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ひきこもりの絶望から脱出できた理由―今ひきこもりの君へおくる踏み出す勇気

2019.07.30

元ひきこもりで、自らのアスペルガーを克服し、立ち直った発達障害カウンセラー・吉濱ツトムさんは、2000人以上ものひきこもり者を治療してきた。ここでは、実際に向き合ったセッションの実例のひとつを紹介する。(吉濱ツトム著『今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気』より)

■彼らは、いかにしてひきこもってしまったのか―。

 2016年9月に発表された内閣府の調査では、学校や仕事に行かず、半年以上自宅に閉じこもっている15~39歳(若年層)のひきこもりの人は、全国の推計値で54万1000人と公表されました。そのうち約35%が7年以上のひきこもりです。

 また、ひきこもりになった年齢が20~24歳が34・7%に上ります。

 さらに本年3月内閣府が公表した40~64歳(中高年層)までの調査(内閣府政策統括官「生活状況に関する調査報告書」)では、61万3000人(40~64歳人口:4235万人の1・45%)がひきこもりとの推計値が発表されました。

 単純に若年層のひきこもり推計値と合算して115万人超。

 僕は今までに2000人以上の「生きづらさ」を抱えた来談者と向き合ってその苦しみからいかに抜け出すかについて方法を提示してきました。特に昨今の来談者は、30代後半から40代後半の中高年の社会的ひきこもりの人たちが多いと実感しています。では、なぜ中高年にひきこもりが増えたのでしょうか。

 今40代のひきこもりの人たちはちょうど就職氷河期(93~05年)とかぶっていると言えます。

 彼らは、いかにしてひきこもってしまったのか―。

 その経緯の中には、いくつもの問題点が見えてきます。しかし、実はその問題点の数々は、〝問題点〟ではなく〝気づくチャンス〟であったとも言い換えられます。

 これからお話しするひとつの実例は社会復帰への話であり、決して過去を振り返るものではありません。

【実例】
就職氷河期世代、200社もの就職に失敗、全滅からの自滅へ
(男性39歳/ひきこもり歴14年)

 Cさんは高校・大学も人並み以上のレベルの学校の出身です。しかしCさんは就職活動で苦労を強いられました。Cさんは2003年の新卒組です。つまり、「就職氷河期(93年~05年)」のロスジェネ世代です。

■自分をどうしても受け入れられず

 就活での書類選考がなかなか通らない。こぎつけた第1次面接では、Cさんは人柄がよかったためにそれなりの好感触はあったのですが、自己PRがうまくできないという欠点があったため、第2次面接まではいけないことが多く、トータルで200社もの会社を訪問しましたが、結果は全滅。いわゆる「就職浪人」となり、翌年、就職活動に再チャレンジします。

 就職浪人2年目となった際には、面接官から冷ややかな態度で通り一遍のことしか聞かれず、もともと自己PRがうまくできないCさんは黙り込んでしまいました。Cさんは以後、会社への「エントリーシート」を出すことはなく、就職活動をやめてしまいました。

 Cさんは心が折れたまま、生活のために仕方なくアルバイトを転々とします。

 正社員ではない自分をどうしても受け入れられず、アルバイトの扱いに嫌気がさし、徐々にひきこもるようになっていきました。

 Cさんは、年収500万円以上の正社員の求人広告を中心にネット検索を続けます。かといって、見つけた会社にアプローチする気力はなく、ただ求人サイトを探るまた親元で暮らしているために、生活に困るということはありませんでした(この困らない環境こそが、実はよくない結果を招いてしまうケースが少なくないのですが)。

 気づけば14年が過ぎ、完全な「大人のひきこもり」状態です。

 その14年の間、「自分は発達障害ではないか」と考えたことがありました。しかし診断は発達障害ではないという結果でした(実は発達障害はグレーゾーンの場合、明らかにその傾向が出ているにもかかわらず、発達障害と診断されないケースがあります)。

 またCさんは母親に勧められて、「ひきこもりの支援団体」を訪れたこともありました。月に一度、支援団体の担当者がCさん宅を訪れるようになり、Cさんとその担当者とはとても気が合い、その時は気力が湧わ いてくるような気持ちになったのだそうです。

 ところが、行政の規定により1年間で別の担当者に変更となってしまいました。次の担当者とは気が合わなかったことから、それ以来、訪問を断るようになり、支援団体との関わりをやめてしまいました。

