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40代の再就職難民を増殖させる ハローワークの不都合な真実
2015.10.08
大阪府に住む40歳代男性のAさんは、大学卒業後、大手企業の技術職として勤めていた。
しかし、リーマンショックの頃に、上司との人間関係が原因で会社を退職。その後、なかなか再就職先が見つからないため、ここ数年は自宅ですることもなく、引きこもらざるを得ない状態に陥っている。
中学高校時代は人気者で、クラスメートを笑わせるのが好きだった。そんな明るいキャラクターゆえ、同窓会にもこれまでは欠かさず出席していた。
それが会社を辞めてから、同窓会の誘いがあったとき「仕事もしていなくてみじめだから、行きたくない」と断った。
「何言ってんだ。おまえが来なきゃ盛り上がらないだろ」
何も知らない同窓生から無理やり引っ張り出されて、余計に落ち込むことになり、人脈も閉ざした。
仕事が欲しいだけなのに、勧められるのは「精神科の受診」
そんなAさんがとくに憤慨するのは、「ハローワークの真実」に対してだ。
「最初の頃、相談に行くと、中には気のいいおじさんとかいて、いろいろ話すんですが、気合論しか言わない。なかなか効果的な話につながっていかないんです」
Aさんによれば、ハローワークでよく言われるのは、主に次の3点だという。
「とにかく履歴書を出しなさい」
「めげない」
「しんどくなったら、精神科医へ通いなさい」
とはいえ、正規社員の仕事さえ決まれば、元気になって精神科へ行く必要もないと、Aさんは言う。
「仕事が決まらない人に、精神科へ行かせたがるんです。メールでも“こころの相談室”にいろいろ書いて出すと、やはりまず“精神科医を紹介しますから”と返って来る。会社を辞めるときも“うつの疑いがあるから”などと言われ、精神科医(への受診)を勧められた。“心の安定を図ってください”が決まり文句なんですよ」
仕事が欲しいのに、どこへ行っても精神科医につながっていく。仕事は紹介されないのに、病院への入り口はあちこちにある社会。これでは、ハローワークではなくハローホスピタルだ。
Aさんは、「しんどいです」という言葉を、精神論や根性論に対して「難儀です」というような意味で使っている。にもかかわらず、窓口のスタッフは、ネガティブな意味に受け取る。
「職歴がなくなると、採用率がものすごく下がるんですよ。“この期間、何やってたのか?”と問われるたびに、繕ろうのが大変なんです。そう聞いてくれたらまだいい方ですけど、結局は履歴書を送っても“お祈り”の返事がくるだけです」
探しても出てくるのは同じ求人、40歳を超えればサポートすらない
ハローワークにはずっと通い続けてきた。しかし、正規社員はおろか、アルバイトにも採用されなかった。
自立相談窓口を謳う社会福祉協議会に行っても、Aさんの住む自治体ではハローワークの求人を紹介されるだけで、とっくに見ているような情報ばかり。その社協には、支援メニューの厚みやノウハウがなく、セーフティーネットとして機能していない。
Aさんの自治体では、大手派遣企業も窓口に入っている。でも出てくるのは、ハローワークの求人で、60歳代くらいの担当者は、同じ情報を一生懸命見ているだけという。
「その人も一生懸命探してくれる。でも、パイがない。担当者もイライラしたように困っている状況でした」
単調な生活にリズムをつけたくて、いまは毎日、図書館に通って、自習室で勉強などもしている。
「何でもいいから仕事したい。内容を選んでいるわけではないのに、経験がないからという理由で、まったく採用されない。役所が非正規の仕事を募集しているからと生活支援課で紹介され、経験が欲しくて応募したことがありました。ところが、面接のとき、同じ役所内の生活支援課にも社協にも通っていて、相談していることを話したのに、落ちたんです。後でわかったのは、面接した担当者が、社協や生活支援課に確認すらしてくれてませんでした。一方、生活支援課の人も同じ役所内なのに一言も伝えてくれず、あまりに縦割りすぎることがショックで、ここはもうダメだと…」
結局は、自分で仕事を探すしかない。でも、自分で探すと、求人は経験者に限られる。
「やる気があります」とか「自分を買ってください」といった意気込みを示しても、その努力は実らない。
「40歳までは何らかの支援がある。サポステ(地域若者サポートステーション)も39歳までならサポートしてくれる。でも、その後がないんです」
ハローワークで傷つき、引きこもる!徒労感だけ残る無意味な仕組み!
ハローワークに登録しても、何の連絡もない。
「やることって、履歴書の書き方とか、パソコン講座とか、こんなことはさんざんやってきた。
それに、ハローワークへ行っても、非正規の人が多い。大体、わかるんですよ。この人、短期で雇われてる人だなって。当たり障りのない説明をして、そんなの僕でも言えます。向こうも、それぞれの職歴やスキルに即した就職支援の指導をされていないから、何も言えないんですよ」
結局、窓口の相談スタッフは、紹介状を出すだけの人。なぜ、そんなスタッフが配置されているのかと、Aさんは不思議がる。
実際に、一旦、職場などで傷つけられた人たちが、何とか社会に戻りたいからと、せっかくやる気を出して相談に訪れた支援の窓口で、再びトラブルを起こされて傷つけられ、引きこもっていく人たちが少なくない。
「窓口の人たちが、僕に愚痴ってくるんですよ。“プロパーの人は、ほんとに…”とか“あいつらは、いいよ”とか。キャリアアップハローワーク(以下、現在のキャリアアップコーナー)なんて、本当にお笑いでした」
キャリアアップハローワークといっても、一般のハローワークとはほとんど変わらないと、Aさんは言う。
むしろ不機嫌にさせられた。
キャリアアップハローワークに登録に行くと、窓口の職員から、こう言われた。
「私がいままで見た中で、最高レベルの出来ですよ。もう、指導することはありません。ここに来る必要はないです。あとは、履歴書をどんどん送るだけです」
では、どうして履歴書を送り続けているのに採用されないのか。これまで窓口へ行っても、スタッフから「履歴書を送れ」としか言われなかった。
「(キャリアアップハローワークでで)言われる“〇〇へ行かれたほうがいいと思いますけど…”という内容は、すべて“やってます”ということばかり。勉強不足も甚だしいというのか、相手のスタッフのほうが自分より知らないくらいでした。全然、キャリアアップになっていないんです」
Aさんは、そうため息をつく。
「支援」と言いながら、カラカラと空回りさせられて、徒労感だけが残る。何と無意味な仕組みなのかと、この実態に唖然とさせられるという。
「だから、もうハローワークは基本的に信じていないです」
Aさんは、「雇われる生き方」はあきらめた。これから先は、ハローワークで身につけた経験やノウハウを生かし、大阪で中高年世代の仕事を創り出す「中高年仕事創造センター」(仮称)を立ち上げる予定だ。さらに、本人を「引きこもり」にしないため、情報提供などによる家族支援をしていきたいと構想を練っていて、一緒に協力してくれる仲間たちを募っている。
記事詳細 ダイヤモンドオンライン
http://diamond.jp/articles/-/79634
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