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中高年のひきこもりの「約8割は男性」 男女の脳機能の違いも影響か

2019.06.25

「大人のひきこもり」が社会問題としてクローズアップされている。最近も世間を大きく揺るがす事件が立て続けに起きた。
 5月28日、神奈川県川崎市でスクールバスを待つ小学生児童や保護者ら20人を次々と刃物で切りつける事件を起こした岩崎隆一容疑者(51才)は、定職につかず、携帯電話もパソコンも持っていなかった。容疑者には、「ひきこもり」傾向が指摘されている。
 4日後の6月1日には、東京都練馬区の住宅街で、元農林水産事務次官の熊沢英昭容疑者(76才)が、無職の長男・英一郎さん(44才)を刺殺。川崎の事件を受けて、「このままでは息子も第三者に危害を加えかねない」と危機感を感じての犯行だったという。これもまた、「ひきこもり」が要因となった悲劇だった。
 内閣府は今年3月、初めて中高年(40~64才)を対象にひきこもりの実態調査「生活状況に関する調査(平成30年度)」を実施した。調査では、中高年のひきこもりが全国に61.3万人いることがわかった。
「大人のひきこもり」が増えている要因として、1990年代半ばから約10年にわたって続いた就職氷河期で新卒採用が大幅に抑制され、正社員になれない若者が社会に出るタイミングを逸して、そのままひきこもりになっていることなどが挙げられている。
 注目したいのが、中高年のひきこもりには顕著な「男女差」があることだ。内閣府調査では、男性が76.6%、女性が23.4%と圧倒的に男性が多かった。たしかに、冒頭の2つの事件といい、過去を振り返ってみても、男性が起こす事件の方が多い印象がある。とはいえ、「就職氷河期」がきっかけならば、男女共に新卒採用は抑制されたわけで、ひきこもりの数に性差があるのは理解しがたい。
『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)など数多くの著書がある作家の橘玲さんは「社会的立場の違いがある」と読み解く。
「まず、男性と女性では“社会的許容度”が違います。たとえば、仕事を辞めて都会から田舎に戻って働いていなくても、女性なら『家事手伝い』としてある種の『役割』を与えられ、それで周囲も納得しますが、男性はそうもいかない。家の外に出ると、無職の中高年男性は地域社会から奇異の目で見られ、警戒されるので、家から出られなくなる。
 加えて、女性よりも優位な立場にある正社員の男性が非正規に落とされるとひどくショックを受けるでしょう。一方、女性の働き口はそもそも狭き門であった長い歴史があるため、“下から上がる女性”と“上から落ちる男性”とでは精神的な耐性が違います。圧倒的な男性優位社会であるはずなのに、自殺率も男性が7割なのは、いったん脱落すると立ち直れないからです」
 高齢者向けのコミュニケーションサービスを提供する、こころみ代表の神山晃男さんが話す。
「男性は、会社員として生きることを拠り所にする人が多く、どこへ行っても名刺や肩書で自分や相手が何者かをはかりがちです。そのため、肩書がなくなると自己肯定感が低くなる傾向が強い。高いプライドで弱い自分を守ろうとするので周囲に溶け込めず、ひきこもりがちになる。一方の女性は、そもそも地位や肩書を基準に生きていないので、自然体で人づきあいができます」
 国立社会保障・人口問題研究所によると、65才以上のひとり暮らし男性の半数以上が、「1日に誰とも話していない」と答えており、女性の約4割よりも高かった。脳機能の違いを指摘するのは、脳科学者の塩田久嗣さんだ。
「女性の方がコミュニケーションに関する脳機能が平均的に発達しています。また、脳の構造からみても、男性は脳のある部分を局所的に使い、女性は全体をまんべんなく使う傾向がある。局所的にひとつの物事を考えて行き詰まりがちな男性の脳より、さまざまな脳の部位の結合状態が豊かな女性の脳の方が楽天的に物事をとらえられ、ひきこもりになりにくいのかもしれません」
心理学者の富田隆さんも付け加える。
「女性は言語知能の発達が早く、言葉だけでなく、相手の表情やしぐさなどを含めて感情を理解し、うまく表現できます。それと比べると、どうしても男性の方が孤立しやすいといえます」
 ただし、男性ばかりに焦点を当てると、女性のひきこもりを見過ごしてしまうことにつながりかねない。ひきこもりの現場を20年以上取材してきたジャーナリストの池上正樹さんは、こう指摘する。
「各種調査では自宅で家事や育児をしている女性は『主婦』や『家事手伝い』として調査対象から除外されがちですが、その中にはひきこもりといえる女性が少なからずいます。
 一日中家庭にいることで人間関係が希薄になり、喪失感に苛まれる女性は決して少なくない。私のところに日々寄せられる相談メールは男女半々で、統計データなどにとらわれすぎてしまうと見誤ることがある。もっと寄り添って考える必要があります」

引用先:https://www.moneypost.jp/552887

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