年金受給者になります。わが子を案じる親は子の年金保険料を払い続けていますから、その子たちが全員年金を請求すれば年金制度を圧迫するかもしれません。

 彼らは所得税は払ってこなかったでしょうから、なのに年金を受給するのかと世間からバッシングされる可能性があります。また、社会や役所に対し恐怖心を持つ彼らは、請求しないかもしれません。待っているのは、孤独死や衰弱死です。

「ひきこもり状態にある家族を誰が面倒を見るべきか」という質問をよく受けます。私は、両親であればそうしたいなら仕方ないと思いますが、きょうだいが背負う義務はないと主張しています。きょうだいが面倒を見ることは、自分の結婚や仕事、生活をすべて犠牲にしないと無理で、明らかに理不尽だからです。その時は福祉に委ねるべきです。

ひきこもり状態の人は、自分に自信がありません。人は社会的地位や人間関係、自分がやってきた仕事で自信を得ますが、彼らにはそれが全くないからです。時にプライドや自己愛が過剰に見えるのは、その裏返しです。ある意味悲鳴であり、健全な自己愛だと思います。

 外に向け一歩を踏み出すのに必要なのは、人間関係の構築と、自信の形成です。それも、家族以外の人間とのつながりが大切になります。私は、福祉や医療関係施設が提供するデイケア活動への参加を勧めています。レクリエーションなどを通じ、誰かとつながることで自信の礎ができ、その礎の上にいろいろなものをのせていくことで自尊心を形づくることができます。

 デイケアにつなげるには、私の場合、まず親と相談を続けながら、子にも通院を勧めてもらいます。親が子に「一緒に来てほしい」と誘い続けることです。先日も、親だけが5年間私のもとに通い続け、とうとう本人がやってきたケースがありました。

 このままでは、ひきこもりの数は20年後には1千万人を超えると予測しています。この30年近く、ひきこもりの人数はじわじわと増え続けてきたからです。就労支援も治療機関も、ひきこもり状態の人たちがそこから抜け出すことができるルートが少な過ぎるのです。都道府県が運営する「ひきこもり地域支援センター」やNPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が頑張っていますが、実情に対して全く追いついていません。

 ひきこもりが可視化できない状況下では、国は何もしないでしょう。財政が圧迫されたり、孤独死や衰弱死が大量発生したりして初めて本腰を入れるのでしょうが、それでは手遅れ。ひきこもり当事者や家族が安心して相談できる支援体制を確立してほしいと思っています。(構成/編集部・野村昌二)

※AERA 2019年8月26日号

引用先:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190821-00000081-sasahi-soci

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