 就職氷河期世代のひきこもりにありがちなのは、最初から正社員を目指してしまうこと。発達障害の方は完璧主義な面が強すぎて「正社員でなければ意味がない」と決めつけてしまいます。融ゆう通ずうが利かないのです。

 理想が高いことは一見いいように思えるかもしれませんが、結局、何も変わらない状態が続くのであればまったく意味のないことです。臨機応変に社会と関わっていくことが今の時代にふさわしいと考えます。

■一歩一歩進めていく〝スモールステップ〟

[ひきこもりからの脱却:吉濱セッション]

 Cさんとの個人セッションを行った後、僕はCさんは軽度のアスペルガー症候群を中心とした隠れ発達障害と判断しました(僕は医師ではないので、最終的には医師に判断を委ねています)。

 Cさんには、まず「正社員」や「終身雇用」にこだわる考えを変えてもらうため、「正社員」および「終身雇用」のデメリットを書き出してもらいました。たとえば「満員電車に乗らなければならない」、「時間通りの就業時間が窮屈」、「嫌な上司がいても我慢しなければならない」など。

 これは自分の頭の中にあった物事の本質の部分を列挙することで、物事を客観的に見られるようにするトレーニング法です。

 この方法は、Cさんがこだわっていた「正社員」が本当に自分に適しているのかどうかを考え、「自分を俯瞰で見る」というメリットもあります。つまり「メタ認知」です。

 僕はさらに2パターンの働き方を提案しました。

 ひとつはアルバイトか派遣社員からはじめ、身体を社会に慣れさせ、将来的に正社員を目指していくこと。いきなり理想を叶かなえようとするのではなく、スモールステップで積み上げていくイメージです。

 そしてもうひとつは自営業をはじめること。そのために英語とコンピュータプログラミングを勉強することを勧めました。

 それでもまだCさんは「正社員」へのこだわりが強く残っていましたから、僕はしつこく繰り返しました。

「派遣社員はスタートさせましたか?」

「まだです」

 翌月も翌月も、その翌月もまた聞いてみます。

「で、派遣社員は?」

「……まだです」

 一歩一歩進めていく〝スモールステップ〟=「まずは派遣社員から」という意味を、まっとうに理解するまでに半年を要しました。

 時間が過ぎるだけでなんら状況が変わっていないという状態を、本人に気づいてもらうには、「第三者」が介入し、伴走者として指摘してあげるべきなのです。そうでないと本人はなかなか自覚に至らないものなのです。こうしてようやくCさんは派遣社員として社会との関わりを持つようになりました。

 仕事に慣れてきた頃、プログラミングの勉強とプログラミングに必要となる英語の勉強をはじめ、「副業」で収入を得られる準備に取りかかりました。今はネット時代、自宅にいても仕事はできます。

 僕は今後の日本では自営業が有利になる側面がふんだんに出てくると考えています。

 Cさんのひきこもり期間は14年、年齢は39歳になっていましたが、「自営」というキーワードに未来への光が見えたようです。

 Cさんは自宅の部屋の壁に「もう39歳×」、「まだ39歳◎」と書いた手作りのボードを貼りました。

 やる気になってきたCさんですが、僕はダメ押しで「自営業の利点」を書き出してもらいました。

「自分のペースで仕事ができる」、「自分で時間の配分を決められる」、「仕事量を決められる」、「休みたい時に休める」など。

 これも自分で考えさせることで、自分の生活の具体的なイメージにつなげていく効果があり、目的を達成するためのよい方法です。

 以上を踏まえ、「派遣社員としての勤務」、「勉強の時間」、「趣味の時間」を組み立て、その上で「トークンエコノミー法」というものを用いました。

 トークンエコノミー法とは、一日の予定をこなしていく度たびに、スケジュール表に○をつけたり、シールを貼ったりして、自分の行動が達成できていることを〝目で確認する〟ことを指します。

 増えていく○印やシールを見る度にそれが脳にインプットされ、自分がよい方向へと導かれていっているのだ、と自らを客観的に見ることができるのです。

 Cさんとの個人セッションの期間は2年間でした。

 彼は41歳から新社会人として新たなスタートを切りました。

 そして現在、開業に向けて勉強に励んでいます。

引用先:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190730-00010483-besttimes-pol

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