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高齢化する引きこもり 親亡き後の「サバイバルプラン」を
2014.03.17
家から出ることなく、年を重ねた息子や娘。「この子を残して死ねない」「自分で生活保護を申請できないのでは」など親の悩みは尽きない。引きこもりの人の高齢化が社会問題となる中、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは、子の住まいや生活資金を早めに手当てする「サバイバルプラン」を提唱する。
◆40歳が一つの目安
畠中さんが提唱するサバイバルプランとは、親が持つ住宅や預貯金などをフル活用し、親亡き後も引きこもりの息子や娘が平均寿命程度まで食べていけるプランを模索しておくこと。
最後のセーフティーネットとして生活保護があるが、畠中さんは「家から出ないのに、親が亡くなったときに機動的に生活保護の申請に行けるか。プライドを高く保つことで自分を守っている子がケースワーカーとうまくつき合っていけるか」と指摘する。
電気・ガス・水道などの契約や料金を引き落とす口座の名義変更を子が自分で手続きするのも難しい。親が生きているうちに変更しておけば、親の死後に口座がいったん凍結されて支払いが滞る事態を避けられる。
サバイバルプランは生活設計だが、著書『高齢化するひきこもりのサバイバルライフプラン』(近代セールス社)では、「ご飯を炊ければ、コメはネットスーパーや通販で購入できる」「レトルトご飯を利用するとゴミが増える。定期的にゴミ捨てができないお子さんが多いはず」など子の生活力を高める助言もしている。
プランを立てる時期は、子が40歳になったときが一つの目安。公的な就業支援が原則39歳までを対象としているからだ。「働けない状態が一生続く」と想定し、収入は子の国民年金と、既に障害年金を受給している場合はそれも見込む。このため、国民年金保険料は払うか免除申請をして未納にならないようにする。
◆確実に一定額を
自宅のほかに2千万~3千万円程度あればプランを立てられるが、資産が少なくても住み替えを覚悟すれば可能な場合もある。小さい中古マンションに引っ越して固定資産税や光熱費を抑えたり、自宅を売却して分譲型の高齢者用マンションに移ったりする方法も。管理費はかかるが、高齢者用の中には購入価格が手頃で親子で住めるうえ、子が他人と顔を合わせずに食事をレストランから部屋に持ち込める所もあるという。
親自身が要介護状態となったとき、子が訪問ヘルパーらを追い返す可能性がある。住み替え先を検討するときは別居も覚悟を。
手順はまず、預貯金や株式、保険、不動産の評価額などを合わせた総資産から負債を差し引いて純資産を出す。現在の家計も把握し、資産の目減りを防ぐ。相続でもめる場合に備え、生命保険の死亡保険金の受取人に指定し、確実に一定額を残すのも一つの手だ。
畠中さんは「親が『食べられるだけの収入を得てほしい』と願うのは当然。ただ、それに縛られて親も子も苦しんでいる現実を感じます。最悪のシナリオを想定したプランを立てることで、気持ちが楽になってもらえれば」と話している。(寺田理恵)
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畠中さんが提唱する「サバイバルプラン」の作り方
(1)子供が40歳になったときを目安に着手
(2)資産の洗い出し。預貯金、株式、保険などの合計額をはじき出し、不動産評価額を把握
(3)家計の収支を把握し、子供にかける費用の上限を決める
(4)親亡き後の子供の生活費を割り出す。持ち家で家賃不要なら月10万円を限度に
(5)親亡き後のサポート体制を考える。兄弟姉妹に根回しを
(6)相続でもめる可能性もある。生命保険で確実に本人に資産を残す手も
(7)親亡き後の住まいの確保。持ち家は売却するか建て替えた方がいいケースも
(8)住み替えるなら介護も視野に
(9)役所や銀行での手続きを経験させるなど、子供に1人暮らしの準備をさせる
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難しい実態把握
引きこもりの長期化、高齢化が課題となっている。
山形県が昨年、若者の引きこもりの実態を把握しようと調査したところ、15歳以上の県民のうち、引きこもりの人(買い物程度に出る人を含む)は1607人で、このうち717人が40代以上だった。引きこもっている期間は5年以上が半数超。民生委員らへのアンケート形式での実施であることから、行政や医療機関などの支援状況(複数回答)については「分からない」が907件あった。家の中の様子を知るのは難しく、担当課は調査結果を大まかな傾向を捉えたものとみている。
記事URL
http://www.sankei.com/life/news/140317/lif1403170038-n1.html
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